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行きは良い宵 - 宵物語

『宵物語』を読んだ。もう何シーズンの何冊目か思い出せない(記憶に留める気がない)。 収録されているのは、「まよいスネイル」と「まよいスネイク」の2編。どちらにも八九寺真宵は要所要所で登場するけれど、多寡でいうと他のキャラに譲ってしまっている。 「まよいスネイル」では、阿良々木暦と行動をともにするのは押野忍と斧乃木余接。『傾物語』の「まよいキョンシー」のときも似たポジションだったことを思い出す。いっしょに行動すると迷子になってしまうから。 「まよいスネイル」では千石撫子から八九寺真宵への引き継ぎの話。こちらは主に千石撫子の視点で語られる。専門家にまたえらい評価を受けてしまったものだが、彼女は一体何なんだろうか。 話は変わるけれど、『結物語』から作中の時系列では遡っているので、すでに回収されている伏線を張っているかのような発言がちょくちょく出てくるのがおもしろい。これなら投げっぱなしになりようにない。

漂白される記憶 - 掟上今日子の色見本

〈忘却探偵〉シリーズ10冊目『掟上今日子の色見本』を読んだ。 久し振りに1冊目の『備忘録』に出てきた寝室の伏線に触れられたかと思ったら触れられただけだった。代わりと言うわけではないだろうけれど、親切守が今日子さんが以前に作ったデータにアクセスするくだりがある。ますます○○○ さん疑惑が濃くなる。 この巻で描かれる事件自体よりも、親切守をとおして隠舘厄介の胡散臭さを体験できたこととか、今日子さんが忘却探偵であることの意義について改めて語り直されたりしたことがおもしろい。犯人の動機を『旅行記』と並べてみると、この世界で今日子さんがどう見られているかよくわかる。

伝説と経験 - 悲終伝

『悲終伝』を読み終えた。10冊目の本巻にて〈伝説〉シリーズ終結。 最初の 『悲鳴伝』 を読んだときは、続くかどうか、続いても終わるかどうか知れなかった。続く四国編は、5冊 ( 『悲痛伝』 、 『悲惨伝』 、 『悲報伝』 、 『悲業伝』 、 『悲録伝』 ) も続いて、7冊目 『悲亡伝』 でも終わりが見えなくて、それが次の 『悲衛伝』 でクライマックスに差し掛かったと思ったら、続く 『悲球伝』 そしてこの『悲終伝』で見事に着地を成し遂げた。 綺麗な着地とは言えない。救助船〈リーダーシップ〉で何が起こったのかもう少し読みたいし、〈人間王国〉の乗鞍ぺがさ&馬車馬ゆに子にも活躍の場が欲しかった。ソフトランディングでさえない。ハードランディングでさえないかもしれない。タッチアンドゴーの感さえある。 それでも、終わってよかったと思う。よい終わりだったと思う。主人公・ 空々空 ( そらから・くう ) が、〈英雄〉と呼ばれた少年が、変化してよかったと思う。育まれたと見る人も衰えたと見る人もいそうだけれど、自分はよかったと思っている。 『悲鳴伝』と同じように『悲終伝』も読み進めるにつれて 『少女不十分』 のイメージが浮かび上がってきた。『悲痛伝』から『悲球伝』にかけてすっかり薄れていたイメージが、輪郭を取り戻し、彩りに満たされた。 よかった。よい話だった。 地濃鑿 ( ちのう・のみ ) もいいキャラしてた。その地濃様が初めて登場する四国編が長過ぎただなんて、これっぽっちも思っていませんよ、ええ。

手袋の中身 - 悲球伝

『悲球伝』をやっと読んだ。 『人間王国』に入国した手袋鵬喜と、『リーダーシップ』に侵入し杵槻鋼矢と乗船していた人造人間『悲恋』。この2人と1体の視点がメイン。前巻『悲衛伝』のラストでとんでもないことになった人工衛星《悲衛》組は一難去ってまた一難といった感じ。 手袋鵬喜がなし崩し的にとんでもない立場に置かれていく様子が、シリーズ前半の空々空の変奏のようで最終巻(だよね?)『悲終伝』で注目しつつ、冒頭であっさり退場しかねないから、心の準備はしておこう。

