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1月, 2013の投稿を表示しています

羊が草を食むように

「『天冥の標 VI――宿怨 Part 3』を読んだよ」 「『VI』はこれで完結しましたね」 「うん。想像とは全然違う結末になって、これから人類はどうなるんだろう? って早くも続きが気になって仕方がない」 「落ち着いて下さい。編集部の方によると、『VII』は夏だそうです」 『天冥の標Ⅶ 新世界ハーブC』は夏ぐらいに刊行の予定です。 — 塩澤快浩さん (@shiozaway) 2013年1月28日 「確かに先を追う余り、色々と見落としがちになるのは、悪い癖なんだよなぁ。自覚はあるけれど、止められない」 「止められても止められなくても、まだ出ていない作品は読めませんよ」 「違いない。というわけで、少し立ち止まって、SFにおける交渉について考えてみよう」 「最近、交渉にこだわりますね。 『機龍警察 自爆条項』 の時といい、 『華竜の宮』 といい。そう言えば、 『虚構推理 鋼人七瀬』 もそうでしたね」 『虚構探偵 鋼人七瀬』、『華竜の宮』に引き続き、主人公が調整者。 posted at 21:33:23 「一度気になり出すとつい目が行ってしまう。選択的注意、でもないか。ちょっと違う気がする」 「選択的注意というと、この動画が有名ですね」 「バスケットボールが何回パスされるか数えながら見るヤツね」 「注意を向けていないと、全く認識されないって不思議です」 「ふと思ったんだけれど、会話もそうだよね。関心がない話は、右から左に抜けてっちゃう」 「馬耳東風ですね」 「まぁ、雑談ならそれでも成立するけれど、交渉は成立しないよね」 「共通の関心が何かあるから、テーブルについているわけですからね」 「それが何かを見誤ると、うまくいかないだろうな。って考えたときに、人間どうしでも難しいのに、SFだと相手が異星人だったり人工知性体だったりする。一体どんな反応が返ってくるのか、さらに難易度が高い場面に出くわして、スリリングだよなぁ、と」

R.I.L&P.

Dragon Ashの『LOUD & PEACE』を聴いている。 先日、音楽ファイルを整理していたら、Dragon Ashの曲が目についた。ふと気になって、最近の活動について調べてみると、昨年、活動15周年を記念したベストアルバムが発売されていた。それがこのアルバム。 ワールドカップでテーマ曲として使われていた"Fantasista"が好きでよく聴いていた。小野や中田がいた2002年の話。そこから数えても10年以上が経っている。次のワールドカップは来年か。 その後に出たアルバム"Río de Emoción", "INDEPENDIENTE"までは聴いていたのだけれど以降の、"FREEDOM"と"MIXTURE"は聴いていなかったから、タイミングの良さを感じてこうして聴いている。こういう偶然は面白い。 このアルバムは、LOUDとPEACEの2枚組で、それぞれ曲調が統一されている。その名前の通りLOUDがラウドな曲で、PEACEが穏やかな曲。"Fantasista"は当然LOUDに収録されている。 こうして聴いていると、曲の移り変わりと同時に、自分の好みの移り変わりも改めて自覚できる。10年前だったら、きっとLOUDの方をずっと好んでいたと思うのだけれど、今はPEACEの特に後期も好ましく感じている気がする。 ま、どんな曲がすっと入ってくるか、なんてその時の気分次第なわけなんだけれども。今も"Fantasista"だって好きだし。

ばれても揉み消せばいいんですよ

「 figmaのニャル子 が届いたよ」 「延期されてしまいましたけれど、ついに届いたんですね」 「1巻表紙絵っぽいポーズにしてみた」 「雰囲気は分かりますが、あまり似ていないような」 「ポージング難しくて。格好良くポーズつけられる人、すごいなぁ」 「それに、こんなに悪そうな顔していませんよ」 「このロクでもなさは、ねんどろいどには出せない味」 「それは褒めているんですかね……」

