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孵り/囀り/羽撃き - テスタメントシュピーゲル3 下

『テスタメントシュピーゲル3下』を読んだ。 シュピーゲルシリーズ、これにて完結。見事なまでの大団円。 特攻 ( トッコー ) 児童達が 接続官 ( コーラス ) 達のバックアップを得て、 特攻 ( トッコー ) 猟兵 ( りょうへい ) 達と決着を付ける。そこからの落とし前の付け方も徹底的。直接対峙したリヒャルト・トラクル/リチャード・トーカーはもちろん、一連の事件の関係者=トリガーを引いた者/撃鉄を起こした者/銃を構えた者/そうさせた者まで根こそぎ――大人達=MPB/MSS/第二作戦部隊の仕事。 特攻児童= 涼月 ( スズツキ ) / 陽炎 ( カゲロウ ) / 夕霧 ( ユウギリ ) / 鳳 ( アゲハ ) / 乙 ( ツバメ ) / 雛 ( ヒビナ ) 、接続官= 吹雪 ( フブキ ) / 水無月 ( ミナヅキ ) 、MSS解析課員= 冬真 ( トウマ ) も皆が将来に向けて進み始めた。 特攻猟兵= 白露 ( シラツユ ) / 光葉 ( ミツハ ) / 陸王 ( リクオウ ) ――安らぎあれ。 初代MSS要撃小隊= 皇 ( スメラギ ) / 蛍 ( ホタル ) ――救いあれ。 万感の思いがあるけれど、挙げ始めると切りがない。一番心配だった雛――幼さを最も濃く残しているのに、 『テスタメントシュピーゲル2』 で窮地に陥った/虎穴に飛び込んだせいで、目が離せなくなっていた。さらに、涼月や鳳のようにメインを貼っているわけでもない=メタ視点でも目が離せなかった。無事に収まるところに収まってほっと一息。

光/糸/芯/筋 - テスタメントシュピーゲル3 上

『テスタメントシュピーゲル3上』を読んだ。 ここにきて文体だけでなく、語り手の視点もクランチ状態。敵味方それぞれ多数の組織が入り交じって目まぐるしい。そのうえ、特甲児童らの思考には、謎のメッセージまで飛び込んでくる。 そんな中、ようやく復活した涼月がひたすら真っ直ぐで眩しい。 「 前へ進み続けろ ( キープ・ムービング・フォワード ) !!  真っ直ぐ前へ ( ストレート・フォワード ) ――!!」 一条の希望の光であり、物語を紡ぐ縦糸であり、強い芯であり、通す筋。そんなイメージ。 まっしぐらにハッピーエンドまで突き進んで欲しい。

savor every moment - テスタメントシュピーゲル2

『テスタメントシュピーゲル2』を読んだ。 最後に至っても作中時間は『1』からほとんど進まない。『2』は、『1』でMPBの視点で描かれた事態の進行を、MSSの視点で再度追う形。『オイレンシュピーゲル肆』と『スプライトシュピーゲルIV』の関係と同様。 でも、『1』で植え付けられた不安が随分と払拭された。やってくれたのは冬真。特甲児童を救うため、混沌として何が何だか分からなかった事象に、ちょっとずつではあるけれど光を当ててくれている。ようやく輪郭が浮かび上がってきたように思う。 加えて、最後にわずかに進んだ作中時間で、『1』のラストでは点に過ぎなかった希望の光が、周囲を照らし始める。ついにMPBからは〈猋(ケルベルス)〉の3人、MSSからは〈焱の妖精(フォイエル・スプライト)〉の3人が合流しそう。MSSの接続官(コーラス)=水無月も面白いことになってきた。MPBの接続官=吹雪は、このまま捕われのヒロインポジションなのかな? そして、9人目の冬真。彼と鳳(あげは)の再会がクライマックスになりそう。 ところで、この巻の雛(ひびな)がとても素敵。『スプライトシュピーゲルI』での第一印象では、ライトノベルにしても狙い過ぎに感じたし、その後もこれといって(他が強烈過ぎて相対的に)強烈なエピソードがなかった [1] 。それが、この巻では、身勝手/狡猾/健気/勇敢。報われて欲しい。 [1] 『スプライトシュピーゲルI』の感想で、「こんなパーソナリティないだろうと思う」とか「今のところ『オイレンシュピーゲル』の方が好み」とか書いていたくらい。