犯人はバレる - 掟上今日子の裏表紙

『掟上今日子の裏表紙』を読んだ。 表紙の囚人服から想像できるとおり、本作では今日子さんは直接捜査できない。自分に容疑がかかった事件を解決するため、裏から糸を引くことになる。裏拍子というわけだ(うまくない) 忘却探偵ゆえに(彼女の主観的には)ワトソン役がいないわけだけれど、そこはシリーズ準レギュラーの隠館と日怠井が、主戦場に立ち主旋律として捜査を引っ張ることになる(やっぱりうまくない。主導しているのは今日子さんの押しだ)。 最速の探偵ゆえに常人からしたら突拍子もないことを言っているように見えるけれど、総当たり推理の中には調子っぱずれも混ざっているけれど、動けないからこそ今日子さん節が際立っていて、かえって安心するくらいだった(うまくないのに重ねていく)。 次はどんなシチュエーションに置かれるのかな。今回と似て非なるシチュエーションとして協力者がいない嵐の山荘とか? (やるなら最後までやれよ、とは自分でも思う)

左手にうちわ - 掟上今日子の家計簿

『掟上今日子の家計簿』を読んだ。今回は短篇集で、次の4篇が収録されている。タイトルにある家計簿は、直接登場こそしなかったもものの、1篇目を意識してのタイトルかな。 「掟上今日子の 誰がために ( クイボノ ) 」 「掟上今日子の叙述トリック」 「掟上今日子の心理実験」 「掟上今日子の筆跡鑑定」 2篇目のタイトルがおもしろい。叙述トリックは、叙述トリックものだと知った時点で結構なネタバレになる。なのに、タイトルで宣言しちゃうなんて。しかし、これの解決が一意に定まらないように思えて、どうにも歯がゆい。 あと本シリーズ通してずっと疑問なのだけれど、今日子さんが実は何も忘れていないってことないのかね。なんか最後の最後でそういうちゃぶ台返しがありそうな、嫌な予感がしてならない。

羽根ムーン - 掟上今日子の婚姻届

『掟上今日子の婚姻届』を読んだ。 冤罪体質の厄介が語る冤罪論がおもしろかった。それにしても、濡れ衣を着せられたうえに、それを晴らしたら晴らしたで、別の理由で疎ましがられるとか、不幸にもほどがないだろうか。逆転裁判シリーズの矢張も大概だけれど、彼も相当だ。 それから、事件解決のためのズルを使った今日子さんが可愛らしい。しかし、その方法が方法だけに、『旅行記』を読んだ時の疑問が再び浮かび上がってくる。今日子さんは、自らの手で書いたメモをどれだけ信じているのだろうか。 もっと言えば、自分が探偵だとどれだけ信じているのだろうか。

秘す自筆 - 掟上今日子の旅行記

『掟上今日子の旅行記』を読んだ。 寝たら記憶がリセットされる今日子さんが旅行だなんて!? とワクワクさせてくれるタイトル。内容も、おもしろいところはおもしろかった。特に、今回の犯人が狙っているもの。あと、今日子さんの自分の過去に対するスタンスも、素敵だった。 しかし、ひとつ大きな疑問というか欲求不満が。今回の件があったのなら、なぜ自分が探偵なのか? そもそも本当に探偵なのか? という方向に推理をはたらかせそうなものだけれど、そちらの方向に話が全然いかなかったこと。 たとえ忘却している過去に興味がなくても、謎を解決するのに網羅的にアプローチする今日子さんのことだから考えそうなものだけれど。

しのぶもぢずりDVS - 忍物語

『忍物語』を読んだ。収録されているのは「しのぶマスタード」。前巻 『結物語』 から時系列が遡っていて、大学生時代の阿良々木暦が描かれている。 ここから「モンスター・シーズン」開幕と銘打たれている。前巻の「オフ・シーズン」は幕間だったということか。 物語のうえでは、 『業物語』 の「うつくし姫」、「あせろらボナペティ」の続きになっている。 『終物語〈中〉』 の「しのぶメイル」のようなことにならなくてよかった。 本筋とは関係ないけれど、だんだんと自己言及に慮ることなくなってきたように思う。忍が生死流の奥義として挙げた名前が、『刀語』の主人公・鑢が使う虚刀流のそれだった。太刀筋は違うだろうけれど。そもそも虚刀流は刀を使わない。