双嬢効果

「『きみとあさまで III〈上・下〉』を読んだよ」 「この巻からアニメ2期の特典ですね」 「上巻の内容があまり思い出せない。もう少し正確に言うと、II下の内容と渾然となっている」 「ネタなんかは話の流れとは独立して覚えていたりしますからね」 「と言うわけで、事実上、下巻の感想」 「はいはい」 「今回は、賢姉でもアサマチでミト子でもなく、ナイちゃんとガッちゃんが大活躍。山椿(ヴィルトカメリー)と配送業の順位をかけて激戦!!」 「配送業って何なんでしょうね、一体」 「ともあれ、このシリーズは下から上への挑戦って感じで新鮮。特にマルゴット・ナイトは、本編だといつもニコニコしている印象だから」 「ナルゼさんの方はアップダウンが激しいですよね」 「え、ナルゼはフラット勢じゃね?」 「って、それは上巻の身体測定ネタでは」

都市伝説の伝染

「『虚構推理 鋼人七瀬』を読んだよ」 「第12回本格ミステリ大賞の小説部門受賞作品ですね」 「そうみたいだね。今さっき知ったよ」 「ミステリィ好きな割には疎いですね。で、どうでした?」 「面白かったよ。キャラクタや設定も面白いし、終盤の畳み掛けるような解決では盛り上がった」 「少し検索してみると、『本格ミステリらしくない』なんて感想もありますけれど」 「変化球ではある。ミステリ要素もあったけれど伝奇要素もあったし。そういう意味では、京極夏彦さんの『百鬼夜行』シリーズや『巷説百物語』シリーズを思い出す。『百鬼夜行』シリーズは〈憑物落とし〉で妖怪物語の虚構を暴き事実を晒し、『巷説百物語』シリーズでは〈仕掛け〉で事実を伏せて妖怪物語の虚構で上書きする。一方この『虚構推理』では――」 「それくらいにしておきましょうか」 「それもそうか。ま、あれだよ。『戦地調停士』シリーズとか『トリックスターズ』シリーズとか読んでいるとそんなに気にならないよ」 「魔法出てきますしね」 「ちゃんと制約は書かれているけれどね。この作品も一見トリッキーだけれど、パーツはちゃんと踏襲されていると思うよ。ところで、 webメフィストのあとがきのあとがき によると、シリーズ化されそう。楽しみ」

コーヒー&不可欠

「『珈琲店タレーランの事件簿』を読んだよ」 「双司君、コーヒーもミステリィも好きですもんね」 「うん。そんなわけで手に取ってみた」 「どうでしたか?」 「表紙とタイトルから薄々感じていたけれど、『ビブリア古書堂の事件手帖』に似ている感じ」 「どんなところが似ているんですか?」 「設定に共通点が多いんよ。ざっと挙げるとこんな感じ」 探偵役が流行っているように見えない店の女性 その店にちなんだ蘊蓄が多い 舞台としている地域の描写に力を入れている 事件は日常のミステリィ 「それから短篇連作形式だったりと構成にも似ているところが。でも、あんまり言うとネタバレになるからこれくらいで」 「そうですね。これから読もうという人もいるでしょうし」 「あと、舞台が京都というところと会話の雰囲気から、少し西尾維新さんの作品にも共通する雰囲気をうっすらと」 「『ビブリア古書堂の事件手帖』とは随分と隔たりがあるような」 「そうだね、人も死なないし。ミステリィはやっぱり人が殺人が不可欠だよね!!」 「危ない人がいます」