メメント・テスタメント - テスタメントシュピーゲル1

『テスタメントシュピーゲル1』を読んだ。MPBは〈猋(ケルベルス)〉の3人=涼月+陽炎+夕霧と、MSSは〈焱の妖精(フォイエル・スプライト)〉の3人=鳳+乙+雛がこれまで以上に密接に絡む。それから、MPBの接続官・吹雪とMSSの解析課要員・冬真も。 読んでいると不安になる。視点が安定しないからだと思う。特甲児童の一人称で書かれている場面が多いのだけれど、失っている記憶のフラッシュバック(しかも直後に忘却される)や特甲児童間の感覚の共有があるせいで、各キャラクタへの見方が揺らぐ揺らぐ。 この揺らぎは、あとがきで繰り返し書かれている本シリーズのコンセプト="複数の視点から物語を見つめる"を象徴していると思う。複数の視点は、複数に人間によってもたらされるとは限らない。一人の人間の視点だって見方は変わり得る。分かりやすいのは、涼月の両親に対する認識。 こんな風に、同じ人間が同じエピソードに対して全然違う認識をするのは、おかしなことじゃない。叙述トリックが駆使されたミステリィを読むと、それを実感できる。解決編まで読むと、これまで読んできた文章が全く違った意味を持つようになる(のだけれど、そうじゃない人もいるみたい。解決編が何を言っているのか分からない人がいる、という話を聞いた記憶がある)。 この不安は『2』で解消されるのだろうか。何となくされないような予感がしている。『1』の軸足は〈猋〉だったので、きっと『2』は軸足を〈焱の妖精〉に移して時間的には並行しているんじゃないかな。そこから『3』で合流しそう。合流してから前後編的に『4』までいきそう。『オイレンシュピーゲル』も『スプライトシュピーゲル』も4冊あるから、『テスタメントシュピーゲル』も4冊あるのが美しい。 『2』で決着しないとすると、いつになるんだろうか。『2』が出たのが、ほんの半年前で、『1』から4年以上経ってのこと。ここまで来たらずっと待つから、是が非でも決着させて欲しい。それも、みんなに希望のある形で。

嵐の前 - スプライトシュピーゲルIV

 『スプライトシュピーゲルIV テンペスト』を読んだ。 今度は 『オイレンシュピーゲル 肆』 でMPBの視点から描かれた事件が、MSSの鳳(あげは)・乙(つばめ)・雛(ひびな)の視点から描かれている。 証人として集まった面々が素敵だった。彼らとMSSとで繰り広げた"世界統一ゲーム"の展開のダイナミックだったこと。良かれと思ったことが破滅の引き金となり、悪法が巡り巡って連帯を生んだり、とてもスリリングだった。 "世界統一ゲーム"をはじめ、作中で繰り返し現れたキーワードは、〈徒労感〉 [1] 。思い通りにならないのなら、何かのために懸命になることにどんな意味があるのか分からなくなる。なるようにしかならないのなら、わざわざ辛い思いをする必要なんてどこにあるのか? なんて。 さて、これで『スプライトシュピーゲル』が完結。続いてはMPBとMSSが合流しての最終章、『テスタメントシュピーゲル』。1と4年以上の間を空けて昨年8月に2が出たところ。完結するのはいつになるだろうか。 なんて気にするのはまだ早いか。まだ1を読み始めたばかりだ。 [1] ここので〈徒労感〉は「学習性無力感 ("Learned Helplessness") 」のことだろうか。