ひえぇー - 悲衛伝

『悲衛伝』を読んだ。 ちゃんと佳境を迎えていて驚く。 最初の 『悲鳴伝』 でこんなのどうやって決着させるんだと不安を覚え、続く『悲痛伝』から始まる四国編がなかなか終わる気配を見せず、6冊目の 『悲録伝』 でようやく決着し次の 『悲亡伝』 で本筋に戻ったと思ったら、何この急展開。 やってくれたと言うかやってしまったと言うか。次巻、『悲球伝』はどうなることやら。

This is a knot, is not it? - 結物語

『結物語』を読んだ。 オフシーズンの完結篇である本作でも物語の「結末」は訪れない。表紙は「結納」を思わせるけれど、物語は納まる気配を見せない。 むしろ、新シリーズの幕開けに見える。舞台を5年後に移して、警察官となった暦が、直江津署・風説課として怪異と向き合う様が描かれている。 これまでとこれからをつなぐ結び目。そんな印象の一冊だった。

撫国無双 - 撫物語

『撫物語』を読んだ。撫子の撫子による撫子のための物語だった。 トラブルメーカーも撫子だし、トラブルシューターも撫子だし、モブも撫子だった。 くどくて、あくどくて、あざとくて、聡くて、胸が熱くなって、胸焼けする。 そんな過剰なお嬢さんの物語だった。 余談。ついに ●●や ▲▲への言及まで始まって、これまで以上にメタい。あるいは伏線だったりするのだろうか。

死体よ、行くがね ー 掟上今日子の退職願

『掟上今日子の退職願』を読んだ。早いものでもうシリーズ5冊目。 今回は次の四話が収録されている短篇集。どれもミステリィ然とまとまっていて、逆に意外だった。 第一話 掟上今日子のバラバラ死体 第二話 掟上今日子の飛び降り死体 第三話 掟上今日子の絞殺死体 第四話 掟上今日子の水死体 どの話も、犯人が何を思ってそんなことをしたのかを描きたかったんじゃないかなぁ、と何となく想像する。普通に考えたらそんなことしないのだけれど、普通に考えられていたら事件なんて起こさないわけで。

某氏 - 悲亡伝

『悲亡伝』を読んだ。〈伝説〉シリーズ7冊目。2~6冊目と長丁場だった四国編がようやく終わり、本巻から新展開。やっとだよ。 生き残っている面々それぞれにフォーカスが順番に当たっていく中で、自分がもっとも気にしているのが悲恋。あの彼女 のパーソナリティがインストールされている。 そんな悲恋に空々空が出会ったら、どんな反応を示すのだろうか。

斬れ味+10 - 業物語

『業物語』を読んだ。オフシーズン2冊目。収録されているのは、「うつくし姫」、「あせろらボナペティ」、「かれんオウガ」、「つばさスリーピング」の4篇。 忍野忍というかキスショット=アセロラオリオン=ハートアンダーブレードというかさらにそれ以前の×××姫というか、ともあれ彼女の話 = 最初の2篇が中心だった。後半の2篇にはいまいちのめり込めず。「うつくし姫」から「あせろらボナペティ」の流れがよかっただけに、余計に。 やっぱり今も吸血鬼ものが好きなのだなぁ、自分は。