パターンとテストと相談中

『JUnit実践入門』を読んだ。 ユニットテストと言えば、『アジャイルサムライ』で「問答無用で実践すべき」とされている4つの活動の一つ。 ユニットテスト リファクタリング テスト駆動開発 継続的インテグレーション 実施してはいるけれど、書き方がJUnit3系だし、 TDD のアンチパターン にものの見事に陥っていたので、JUnit4系でどう書くといいのか勉強しようと思って。 読んでみたら、入門からアドバンストな内容から演習まで入っていて、お腹一杯。『【Part 4 開発プロセスの改善】』ではテスト駆動開発だけじゃなくて、継続的テストや振る舞い駆動開発 (FDD, Feature Driven Development)の話まであった。 でも、まずはできるところから。まずはテストコードの整理から。今は、フラットに書かれていてテストクラス・テストメソッド一覧を見ても、何をテストしているか分かりにくい。 具体的には、テストクラスをコンテキスト(テスト対象の状態)ごとに構造化して、テストメソッドを以下の4フェーズをまとめることから始めていこう。 事前準備 実行 検証 後処理 あと、アンチパターンの 小姑 や 異邦人 に陥らないように、検証フェーズに詰め込み過ぎないようしないと。 悩んでいるのが、テストメソッドの命名。思考停止してしまってアンチパターンの 点呼 そのものなんだけれど、この本がお薦めするように日本語でつけるのには抵抗がある。かと言って、メソッド名は英語でコメントが日本語訳というのも、メンテナンスされなくなりそう。メンバとの兼ね合いもあるから、ここでは結論が出ないか。 ところで、ちょっと気になったのが、誤植の多さ。 サポートページ を見て訂正しておかないと、混乱する記述がチラホラ。2012年11月21日発売で、2013年1月11日更新次点で11のエラッタが出ている。他にも1つ気がついたので報告しておいた。 ともあれ、内容は充実していた。まず、今までこれで良いのかな?と思いながらやっていたことを、良いこと/悪いことに整理できて良かった。それからこうしていこうという方向も見えた。アドバンストな内容はまずは演習から。ちょっとずつ良くしていこう。

勝利しよう

「『勝ち続ける意志力』を読んだよ」 「この本の著者、梅原大吾さんですよね。日本人初のプロ・ゲーマーの」 「うん。EVOって名前の世界最大の格ゲーの大会で何度もチャンピオンになっている人。格ゲー好きだから面白かったよ」 「そう言えば格闘ゲームを題材にした小説をときどき読んでいますね」 『ソリッド・ファイター[完全版]』 『スラムオンライン』 「でも、別に格ゲーなんか全然知らなくても、楽しめると思うよ。勝負に挑み続けるための心の持ち方がメインだから」 「勝負本番と練習とでは緊張感が違いますよね」 「うん。でも、この本が面白いのは、大事な一戦の前の心理状態よりも、数多くの勝負を〈続けられる〉メンタリティに焦点を当てていること。それを端的に表しているのが冒頭のこの言葉」 結論から言えば、勝つことに執着している人間は、勝ち続けることができない 「でも、勝ち続けるには一試合一試合を勝つ以外にありませんよ」 「それはそれで間違いないんだよね。特にトーナメント大会だったら、負けたらそこで終了なわけだし。でも、勝つことに執着している人が選びがちな戦い方では、長くは勝ち続けられないって言っている」 「どんな戦い方ですか?」 「2つ挙がっている。一つはいわゆる強行動。とりあえずそれ振っときゃ何とかなるってくらい強い技や、待ちガイルみたいなお手軽で手堅い戦法。もう一つは、人読み。いわゆる読み勝ちってやつ」 「強行動に頼ると引き出しが減って、臨機応変さに欠けてしまいそうですね。もう一つの人読みって、いわば駆け引きですよね? 勝負にはつきものじゃないんですか?」 「つきものではあるんだけれど、相性がハッキリできる。自分がそう。勝てる相手には勝てるけれど、勝てない相手には全然勝てない。これじゃあ『勝ち続ける』のは難しい」 「それじゃあ、梅原さんはどんな戦い方をするんですか?」 「それが書いてないんだよね。それを説明できない戦い方を目指しているんだと思う。それをこんな風に書いている」 よく分からないけれど強いというのは、恐らく究極だろう。 「うーん、よく分からない世界です」 「実力差があるとこうなる気がする。どこがどう強いのか分析できるだけの観察眼がないから、どこに突破口があるのか全然見えない」 「話を戻しますけれど、じゃあ梅原さんは勝ち続けるためにどうされているん

