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7月, 2017の投稿を表示しています

R.O.D -READ OR DIVORCE- - 読書で離婚を考えた

『読書で離婚を考えた』を読んだ。 この本は、円城塔さんと田辺青蛙さんが本を紹介しあったWeb連載記事『Yome Yomeメオトドクショリレー』の単行本版。 Web版との違いは、脚注と「あとがきにかえて」が追加されていること。お互いへのツッコミとか裏話とかが書かれていて楽しい。連載を追いかけなかったズボラさが結果的に吉と出た。Web版で全部読んでいたら、きっとこの本を買うことはなかっただろう。 もう一つ連載を追いかけなくてよかったと思っていることがある。それは結末=お二人が離婚することなく本連載が無事に終わったと知ったうえで読めたこと。リアルタイムで読んでいたら、胃が痛くなっていたに違いない。それくらいの緊迫感がある。 全40回の連載の終盤に至っても、このとおり。 こう、だんだんとわかってきたのは、別に夫婦ってお互いに理解しあってなくても平気なのではってことですかね。 (出典:「36 夢見る前に」 円城塔、課題図書……『壊れた脳 生存する知』山田規畝子) 私も夫も、ハリーのように赤い海から生み出された生物ではないけれど、相手のことがよく分かりません。 (出典:「39 理解できないことばかり」 田辺青蛙、課題図書……『ソラリス』スタニスワフ・レム) でも、「あとがきにかえて」として掲載されているお二人の会話からは、どこかいい雰囲気も感じられて、これはこういうことなんだろうなと思う次第。 単純に書評本としてもおもしろい。お互い読みそうにない本を課題図書に選んだりして、選んだ意図をあとから明かしたりしているから、読み方の違いが如実に出る。「24 恐怖新聞通信 円城塔、課題図書……『恐怖新聞1』つのだじろう」の読み方は普通はしない。

殺し合いの頃合い - ジョン・ウィック:チャプター2

『ジョン・ウィック:チャプター2』(原題 ”John Wick: Chapter 2”) を観た。 前作に引き続きアクション――ガン・フーに容赦皆無。確実に敵の命と後顧の憂いを断つ。 今作は装備の変化がおもしろかった。前作は私怨による復讐だったので基本的に自前の装備で戦っていたので、ここで変化を付けてきたということか。 依頼を受けて(正確には、殺し屋組織の掟を守るため)の仕事では、組織のバックアップを受けてフル装備での戦い。拳銃だけでなく、ショットガンやアサルトライフルへと持ち替えながらの銃撃戦。アサルトライフルを無駄撃ちせずに的確に当てていくシーンが好き。 一方で、やはり組織に追われてほぼ孤立無援の状態にも陥る。そこから一丁の拳銃と七発の弾丸だけを携えて反撃開始。弾丸を節約するため潜入ミッションになるかと思いきや、敵を見るや躊躇いなく撃ち殺す。そして奪う。拳銃ごと奪ったり、(きっと互換性があるか同じ型の銃から)弾丸だけ奪ったりと描き分けが細かい。 既に次回作の企画も進んでいるとのこと。今から公開が待ち遠しい。物語の先が気になるというより、次はどんな戦いを見せてくれるのか? という期待。 ところで、腕を畳んだ拳銃の構え方、CAR System (Center Axis Relock Fighting System)っていう実在の構え方なのね(Twitterで感想を眺めていて知った)。変わった構え方だから、演出重視の構え方かと思っていた。ガン=カタという先例もあるし。実は合理的な構え方だったのか!!

ライフのサイクル - ヒキガエルとアマガエル

ネイチャーテクニカラーの 「ヒキガエルとアマガエル」 を購入。 ラインナップは、アマガエルの卵、オタマジャクシ、幼体、生体。それから、写真に入っていないけれど、ヒキガエルの生体も。 卵やオタマジャクシ、幼体が入っているのが珍しい。こうして眺めていると、いろいろと発見がある。 後ろ脚だけ生えているオタマジャクシは、ガウォーク形態に通じるものがあるな。とか、卵はバジルシードドリンクに入っているわけじゃないよな。とか。 しっぽが残っているのもかわいいなあ。

