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粘菌の年季 - 粘菌 その驚くべき知性

『粘菌 その驚くべき知性』を読んだ。

粘菌が、単細胞生物にもかかわらず、知性を持つように見える振る舞いを見せたり、個体によって個性があったりするという話が展開される。前者は、迷路の最短経路を見つける実験から。後者は、嫌う物質(キニーネ)を前にしたときに個体によって違う振る舞いをすることから。

その他にもいろいろな実験が紹介されている。数理モデルの説明もあったりして、わりと硬め。

でも、着眼点のおもしろさはイグ・ノーベル賞に選ばれるくらい (しかも2008年と2010年の2度!!)[1]。まえがきに
イグ・ノーベル賞の顛末記もチャンスがあれば、どこかで紹介しましょう。
とあるけれど、この本のあとに出版された『粘菌 偉大なる単細胞が人類を救う』に書いてあるのかしらん。

ともあれ、世界最大の生物は(粘菌でこそないものの)菌類らしい[2]し、興味が湧いてきた。粘菌のはなし。- ほぼ日刊イトイ新聞で紹介されている『粘菌生活のススメ』も、こちらはきれいな写真が多そうでおもしろそう。SFもあるのではなかろうか。

[1] Improbable Research。2008年に"Intelligence: Maze-Solving by an Amoeboid Organism"でCognitive Science Prizeを、2010年に"Rules for Biologically Inspired Adaptive Network Design"でTransportation Planning Prizeを受賞している。
[2] 東京ドーム600個分!? 世界最大の生き物はなんと「キノコ」! | ニコニコニュース。元の記事はBBC - Earth - The largest living thing on Earth is a humongous fungusか。

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