見る知る見知る

「『脳は美をどう感じるか: アートの脳科学』を読んだよ」 「 『人はなぜ「美しい」がわかるのか』 を連想するタイトルですね」 「その本、タイトルはよく覚えているんだけれど、中身の記憶がほとんどないんだよね。ここで栞子さんみたいな真似ができたら格好いいのだけれど」 「栞子さんは特殊ですよ。一度読んだ本のことは、ほとんど忘れないだなんて」 「映像記憶なのかな?」 「双司君にはそんな能力はないんだから、まだ覚えているうちにこの本の内容をお願いします」 「そだね。というわけで。この本のテーマは〈アート〉と〈脳科学〉。ここでいう〈アート〉は〈視覚芸術〉。で、主な内容は、そのアートを見ているとき、脳のどこが活発に動いているのか、著者が脳科学の手法(fMRI)で研究した結果や、その関連研究の紹介」 「また〈美しさ〉なんて曖昧なものと、〈脳科学〉なんて難しいものを、くっつけていますね」 「うん。実際、まだまだこれからみたい。去年の10月に出たこの本で、作者の方はこんな風に言っている」 アートの脳科学はまだ確立しきれていないし、読者の皆さんには、私たちの日常に寄り添いうる科学の産声として本書を手にしてもらえたら、という気持ちでいる。 「実際、色々と面白そうな研究結果が散りばめられているんだけれど、まとまりがない印象。実際、まだまとまっていないだろうから、正直あるいは誠実なんだろうな、と思う」 「大した根拠もなく断言するより、研究者らしいです」 「一番面白いな、と思ったのはこの一節」 つまり、美術家は、作品をつくることを通して世界を理解しようとするプロセスを実践しているということだ。心理学でも哲学でも、長らく知覚と知識・思考とは別物として扱われてきた。 「これって、描いていればすぐに気がつくことだと思うんだよね。例えば、 『デザインの骨格』 の著者の方がこんなツイートを」 スケッチは、ものの形を理解する方法であり、空間配置を考えるための道具であり、しくみのアイデアを検討するための場所である。 — 山中俊治 Shunji Yamanakaさん (@Yam_eye) 12月 2, 2012 「双司君は『描かないと気がつかないことが多い』の方が近いんじゃありませんか?」 描いていて気がついたけれど、目つきこそ違うけれど、癖っ毛っぷりは母親ゆずりなんだろうな。描かなくて

艶やかAdele

「Adeleの"21"、今更ながら聴いているんだけれど、ステキだね」 「007シリーズの最新作"Skyfall"の主題を歌っている方ですよね」 「うん。このアルバムにはSkyfall入っていないけれどね。その前に出ているアルバムだから」 「あ、"Skyfall"のPV、公開されていますね」 「ホントだ、聴いてみよう」 「では再生っと」 「…………」 「…………」 「何か仰々しいなぁ。大作映画の主題歌だからかな」 「"21"の曲はもっとシンプルなんですか?」 「うん。シンプルというか、渋いというか。例えば、アルバム1曲目"Rolling in the Deep"はこんな感じ」 「終盤にコーラスが入ったりしますけれど、そんなに派手さはないですね」 「うん。俺はこちらの方が好み。それにしても声が艶やかだよね」

残酷グリム

「『ヘンゼルとグレーテル』を観たよ」 「韓国映画なんて珍しいですね」 「薦められて。ホラーなんだけれど、映像が鮮やかなのが面白かったよ」 「ホラーで鮮やかというと、血?」 「あ、そういう意味じゃなくて、衣装の色とかセットの小物とか」 「スプラッタな方向に想像してしまいました」 「顔色一つ変えずに言うね」 「確かにホラーってモノトーンに近い暗い映像のイメージですよね」 「うん。彩度が高いと快活なイメージになるだろうし、暗いところは本能的に怖いからね」 「そう言えば『魔法少女まどかマギカ』の魔女結界の中も色鮮やかでしたね」 「犬カレー空間か。あれも独特の不気味さがあったなぁ。うまく違和感のある組み合わせにしているのかな?」

Looks of Unread Books (3)