悪心あれば恋心 - 残念女幹部ブラックジェネラルさん 3

「『残念女幹部ブラックジェネラルさん 3』読んだー。今回も秘書さんが素敵だったし、ブラックジェネラルさんが残念だった。うーん、残念!!」 「楽しそうで何よりです」 「それからGGちゃん回もあったり、他悪の組織との絡みも増えたりで、賑やかになってまいりました」 「2巻収録の第三十話『ヴィラン・リーグ』で、欠席した総括や、シルエットだけだった方が出てきましたね」 「続き、総括とブラックジェネラルさんとがどんな遣り取りをするのか期待」

だから私は酒を呑む - のみじょし 1~3

「『のみじょし』を1巻から3巻までまとめ読みしたんだけどさ」 「どうしました?」 「みっちゃんが他人とは思えん……」 「そうですね。料理に使うワインを、料理を作っているそばから飲み始めたりするところとか」 「そもそも料理する動機が、美味しくお酒を飲むためだったりするしな」 「あと、実家からの野菜は遠慮するけれど、ビールは遠慮しないあたりも」 「そう言えば、去年は実家から2kgくらいレモンが送られてきて、レモン酒作ったっけ」 「今年は梅酒を作っているんですよね」 「そうそう。今月の頭に漬け始めたところ」 「楽しみですねー」 「1~3ヶ月で飲めるようになって、1年くら熟成させると美味しくなるらしいよ」 「1年待たずに飲みきる未来が見えます……」 「って漫画の話じゃなくて、完全に酒の話になってる!!」

花が咲く - 境界線上のホライゾン ガールズトーク 縁と花

「『境界線上のホライゾン ガールズトーク 縁と花』、読み終わったー」 「ガールズトークももう3冊目ですね」 「『狼と魂』でネイト、『祭と夢』で正純ときて、今回の話題の中心はメアリ」 「メアリさんは、かわいらしさが嫌みでなくてよいですよね」 「ね。鈴と二人、武蔵の貴重なキレイ枠」 「どなたとは言いませんが、ヨゴレ度が青天井の方もいらっしゃいますしね……」 「しかし、メアリがこれだけかわいらしいと、さぞ実況通神も伸びたことだろう。あの野郎許さねぇ……!」 「ところで、次のガールズトークはどなたの話になるんでしょうね?」 「合流つながりで成実とか?」

rabbit bite - ブギーポップ・ダウトフル 不可抗力のラビット・ラン

『ブギーポップ・ダウトフル 不可抗力のラビット・ラン』を読んだ。 本作で中心となる人物は二人。統和機構のレイン・オン・フライディこと九連内朱巳と、霧間凪をサポートしている羽原健太郎。 九連内朱巳の立てた計画が、目論見を越えて彼女に思わぬ衝撃 を与えたり、目論見ではなく統和機構に認めさせるための建前の目的まで達成してしまったり、とままならない。 ままならないのは、羽原健太郎も同じで、彼女の計画と知らず探りを入れていくうちに、建前の目的が達成されてしまった結果に、否応なしに巻き込まれてしまう。 このままならなさ、その発端のしょうもなさ/どうしようもなさ、解決の身も蓋もなさ。これらが好きでこのシリーズを読んでいるのだなあ、と改めて実感した。

腹に臓物 - アナトミカル・ヴィーナス

『アナトミカル・ヴィーナス 解剖学の美しき人体模型』を読んだ。きっかけは 『一八八八 切り裂きジャック』 。その中では、作者の名を冠して「スッシーニのヴィーナス」と呼ばれている。あと、町山智浩さんが『エイリアン: コヴェナント』の紹介で引き合いに出していた [1] のとも重なったのも、後押しになった。 この本、タイトルこそ『アナトミカル・ヴィーナス』だけれど、幅広く女性解剖模型の歴史を書いている。かつては「宗教」や「性」、「理性」が地続きで、そういう文化の下では女性解剖模型は受け入れられていたが、やがてそれらが分離し受け入れられなくなった。乱暴にまとめると、そんな話だった。 アナトミカル・ヴィーナスそのものの最後の用途は、移動式遊園地での見世物だったんだろう。そんなに風に思う。博物館の展示物でもあるけれど、その場合は歴史的資料の保存という側面がある。ただ、いずれにせよ「理性」の側面――解剖学の教材としては、用いられていない。 現在、解剖学の教材になっている人体模型は、無味乾燥で、不気味の谷に落ちているように見える。学校の怪談の題材にされるのは、その不気味さのせいか。医療関係者は事情が違うだろうけれど、多くの人は学校で見たのが最後なんじゃないだろうか。 ともあれ、アナトミカル・ヴィーナスが表舞台から姿を消しても、美しさとグロテスクさへの嗜好が社会から失われたわけではない。 ゴア描写や猟奇描写のある映画は今も作り続けられている。『エイリアン: コヴェナント』の紹介で引き合いに出されたのも、美しさとグロテスクさが同居していたからだ。 グロテスクさに振ると、スプラッタ映画がある。 一方で、美しさに振ると、直系の後継としてドールが存在する。カワイイ方向に進んでいくと、 Blythe のようなデフォルメされた形になるし、性的魅力と交差すると、展示会が開かれて女性も多く訪れるラブドール [2] という形になるんだろう。 将来的にはセクサロイドも出てくるんだろうか、なんて 〈天冥の標〉シリーズ を思い出しもする [3] 。 本書の後半では、セクサロイドの登場を待たずとも、人形を家族と見なす人がいることも書かれていて、『ゲンロン0』の家族についての議論を思い出す [4] 。 収集が付かなくなってきたので、この辺りで。 [1] 町山智浩 『