遺言のジャーゴン - 掟上今日子の遺言書

『掟上今日子の遺言書』を読んだ。『掟上今日子の挑戦状』の次に出た巻。〈忘却探偵〉シリーズもこれで4冊目。 毎回、語り手が変わるのかと思っていたけれど、ここに来て1冊目と同じ隠館が語り手として戻ってきた。だからといって、今日子さんが彼のことを覚えているわけではないのだけれど。 ネタバレになるから詳しくは書かないけれど、今回の犯人の動機は分からないでもない。事件を起こしたいと思うほど強烈なシンパシーを覚えるわけではないけれど、自分も近い方向の性格のように思う。「~されたいと思わない」は「~されたい」よりは「~されたくない」に近いという程度ではあるけれど。 そして、今回も今日子さんの正体には近づけない。次巻『掟上今日子の退職願』に引っ張っているように見えるラストだけれど、〈物語〉シリーズの読者には周知のとおり作者の前科が余談を許さない。

大きく記憶を - 掟上今日子の挑戦状

『掟上今日子の挑戦状』を読んだ。 この巻はインターミッション的。最後まで今日子さんの正体に近づくような情報は出てこなかった。 代わりに今日子さんの人となりが、それぞれ異なる視点から語られる3つの事件を通して、多面的に描かれている。 ところで、何の根拠もない思いつきだけれど、今日子さん、実は忘却探偵じゃなくてフリをしているだけってことはないだろうか。 最初からってことはなくても、シリーズの途中からそうなっていたりするとか。

推薦以前 - 掟上今日子の推薦文

『掟上今日子の推薦文』を読んだ。 『掟上今日子の備忘録』 の続き。 このシリーズ、語り手は変わっていくのね。前の巻では隠館だった語り手が、この巻では親切という新キャラクタになっている。ホームズとワトソン形式かと思っていたので驚いた。 一度寝たら記憶がリセットされる掟上今日子の性質を考えると、こういう形式にしないと毎回同じような自己紹介が入ったりして煩わしくなるか。 このシリーズ、各話で提示される謎より掟上今日子の来歴の方が気になってしょうがない。『推薦文』でも『備忘録』に引き続き、最後に彼女の正体が示唆される。これはやっぱりそういうことなんだろうか?

追う廊下 - 愚物語

『愚物語』を読んだ。収録されているのは、次の3篇。 そだちフィアスコ するがボーンヘッド つきひアンドゥ 「そだちフィアスコ」で描かれる老倉育が我が子のようで、彼女の愚かさが我が事のようで、愛憎相半ばする。 我が子と思えば馬鹿な子ほど可愛いし、我が事と思えば心理学でいうシャドウなので認め難い。 どちらにせよ、キーセンテンスはこれ。 余計なことをするから、余計な目に遭う。 自分は、係数が低いなりに学習して余計なことはしないようにしている一方で、それでもやっぱり後先考えずに余計なことをしたいのだ。そう思い知らされた。 三つ子の魂百までとはよく言ったもので、学習したのは躊躇ばかりで、指向している先はちっとも変わっていない。余計なことをしたくなる傾向が抜けていない。 それでも育には幸せと思える境遇を得て欲しい。そう思うのは、余計なお世話か。

比類なき悲しみの類い - 悲録伝

『悲録伝』を読んだ。これにて〈伝説〉シリーズ四国編ようやく完結。長かった。 『悲鳴伝』 の時は続きが出るかどうかも不確かで 『いつでも書きたい巨編』になっている なんてあとがきにあったのに、その次がいきなり5巻構成の大巨編。前菜の次にいきなりメインディッシュが出てきた気分。 さらに巻末には続刊の予告が。それも4冊も。タイトルは刊行順に『悲亡伝。『悲衛伝』、『悲球伝』、『悲終伝』。〈物語〉シリーズの前例があるから、『悲終伝』で終わるとは限らないし、終わらなさそうな気がする。前日譚を描いた『悲礼伝』とか出たりして。 構成への感想はこれくらいにして、内容への感想も少しは。 結末は2つの点で意外だった。まず地球陣との戦いに繋がったこと。四国編は地球との対決ではなさそうだったのに、ちゃんと繋げてきた。次に、結末。タイトル通り悲しいと言えば悲しいのだけれど、恐れていたよりは惨たらしくはなかった。つまりあんまり人が死んでない。 今回生き残った魔法少女たちは、続編でどう絡んで来るのか(それとも絡んでこないであっさり退場するのか)。そして何より主人公・空々空と、今回消え損なった悲恋の関係はどうなっていくのか。