「 昨日 は脱線したけれど、山形浩生さんの訳本は面白そうだなぁ」 「何冊も読んでますね」 『その数学が戦略を決める』 『アニマルスピリット』 『貧乏人の経済学』 『服従の心理』 『誘惑される意志 人はなぜ自滅的行動をするのか』 「意識していなかったけれど、こんなに読んでいたのか。 で、その山形浩生さんが推薦している 『のめりこませる技術 ─誰が物語を操るのか』 も面白そうだったよ」 「物語の影響力については、ずっと興味を持っていますよね。 通説・風説・ウソ・プロパガンダ・統計・意思決定に関する本自分の感想などのまとめ の1セクションにまとまるくらい」 「『通説に翻弄される物語』のセクションやね」 「これを読むと、双司君は物語に対して批判的なスタンスですね」 「濫用されている劇薬だと思っている。物事を動かすには必要。ビジネス書にもよくその効果が謳われている」 『ストーリーとしての競争戦略』 『ハイ・コンセプト』 (『6つの感性』の2が『「議論」よりは「物語」』) 「それに、エンターテインメントとしての物語は好きだよ。実際、ディズニー映画なんて夢物語を観たりするわけで」 『ベッドタイム・ストーリー』 『魔法にかけられて』 「でも、濫用されていると思っているから、表に出す意見は批判的なのが多くなっているのかと」 「どういうことですか?」 「『物語』はあくまで『物語』であって、『現実』じゃない。大きなギャップがあって、『現実』になり得ない絵空事である可能性さえある。『現実』にできるにしても、それにはきっと長い時間と地道な実行が必要だと思う」 「少なくともそんなに簡単に叶ったりはしないでしょうね」 「でも、『物語は必ず叶うし、それは簡単なことですよ』っていう『メタ物語』が溢れている。そんな実現不能な『物語』に捕らわれるのは、『現実』問題として不幸だと思う。だから、 『たった2分で、道は開ける。』 なんてタイトルを見ると、いや読むのに2分以上かかるだろ、とツッコミを入れたくなるし、 『きみがモテれば、社会は変わる。』 なんてタイトルをみると、その物語は 『〈リア充〉幻想―真実があるということの思い込み』 が否定している共同幻想そのものじゃないかな、と水を差したくなる」 「どちらのタイトルも、『。』で終わっているのが、面白いですね。モーニン

Logotype Pattern

『たのしいロゴづくり』を読んだ。ここでいう『ロゴ』は『ロゴタイプ』つまり文字で会社名や商品名などを表現すること。この本は、そのロゴづくりのパターン本だ。 内容は、大きく次の3つに分類できる。まず、ロゴづくりのテクニック。1章が『欧文ロゴのテクニック』、3章が『和文ロゴのテクニック』。次に、文字のカタログ。2章『文字の形を知ろう』に欧文フォントのリストが載っている。最後が、ロゴ作りプロセスの例。著者の仕事の過程が4章『メイキングで見るロゴづくり』に載っている。 ロゴづくりのテクニックは、どのような形にするとどういう印象を与えるか、を念頭に説明されている。プログラミングでいうと、パターンに近い。プログラミングにおけるパターンではこういう問題はこう解決しようと説明しているのと似て、この本のテクニックは、こう加工するとこういう印象を与えますよ、ということを説明している。加工の過程も含めて、見開き2ページで説明してくれているので、一覧性も高い。 文字の形の紹介の仕方も変わっている。フォントごとに紹介するんじゃなくて、アルファベットごとに下記の分類で紹介している。最後にフォントごとの一覧も載っているけれど、メインはこちら。ロゴづくりでは「"A"の形にはどんなバリエーションがあるんだろう?」ということがよく知りたくなるので、ロゴづくりの参考になるように整理したけっkだだそう。 先端にクセのある形 一部をカットした形 一部に丸みのある形 線を延ばした形 その他の形 最後の、『メイキングで見るロゴづくり』は、クライアントの要求から、著者がそれに応えるまでの過程が載っている。抽象的なパターンやグループが紹介されていた3章までとは打って変わって、具体的なエピソードが紹介される。紹介されているテクニックも使われているから、そのまま応用の実例にもなっている。それらを超えてロゴマークについても随分と説明されているけれど、それは仕事だからか。 ただこの本だけでゼロからロゴを作るのは難しいと思う。パターンの解説でテキストエディタやIDEの説明をしないのと同様に、この本にはIllustratorのような画像編集ソフトの説明は全くない。だから、実際に作ろうとしようとすると、その知識は別に仕入れる必要がある。フォントも1つも収録されていない。デジタル化さえさ

Looks of Unread Books (2)