割れ壺理論 - ルビンの壺が割れた〈キャンペーン版〉

『ルビンの壺が割れた《キャンペーン版》』を読んだ。 2017年7月14日から2017年7月27日までと閲覧期間が限定されている。 《担当編集者からお願い》「すごい小説」刊行します。キャッチコピーを代わりに書いてください! 『ルビンの壺が割れた』 | 新潮社 というキャンペーン用。話題の作り方がうまいなあと思う。 肝心の小説の方も、Facebookのメッセージやりとり形式でテンポよく進んでいくし、そのやりとりの内容がどんどん不穏になっていくので、ページを捲る手が止まらなくなる。長さも手頃なので一気読みできる。 宣伝がちょっと煽り過ぎている感はあるけれど、十分楽しめたのでよしとしよう。

stay with her story - Fate/stay night [Heaven's Feel] 4

『Fate/stay night [Heaven's Feel] 4』を読んだ。 漫画版を読み始めたのは、 劇場版はいつやるか分からないし端折られるだろう と思ったからなのだけれど、あとがきで作者曰く 亀の歩みで進んでおります という状態。 これもあとがきに書いてあるとおりなのだけれど、桜の出番がちょっと少ない。そう言えば、 3巻 もちょっと少なかったような。 でも、要所要所でいい絵があっていい(同語反復)。色っぽい。

ゾンビーハント - 就職難!! ゾンビ取りガール 1, 2

『就職難!! ゾンビ取りガール 1』、『〃 2』を読んだ。 緩い雰囲気と、死が身近に存在する緊迫感が同居している。独特の雰囲気が何とも言えず楽しい。癖になる。 まだ続きそうな雰囲気で終わるけれど、2巻が出てもう3年近く経っている。もっと読みたいなあ。

let it 美味- 孤独のグルメ【新装版】

『孤独のグルメ【新装版】』を読んだ。 テレビを点けているときにたまたまドラマを見かけて、思いの他おもしろかったので。 ドラマがタイムラインで話題になっているところや、 「うおォン 俺はまるで人間火力発電所だ」 というセリフがニコ動のコメントに使われているところを見かけたことはあったのだけれど、食指が動かなかったのに。 ここ1, 2ヶ月ほど、これまでとは違う場所で外食する機会が増えたからだろうか。 自分は、いわゆるグルメレポートになっていない話が好み。中でも、健啖家の五郎が食事を残すエピソードの次のセリフ。よくぞ言ってくれた。 「人の食べてる前であんなに怒鳴らなくたっていいでしょう」 よく見かけるのは、このあとの モノを食べる時はね 誰にも邪魔されず 自由で なんというか 救われてなきゃあ ダメなんだ 一人で静かで 豊かで…… の方だろうけれど、自分にとっては前者の方が切実。まったく自分には関係なかろうと、怒鳴り声が聞こえるとどうもダメみたい。 ところで、後者のセリフは『るろうに剣心』の比古清十郎の酒の呑み方にも通じるものがある。 春は夜桜 夏には星 秋には満月 冬には雪 それで十分酒は美味い それでも不味いんなら それは自分自身の何かが 病んでる証拠だ 料理にしろ、酒にしろ、そのものが美味しいに越したことはないにせよ、味わうのは自分なわけで。ご飯が美味しく食べられるって、思っているより貴重な時間なのかもしれない(今日も酒が美味い)。