些末な翼 - スプライトシュピーゲル III

『スプライトシュピーゲル III いかづちの日と自由の朝』を読んだ。 I, II巻ではあまり前に出なかった面々の、違った一面が見られた。事件にバロウズ神父の補佐だった冬真(とうま)が自分から関わったり、後方支援が役割の接続官(コーラス)である水無月(みなづき)が巻き込まれたり、それから殻に閉じこもりっきりの雛(ひびな)がヘッドフォンを外したり。中でも冬真が動き出したのが嬉しい。特甲児童でこそないけれど、守られてばかりになっていなくて好ましい。 〈シュピーゲルシリーズ〉としてみると、『オイレンシュピーゲル』の視点ではあまりにあっさりしていたトラクルおじさんの逮捕の裏側が分かってスッキリした。 各巻単体でも面白いし、シリーズ通しても発見がある。次も楽しみだなぁ。

Heat Beat - スプライトシュピーゲル II

『スプライトシュピーゲル II Seven Angels Coming』を読んだ。 『オイレンシュピーゲル 弐』 で描かれた事件が、MSSの鳳(あげは)・乙(つばめ)・雛(ひびな)の視点から描かれている。 あちらでは唐突に思えた描写が補完されてスッキリ。特に皇(すめらぎ)と螢(ほたる)についての情報が増えたのが嬉しい。 MSSの面々に目を遣ると、モリサンとの遣り取りを経て乙の芯が通ってきたのが心強い。ドキドキしたいっしょーっ!!

はねっかえり - スプライトシュピーゲル I

『スプライトシュピーゲル I Butterfly & Dragonfly & Honeybee』を読んだ。 『オイレンシュピーゲル』と比べると、こちらの方がキャラが濃い。こんなパーソナリティないだろうと思うけれど、もしかしたらこれも〈特甲〉の影響かもしれない、と思うと切なくなってくる。 自分は今のところ『オイレンシュピーゲル』の方が好み。でも、『オイレンシュピーゲル』も壱を読んだ時点では、キャラクタに思い入れが大して無かったことを思い出すと、予断を許さない。

Viert Kamerad - オイレンシュピーゲル 参、肆

『【合本版】オイレンシュピーゲル 全4巻』の残り『参 Blue Murder』と『肆 Wag The Dog』を読んだ。 『参』を読んだけれど消化不良だったので、『肆』まで一気に読んでしまった。 ついに特甲児童どうしの戦いが繰り広げられたり、特甲に関する情報が徐々に出てきたりしてテンションが上がる。 あと、ミハエルに続きパトリックなるまた渋いおっさんが出てきたのも嬉しい。 でも、まだまだ謎だらけだよ!! みんなの記憶とか特甲レベル4とか色々気になってしょうがない。 次は『スプライトシュピーゲル』だ。

Ein Team - オイレンシュピーゲル弐

『【合本版】オイレンシュピーゲル 全4巻』を『弐 FRAGILE!!/壊れもの注意!!』まで読んだ。 この巻では、一旦3人をばらばらに配置した上でその関係が長篇で描かれていた。主役の3人の少女それぞれにフォーカスした短篇集だった 『壱』 とは対称的。 『壱』と同じ短篇連作だと思い込んでいたので、騙された。一話だけ読もうと思って読み始めたら、止め時を見失ったじゃないか!! 陽炎が一番大人びているように見えて、ミハエルには女の子女の子したリアクションなのが可愛らしい。彼の期待に応えてやっているのは狙撃だけれど。

Drei Hunde - オイレンシュピーゲル壱

『【合本版】オイレンシュピーゲル 全4巻』を読んでいる。『壱 Black&Red&White』を読み終わったところ。 壱は3話構成。主役の3人の少女それぞれにフォーカスした話だった。ライトノベルというには色々とヘビィ。『マルドゥック・スクランブル』ほどではないけれど。 世界観だったり台詞回しだったり、あちこちで皮肉が利いているのがいい。 プリンチップ社のエージェント、リヒャルト・トラクルとの戦いはまだまだこれからかな。それとも続編『スプライトシュピーゲル』や『テスタメントシュピーゲル』にまで引っ張るのかな。