「 昨日 話した『ずる―嘘とごまかしの行動経済学』では、推薦文によると〈悪いことをさせないためには情報の公開と厳重な罰則を科せばよい……という通念が覆される〉そうなんだけれど、この〈情報の公開と厳重な罰則〉って、隣に平積みされていた 『ヤル気の科学 行動経済学が教える成功の秘訣』 がいうヤル気を保つ方法そのものなんだよね」 「これは 『その数学が戦略を決める』 の著者の最新作ですね。これは読んだんですか?」 「ううん。でも商品紹介を読んで、 stickK.commの"How It Works" を見れば分かる」 「学校の成績があがったらお金を払う」「減量に失敗したら現金を払わなくてはいけない」「現金でなく旅行券をテストの賞品にする」……果たしてこれらの実験で、人は目標を達成できるのか、できないのか? 『その数学が戦略を決める』でセンセーションを巻き起こしたイェール大教授の著者は、こうした「コミットメント」契約を提供するウェブ上の店舗「stickK.com」まで開設して、コミットメントの可能性を追究しています。 「"How It Works"に紹介されている4つのステップを簡単に紹介してみると――」 Goal: 目標と達成までの期限を登録する Stakes: 達成できなかったときに、誰にいくら払うか設定する Refree: 第三者(多くは家族や友人)に達成できたかどうか判定してもらう Supporters: 第三者(他ユーザ)にサポータになってもらう 「本当だ、他の人に目標を公開して、罰金を設定していますね。やりたくないことのヤル気を保つ方法と、やってはいけないズルをやらないようにガマンする方法は、違うのかもしれませんね」 「同じ訳者の 『都市は人類最高の発明である』 も面白そうだったよ。 『ぼくらは都市を愛していた』 や川上稔さんの 『都市シリーズ』 を思い出すタイトル」 「〈そうだったよ〉ってことは、これも読んでないんですね」 「もちろん。都市の方が高効率なのは間違いないと思う。人が集中すれば移動距離や商品の輸送距離が減るから移動に費やしているエネルギーを減らせる。エネルギーも都市付近で作れば、伝送中のロストが抑えられる。都市だけを開発すれば良いから、環境への影響範囲も狭くなる。森博嗣さんの 『百年シリ

Looks of Unread Books (1)

「この間、久し振りに紀伊國屋で長時間過ごしたよ」 「本を読む割には、あまり本屋さん行きませんよね」 「読みたい本が決まっているときは、AmazonはじめWebで検索してそのまま買えちゃうからね。しかも、Amazonのリコメンドやブログ、ツイートを見ていると、読みたい本がどんどん増えていく」 「ものの見事にWebだけで完結していますね」 「それでも、本屋に行くと全然知らない本が一杯あって、目移りしちゃうね。3~4時間もうろついちゃったよ」 「リコメンドも巡回しているブログも、フォローしている方も、双司君と嗜好がある程度近いからでしょうね。直交した嗜好の方が読むような本は、出てこないはずです」 「多少はバラツキが大きくなるように気をつけているつもりなんだけれどね」 「どれだけバラツキを大きくしたって、ネットで情報収集している限り、あまりネットを使わない人の情報は入って来ませんよ」 「ごもっとも」 「それで知らなかったけれど、良い本は見つかったんですか?」 「うん。1冊面白そうなのがあったから買ってきたよ。後、欲しかった本や、ブログやツイートで感想を読んで気になっていた本も」 「結局、Webで知った本も買っているんですね」 「その感想だけでは買う踏ん切りがつかなかったんだけれど、実際にものを見てみたら欲しくなっちゃって」 「それ、行動経済学の双曲割引ですね」 例えば1年後のダイエットの成果より、目の前のケーキの誘惑に負けたり、1年後のローンの負担より今のキャッシングの買い物が嬉しいということである。 双曲割引 - Wikipedia 「あぁ、言われてみれば。その場ですぐ持って帰れると思うとガマンするの難しいよね。Webで注文して2日後に手に入るようだと、明日の心変わりを心配したりしてガマンしやすいけれど。 そうそう、行動経済学と言えば、 『予想どおりに不合理』 の著者の新しい本が出ていたよ。今度は 『ずる―嘘とごまかしの行動経済学』 ってタイトル」 「どうしてズルいことをする人が後を絶たないんでしょうね」 「ときどきタイムラインにRTされてくる盗用ツイートとかね。双曲割引でも説明できそうだけれど」 「いつか分からない将来バレたときのダメージを低く、目のためのfavや