あまねく甘い音 - Love Psychedelico/Love Your Love

Love Psychedelicoの『Love Your Love』を聴いている。 『In This Beautiful World』 から4年振り7枚目のオリジナルアルバム。 一聴してどことなく雰囲気が変わったような印象を受けた。わずかに柔らかくなった感触。 インタビュー記事 [1] [2] を読んでいると、今回のアルバムではこれまでに完成されてきた作り方を、あえて変えてみたとのこと。その影響かな? NAOKI アナログな質感はすごく大事。でも同時に、例えばラジオでかかったとき現在進行形の音楽だとパッとわかる“何か”もやはり大切だと思うんです。レンジが広く、低域から高音までしっかり詰まっていて。でも決して耳に痛くないサウンド。KUMIも僕もそこは常に意識してますね。 KUMI そうだね。例えるなら額縁が広くて、全体に余裕のある音。 (出典: LOVE PSYCHEDELICO「LOVE YOUR LOVE」インタビュー|結成20年の2人が開けた新しい扉 (1/4) - 音楽ナタリー 特集・インタビュー ) [1] LOVE PSYCHEDELICO「LOVE YOUR LOVE」インタビュー|結成20年の2人が開けた新しい扉 (1/4) - 音楽ナタリー 特集・インタビュー [2] LOVE PSYCHEDELICO『LOVE YOUR LOVE』インタビュー(Billboard JAPAN.com×Rakuten Music) | Special | Billboard JAPAN

待て - 伏 贋作・里見八犬伝

『伏 贋作・里見八犬伝』を読んだ。 雰囲気は嫌いじゃない。むしろ好き。大人向けの和風ファンタジーとでも言えばいいんだろうか。『南総里見八犬伝』という現在に伝わる物語が下敷きなのも、ワクワクさせてくれる。 だけど、物語がすすまない。途中で挟まる『贋作・里見八犬伝』と長い回想を除くと、文庫一冊使って、短篇読み切りマンガくらいしか進んでいないんじゃないか。 おかげで最初の期待が尻すぼみになってしまって、消化不良の感が否めない。いっそ、過去編に振ってくれてもよかったような。 それとも、そこまでハッキリ書いてしまわない方が花なのか。

K' - フルチャージ!! 家電ちゃん 4

『フルチャージ!! 家電ちゃん 4』を読んだ。 表紙はケイ。アイ→ケイ→ミリーときて、一巡してアイに戻るでも、新キャラの静を推すでもなく、ケイ(静の存在感も無視しがたいけれど)。 彼女を中心とした話がいくつも収録されているので、それもむべなるかな。アイよりヒロインしている。構ってもらいたがっているところなんか、いじらしい。 で、アイなんだけれど、空気と化しているわけじゃなくて、すっかりお笑い要員と化しているけれど、メインヒロインじゃなかったのか。大丈夫か。ダメか。それもいいか。ダメな子ほどかわいいと言うし。そういう問題でもないか。

迷宮究明 - 百万畳ラビリンス(上・下)

『百万畳ラビリンス』の上下巻を読んだ。 いきなり無限に続く迷宮に放り込まれる舞台設定から、 『〔少女庭国〕』 や 『ギャルナフカの迷宮』 を連想したけれど、全然違う話だった。 主人公の礼香が、ぐいぐいと話を引っ張っていく。序盤こそ迷宮の謎に気を取られていたけれど、中盤以降さらにテンポアップして彼女から目が離せなくなった。探究心が強いうえに恐いくらい思い切りがよいから、ときに頼もしくときに危なっかしくて、ワクワクもハラハラもさせられる。 こうして振り返ってみると、自分が感情移入していたのは、彼女ではなく行動をともにしている盾子だったように思う。さぞ気苦労が絶えないことだろう、と相憐れむような気持ちさえ湧く。それから、礼香が、迷宮の特性を逆手にとってグリッチ (バグ・不具合を意図的に活用すること) 上等で迷宮を後略していく勇姿への、憧れの気持ちも。

羊が増えるよどこまでも - シェフィ

iPad Airで 『シェフィ』 を遊んでいる。 ソリティアなんかと同じ、一人用カードゲームのアプリ版。 乱暴に説明すると、羊を増やしていくゲーム。基本的にデッキを使い切らないといけないルールなので、残りのカードがどのような順番に手札に来るか予想しながら、手札を使う順番を考えていくのが楽しい。 それから、ステージごとに特殊ルールが用意されている「ポストラヴズ」モードも、なかなかやり応えがある。絵柄のかわいらしさとは裏腹にハードなストーリーも魅力。 でもあるんだけれど、あまり難しいことを考えずに、1枚1枚違う絵柄の羊を愛でたり、カード利用時のかわいいボイスを楽しんだりするのも和む。ハイスコアを目指そうと思うと、理想的な順番で手札に来ないとダメそうなので、ストレスになるし。 iOS版の他に3DS版もNintendo Switch版もあるので、好みのプラットフォームでぜひ。

どうしたものだったのか - ただ、それだけでよかったんです

『ただ、それだけでよかったんです』を読んだ。 黒くて暗くてクラクラする話。そういう話も嫌いじゃないけれど、現代の学校が舞台で「イジメ」という犯罪行為を扱っているので、ちょっと生々しい。特に主人公拓の口から明かされる、事件の成り行きには、ゾクゾクさせられた。 それに比べて、「ソーさん」と「人間力テスト」のリアリティレベルが低さが気になる。無くてもこの物語は成り立つように思うので、意図的に戯画化しているのかもしれない。 関連して、ラストがあまり好みじゃなかったのが残念。 主人公拓と昌也の話に焦点を絞られたら、もっと印象的な読後感を抱いていたんじゃないだろうか。 と、いくつかとひっかかるところもあったけれど、それだけ核の部分に引き込まれたということでもあったわけで。

目眩く巡るべく - Monument Valley 2

iPad Airで"Monument Valley 2"を遊んだ。タイトル通り "Monument Valley" の続編。 前作はあまりストーリー性がないという感想を持ったけれど、今作は前作より分かりやすかった。前作にもきちんとあったのを、パズル要素に気を取られて見過ごしていたのかも知れない。何はともあれ、友達の再登場が嬉しい。 前作を楽しめた人なら、本作も期待に応えてくれると思う。2が出たこのタイミングで、本シリーズのことを知ったのなら、前作からプレイする方がお勧め。前作も本作と遜色ないクオリティだし、前作をプレイしておいた方が本作を楽しめる。それぞれ数時間で終わるボリュームでもあるし。 雰囲気を知りたい人は、 公式サイト のトレーラをどうぞ。

ホラー自分にとって / 裏世界ピクニック ふたりの怪異探検ファイル + ファイル5 きさらぎ駅米軍救出作戦

『裏世界ピクニック ふたりの怪異探検ファイル』と『〃 ファイル5 きさらぎ駅米軍救出作戦』を読んだ。 構成と出版形態が目新しいので説明。前者は短篇集でファイル1~4が収録されていて、文庫/電子書籍の両方で出版されている。後者は続編となる短篇1本が、電子書籍のみで出版されている。さらに 続きが7月末に配信される予定 とのこと。 内容はネットロア [1] を題材にした裏世界冒険小説。ネットロアは「きさらぎ駅」くらいしか知らなかったけれど、楽しめた。それから、主役の 空魚 ( そらを ) と 鳥子 ( とりこ ) の関係に百合要素にあり。と言っても、裏世界の恐怖感を損なうようなものではない。同じ窮地を乗り越えてきた戦友どうしの信頼にも近しい印象を受ける。 ところで、本作のテーマでもある「恐怖」ってなんなんだろう。自分はあまり恐怖感を覚えない方な気がするから、ときどき不思議に思う。本作を読んでいてもそうだし、 ホラー映画を観たり 、ホラーゲーム実況 [2] を観たり、お化け屋敷 [3] に入ったりするけれど、リアクションは薄い方。脳神経科学的には、恐怖(不快感)と快感を同時に覚えているというモデルで説明しているらしいけれど [4] 。 [1] インターネット上の都市伝説。(出典: ネットロアとは - 日本語表現辞典 Weblio辞書 ) [2] 【OUTLAST】ゆかりん精神病院で精神崩壊 by せのサブ - ニコニコ動画 [3] 富士急ハイランドの戦慄迷宮。 [4] 東京大学教授・脳科学者 池谷裕二氏が語る“ホラー”がエンターテイメントたり得る理由