Implements imply

『実装パターン』を読んだ。 なかなか説明が難しい。そこで、この本が「何であり」、「何でないか」を引用する。その差分が何か言えればいいのだけれど、自分はうまく言えない。 まず、この本が何なのか。 『デザインパターン』とJava言語マニュアルの間に位置する内容を,この本では扱っている. この本の大部分は,一般的なプログラマであれば,1日に何度も行うような小さな決定について書かれている. 次に、何でないか。 コード設計の本ではない. パターンの記述形式は独特で,その場限りなので(中略),パターン本ではない. 言語の本でもない. この境界領域を何と呼べば良いのか、良い名前を知らない。そもそも良い名前を付けるのが難しそう。曖昧な領域を対象にしているし、おそらくそのせいで各実装パターンの粒度がまちまちになっている。 一方で、目指しているところは明確。 『リーダブルコード』 とほぼ同じ。著者は最後にこの本の最大の教訓として、こう言っている。 「プログラマの仕事は,他のプログラマとの間でコミュニケーションを取ることである.マシンとではない」 『リーダブルコード』との違いは『10章 フレームワークへの拡張』。フレームワークを開発する場合、そのフレームワークを使っているコードへの影響を小さくすることを、リーダビリティを上げることより優先することがある。 この目標をもう少し具体的にしたのが、次の3つの「価値」。自分の発想は「柔軟性」を重視するあまり「シンプル」さに欠けていると自覚できた。 YAGNIの原則 を思い出さないと、無駄に時間をかけたコードを、時間をかけて修正することになってしまう。 コミュニケーション シンプル 柔軟性 これを実現するために、実装パターンは次の6つの「原則」に貫かれている。今まであまり意識してこなかったのが、原則の「対称性」と「変更頻度」。「対称性」は『リーダブルコード』の「10章 無関係の下位問題を抽出する」に近い。上位・下位の階層が異なる処理を1つメソッドで行うのは止めよう、という原則。「変更速度」は『オブジェクト指向設計原則』の「安定度・抽象度等価の原則」の安定度のこと。安定度が異なるコードは分けておこう、という原則。 結果の局所化 繰り返しの最小化 ロジックとデータの一体化 対称性 宣言型の表現 変更頻度 実装パ

イモ食いねぇ

「初詣ー」 「どこに行きますか?」 「カエル好きならココ、かえる神社!!」 「また珍しいものを見つけてきましたね」 「というわけで、川越に。今回はゆっくり回ろう」 「 川越祭のとき は、人出がすごくて観て回れませんでしたもんね」 「というわけで」 「太麺やきそばに」 「たこせんに」 「さつまいもスティック!!」 「食べ物ばかり……」 「前回は屋台ばかりだったからね。銘菓やら菓子屋横町の駄菓子やら回りたいやん? ところで、最後のスティックはじめ何かサツマイモが目立つなぁと思っていたら、特産品なんだね」 「江戸時代に焼き芋用として重宝されていたらしいです」 川越にサツマイモのイメージが定着したのは、寛政時代(1700年代末)のことで、このころの江戸では焼イモが大ヒットしていたんだ。  理由は、サツマイモが庶民の食べ物では、数少ない甘い食べ物であったこと、そして、とても安く手に入ったからなんだ。  この大ヒットを受け、近郊の村々では、こぞって江戸向けのサツマイモを栽培したんだ。中でも、川越イモは、質がよく最高級品とされていたよ。 川越市/川越とサツマイモ 「こんなお地蔵様も」 「このお地蔵様は比20年ほど前に建立されたもののようですね。それはそれとして、そろそろちゃんとした神社に行きませんか?」 「というわけで、氷川神社へ」 「ここの例祭が先日行った川越祭ですね」 「さて、初詣も済んだことだし、時の鐘を眺めて、コエドビール呑んで帰るかー」 「肝心の初詣がすごい勢いで端折られたような」