black parade - ある日、爆弾が落ちてきて【新装版】

「『ある日、爆弾が落ちてきて【新装版】』を読んだよ」 「 古橋秀之 さんの短篇集ですね」 「そうそう。電撃文庫で発売当時にも読んでいるのだけれど、書き下ろしが一篇収録されていると知って、買わずにはいられなかった」 「双司君、古橋秀之さんの作品に飢えている感がありますね。大丈夫ですか? 禁断症状とか出ていないですか?」 「安心しろ、ダメだ!!」 「予想通りで安心しました」 「それは安心材料なのか?」 「ええ。想定の範囲内でしたので」 「実際、旧版の次点で何回も読んでいたから、書き下ろしだけ読むつもりだったのに、全部読んじゃったしな」 「相応の年月が空いていますが、感想は変わりましたか?」 「それがあんまり。当時も今も惹かれるのは『恋する死者の夜』。正と死、幸福と後悔、過去と未来。これらの境界が解けてなくなっていくような、不思議な気持ちにさせてくれる」 「なんだか儚いですね」 「墓もないしな」

遠出のあとで - 女の子が死ぬ話

「『女の子が死ぬ話』を読んだ。女の子が死んだ」 「何も言ってない」 「最近、こういうタイトルに惹かれるのかな」 「そう言えば、 昨日は『さらわれたい女』の感想 でしたね」 「うん。女の人がさらわれた」 「何も言ってない」 「タイトル詐欺が珍しくない昨今、」 「 『死ねばいいのに』 なんか、本棚で見かけてビックリしました」 「逆に意味が分からないのも惹かれるよね。 『銀行強盗にあって妻が縮んでしまった事件』 とか。肩透かし食らいそうで、なかなか読むに至らないけれど」 「話を戻しますけれど、『女の子が死ぬ話』はどうだったんですか?」 「どうもこういうやりきれない話は苦手」 「でも読んだんですね」 「なるべく一度読み始めた本は読みきるポリシーなので」 「殊勝なんだか、難儀なんだか」 「もし、やりきれない話が現実からなくなって、ファンタジーめいてきたら、こういう話が恋しくなるのかもなあ」

サラワレ人質受難 - さらわれたい女

『さらわれたい女』を読んだ。たまたま見かけてタイトルだけで手に取ってみて。 タイトルから予想できるどおり、物語の発端は狂言誘拐。 あとがきにもあるとおり、携帯電話がこれだけ普及した現代 [1] にはそぐわない描写もあるけれど、当時の物語として読めたので、さして違和感は覚えなかった。 狂言誘拐というだけで、誘拐された人の関係者の視点ではどんでん返しなのだけれど、もちろんタイトルで示唆されている狂言誘拐だけで終わるはずもなく、そこからさらに二転三転するのがスリリング。 [1] 総務省|東海総合通信局|移動体通信(携帯電話・PHS)の年度別人口普及率と契約数の推移 を観たら、平成25年度末以降、普及率が100%を越えていて驚いた。複数台持つ人が増えたということか。

where is it? - 赤道の魔界

『赤道の魔界―デビル・カビラ』を読んだ。 1980年代のエンターテイメント小説。裏表紙には「長篇秘境冒険SF」とあったけれど、自分の感覚では伝奇寄り。裏表紙のあらすじに惹かれて読んでみた。 コマンドはゴリラの大群に襲われて全滅した。 でも、古くは(1910年代)のコナン・ドイルの『失われた世界』の、秘境で恐竜を発見する話がSFに分類されているのだから、2010年代の自分の思うSFが当時のSFとずれているのだろうな、とは思う。 なんていう分類学的な話を抜きにすると、こういう地球上の「まだ見ぬ秘境」ってもう存在を実感できないよなあ。SFだと外宇宙だったり、ファンタジーなら異世界だったり、伝奇なら秘境化した見知った場所だったりすることが多いように思う。人類総体の知識としていわゆる「秘境」はなくなりつつあるから作品としては成立しにくいから、形を変えているんだろうか。 けれど、そもそも知ろうとしない個人の視点では、世界は「秘境」だらけなんだろうなぁ。

B&D - Royal Blood/How Did We Get So Dark?