ソラとウミ

SF小説『華竜の宮』を読んだ。 本書の舞台は25世紀。自然災害が原因で、陸地の大半は水没している。災害の詳細は、最初は災害パニックものかと思うくらい、序盤で詳しく語られるのでここでは触れない。 描かれる世界は、何と言うかとても現実的。激変した環境で限られた資源を奪い合うディストピアでもなければ、万能化した科学技術で豊かに暮らすユートピアでもない。 例えば、人類は陸地に残り続けた陸上民と海に出て行った海上民とに分かれていて、お互いに確執があるのだけれど、決定的な戦争行為には至っていない。両者を経済的に仲介するダックウィードと呼ばれる商人や、公海上での海上民同士の争いを政治的に仲介する外洋公館の外交官が存在する。宇宙生まれと地球生まれとの間に確執がありつつも、 その外交官の一人が、主人公・青澄。このキャスティングも、本書の地に足が付いた雰囲気を強調している。主人公の選択に世界の命運が懸かるセカイ系とは正反対に、海上民と省庁と政府と国際組織と交渉・駆け引きで持って、事態の好転が図られる。アクションシーン・戦闘シーンの類いもほとんどない。 『機龍警察 自爆条項』 を読んだ時にも感じたのだけれど、この手の能力は自分には欠けているので読んでいて新鮮。 一方で、SF設定はとても大胆。中盤で明かされるさらなる危機への対策は、とても難しい選択。従って、エンディングもすっきりしないのだけれど、ご都合主義でも何でもなくこれがベターな落としどころなのかもしれない、と思う。同時に、一縷の希望も解放されていて、その後も面白い物語になりそう。 あとがきによると「もし叶うならば、この世界観を使った物語を、また書いてみたい」とのこと。一読者としても、読んでみたい。叶うといいなぁ。

LF1ゲット

「BE@BRICK Series 25を3つ買ってみた」 「1つ目は、SFのヱヴァンゲリヲン新劇場版:Qから弍号機。表面がテカテカしている」 「そう言えば、映画観に行ってないですよね」 「うん。観てないからコメントし辛い。序・破とはデザインが微妙に異なるのは、間に合わせの改修状態なのかな? 「2つ目は、HORRORのChilds Play 2からチャッキー。裏もあってそれは当然……」 「HORRORですからね」 「検索してデザインを見てみたんだけれど、BE@BRICKにすると裏でも映画ほど恐くないね」 「丸みのせいでしょうか」 「そして、最後にシークレットが来たよ!! NIKE LUNAR FORCE ONE」 「おめでとうございます。 6個買って、3つ被った 双司君とは思えない引の強さですね」 「あれはいまだにトラウマだよ」 「良かったですね、新年そうそうトラウマ更新なんて自体にならなくて」 「幸先の良いスタートを切れて良かった。ま、あとは平均回帰するだけだがな」 「一言余計じゃないですか?」

謹賀新年

This work by SO_C is licensed under a Creative Commons Attribution-ShareAlike 3.0 Unported License . 「あけましておめでとうございます」 「あけおめー、希さん」 「今年もよろしくお願いしますね」 「こちらこそ」 「それじゃあ、初詣に行きましょうか」 「巫女さんから砲撃されないように気をつけないと」 「それは極東――と言うか浅間神社――と言うか浅間・智さん限定ですよ、ズドンは」 「え、東方にも弾幕巫女が」 「そう言えば博麗神社にいらっしゃいますね」 「それから人間弾幕の使い手も」 「あ、春日神宮の」 「ほら、こんなに」 「分かりました。撃たれたら撃たれた時で」 「えー」 「どうせ撃たれるなら、破魔矢がいいですよね。縁起物ですので」 「いつの間にか撃たれる前提になってやしないか?」 「獅子舞だって噛まれると縁起が良いんですから、破魔矢もきっと撃たれた方が。『白羽の矢が立つ』というのも良い意味ですし」 「『白羽の矢』は今でこそ『抜擢』のような意味で使われているけれど、語源は生贄として選ばれることらしいよ……」 「あ、そうだったんですか。ちょうどいいですね。さぁ行きましょう」 「ひでぇ」