Royal Bloodの2ndアルバム"How Did We Get So Dark?"を聴いている。 リードシングル"Lights Out"のMVが艶めかしくて、でもどこか乾いていて、どうしようもなく惹かれる。 あと、 前作 に引き続き、モノトーンのジャケットもかっこいいし、相対的に醸し出される雰囲気がど真ん中。

日和った - のんのんびより11

「『のんのんびより11』を読んだよ」 「どうでした?」 「大いなるマンネリだった」 「それは、褒めているんですよね?」 「うん。だから特筆することないんだよね……」 「あからさまに目を逸らしましたね……」 「強いて言えば、れんちょんがガマガエルを捕まえる件かな」 「それは、双司君がカエル好きだからでは?」 「うーん。こういう作品って、新巻ごとの感想を書くの難しくない?」 「知りませんよ」 「でも、10巻を越えて、ずっと安定しているって、考えてみたらすごいことだよなぁ。絵もネタも最初から高いレベルで安定している」 「そうですね」 「あ、オナモミなつかしー」 「話しかけておいて、唐突にどこか行くのやめてもらえないでしょうか……」

芽吹きを臥し待つ - 青白く輝く月を見たか?

『青白く輝く月を見たか?』を読んだ。Wシリーズもはや6冊目。 そろそろシリーズ折り返しを過ぎた頃だろうか? と思い、ここまでを振り返ろうとしたら、ときどき感想を書き忘れていることに気がついた [1] 。 読んだ後に何かしら書こうと考えて、それだけで書いた気になってしまったのだろう。悪い癖だ。実際に書かないとわからないこともあるだろうに。 反対にはっきりと意識できるけれど、書くことも描くこともできないものもある。形にした瞬間にこぼれ落ちるものが。 そんな形の定まらない思考あるいは感情を、本作に登場する人工知能オーロラは備えているように見える。「備えてるように見えた」のは結果か。最初は持っていなかったが、獲得に至ったのだろう。 それは「誰かが作る」ものではなくて、「自分で育てる」ものなんだろう。何が育つかは、偶然に左右されるにしろ。 [1] 3冊目の『風は青海を渡るのか?』と5冊目の『私たちは生きているのか?』の感想が、このブログに見あたらない。

stay at moon - 第六大陸 1, 2

SF小説『第六大陸』の1, 2巻を読んだ。これで完結。2冊で終わるときは、上下巻表記という固定観念があったので、読み始める前は3巻以上あるかと誤解していた。 それはさておき。 本書のテーマは月面での建設。それも、宇宙飛行士ではなく、一般の人を招くための施設。だから、施主からしたら、安全が保たれてようやくスタート地点で、そのうえ快適に滞在でき、華麗な装飾が施され、贅沢な料理が供されるような施設を要求することになる。 言い換えると、施主の目的は、月に行くことではない。月に行くためのロケットは、1巻の表紙を飾ってこそいるが、建設中は人員や資材を運ぶトラックであり、オープン後は客を運ぶバスだ。宇宙へ出るのが夢でも常識でもないところが、あまり見ない舞台設定で新鮮。 これだけ壮大なプロジェクトが、執筆当時(本書は2003年発売)の技術の延長線上で描かれる。だから、施主は巨大レジャー企業で、元請けは大手建設ゼネコンで、この一大プロジェクトにロケットを開発している企業が参画している体制となる。たいていは悪し様に書かれることが多い大手建設ゼネコンが、主人公サイドというか主人公の一人・青峰走也がその社員なのも珍しいように思う。 現実味あふれるあまり、最初はなかなか計画が進まない(資材を運ぶためにロケットを改良するところから始まる)けれど、ひとたび軌道に乗ってしまえば一気に物語が動き始める。2巻なんて、先が気になるあまり1日で読み切ってしまった。プロジェクトの進行だけでなく、もう一人の主人公巨大レジャー企業の社長令嬢・西園寺妙の、プロジェクトオーナーとしての振る舞いや、個人として抱える秘密も、物語を引っ張ってくれた。 ここからは余談。『火星の人』も現実の延長線上の技術に沿って書かれているけれど、対象的な構図になっているのがおもしろい。本書は、月に多くの一般の人を送り込もうという私企業の物語。これに対して『火星の人』は火星に一人取り残されて地球に戻ろうというNASA宇宙飛行士の物語だ。 さらに余談。本筋とは関係ないけれど、次の一節が、2003年に発売された2025年を舞台にした小説で書かれていて、驚いた。こうなって欲しいなと思う。 一時の右傾化を乗り切って素朴な平和主義の憲法を固持し、中立を保ったまま見事な外交国家に転じた日本