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吐息と生き - 『SFマガジン700【海外編】』

『SFマガジン700【海外編】』を読んだ。収録されている12篇は、どれもそれぞれ良かった。手元には各篇に対するメモがある。でも、その中で特に印象的だったのはこの4篇。 「対称(シンメトリー)」 グレッグ・イーガン 「ポータルズ・ノンストップ」 コニー・ウィリス 「小さき供物」 パオロ・バチガルピ 「息吹」 テッド・チャン さらに強いて1篇だけを選ぶとしたら、「息吹」。30ページに満たず短篇としても短い方で、決して多くが語られているワケではない。なのに、読み終えた時には、とても大きな異世界が広がっていてその歴史について思いを巡らせていた。そこに至るまでも、とてもスリリング。最初は語り手について想像を巡らせ、次に語り手と一緒に謎に迫り、真実に思い至ったと思ったら!! こうして振り返ってみると、改めてその凄さに気付かされる。震えてしまいそう。この12篇に限らずこれまで読んだ短篇の中でもトップクラスな気がしてきた。

情上下 - 空襲警報

「コニー・ウィリスの短篇集『空襲警報』を読んだよ」 「 『混沌ホテル』 を読んでこちらも読みたくなったって言っていましたね」 「うん、既読の印象がすっかり変わってビックリしたよ」 「既読なのは、 『マーブル・アーチの風』 と 『最後のウィネベーゴ』 ですね。それぞれ2009年の9月10月に読んでいます」 「もう5年近くも前になるのか。その時はほとんど印象に残らなかったなぁ。全然覚えてなかった」 「読んだ時は「肩の力を抜いて楽しめる話に飢えていた」からじゃないですか? どちらもシリアスな話ですから」 「かもなぁ。あるいは再読した時こそよくわかる作品なのかも。訳者あとがきにも『マーブル・アーチの風』は「ぜひ二十年後に(あるいは結婚して二十年経ってから)再読していただきたい」なんてあるし」

註中毒 - 混沌ホテル

コニー・ウィリスの短篇集『混沌ホテル』を読んだ。この短篇集は、元々一冊だった "The Best of Connie Willis: Award-Winning Stories"を2冊に分冊した内の1冊。分冊にされたのは1冊だと厚くなり過ぎるからのようだ。確かにこの1冊で400ページ超と、十分な厚みがある [1] 。 収録されているのは次の5篇。 『混沌ホテル』 『女王様でも』 『インサイダー疑惑』 『魂は自らの社会を選ぶ』 『まれびとこぞりて』 一番好みだったのは『魂は自らの社会を選ぶ』。ただ万人受けはしないだろう。23ページという短さにも関わらず、原註に訳註さらに註への註まで飛び交って、シーケンシャルに読めない。でも、註あってこその面白さだから飛ばしてはいけない。むしろ、註を中心に読んでいい [2] 。 対称的に、シンプルに楽しめたのは『まれびとこぞりて』。短篇なのに展開がダイナミックで読後の満足度も高い。いかにもコニー・ウィリス作品らしくドタバタした展開で、映画にしたらさぞ映えるだろう、と思う。ネタバレしてしまいそうなので、詳しい理由を書くのは控える。 残りの3作品については手短に。『混沌ホテル』は正直ついていけなかった。『女王様でも』と『インサイダー疑惑』はそれぞれ 『最後のウィネベーゴ』 と 『マーブル・アーチの風』 で既読だったけれど面白かった。やはり『インサイダー疑惑』は良い。 さあ、次は後半の『空襲警報』だ。 [1] 川上稔や京極夏彦の文庫と比べたらいけない。 [2] 註の主張の強さが 円城塔の『烏有此譚』 を彷彿とさせる。

黒から白へ

『ブラックアウト』、『オールクリア1・2』を読んだ。タイトルは2種類あるけれど、実態としては上・中・下巻。最後のオールクリアが発売されたのを機に一気読み。 本作は『ドゥームズデイ・ブック』、『犬は勘定に入れません』に続く史学生シリーズの長篇第3弾。短篇も含めると、『ドゥームズディ・ブック』よりさらに前に『見張り』が『わが愛しき娘たちよ』に収録されている。 シリーズ中で自分が読んだのは、『犬は感情に入れません』だけ。というわけで、そのコミカルなノリを期待していたのだけれど、第二次世界大戦下のイギリスが舞台ということもあり、重苦しい話だった。ちょっと調べてみると『犬は感情に入れません』の方が例外だったみたい。 さらに調べてみると、『ドゥームズデイ・ブック』の雰囲気に近いし、『見張り』との繋がりも強いみたい。シリーズを順番に読んでから読んだ方が楽しめたんじゃないか、と少し後悔している。 それでも、先が気になってこの厚さにも関わらずドンドン読まされるのはさすが。そして、きちんと着地させてくれるので、厚さも相まって読み終えたときの満足感も一入(ひとしお)。 ちなみに、この作者の作品はシリーズ外も含めるとこれまでに次の4冊を読んでいる。『ブラックアウト』、『オールクリア1・2』も含めて、自分には『航路』の印象深さが格別。 『犬は勘定に入れません』 『マーブル・アーチの風』 『最後のウィネベーゴ』 『航路』

流れる慣れる枯れる

『航路』 を読んだ。 これまでに読んだ同著者の作品は、次の3冊。 これまでで、もっとも引き込まれた。 『犬は勘定に入れません』 ( 感想 ) 『マーブル・アーチの風』 ( 感想 ) 『最後のウィネベーゴ』 ( 感想 ) 本書のテーマは臨死体験。 と言っても、いわゆるスピリチュアルではない。 問題は、その医学的な意味だ。 舞台は病院で、主人公は認知心理学者ジョアンナと神経内科医リチャード。 彼女たち協力してそれぞれの専門領域から臨死体験にアプローチしていく。 小説だからもちろん架空の設定はあるのだけれど、引き出された結論はスピリチュアルとは無縁だ。 でも、だからと言って、無味乾燥でもない。 この匙加減は、素敵だと思う。 このように臨死体験を題材にしたSFとも読めるけれど、本書は登場人物も鮮明な印象を与えてくれる。 中でも、入院患者のメイジーが愛らしい。 心臓を患っていて、災害マニアで、訪問者を引き留めては困らせるけれど、とても。 結末も素敵だった。 これ以上ないんじゃないだろうか、と思う。 二段組みかつ上下巻構成とボリュームは多かったけれど、結末に向けて収束し始めたらなかなか閉じられなくなって、あっという間に読みきってしまった。

犬はウィネベーゴではありません

『最後のウィネベーゴ』 を読んだ。 本書は、 『マーブル・アーチの風』 、 『犬は勘定に入れません』 の著者、コニー・ウィリスの短篇集。 収められているのは、以下の4篇。 「女王様でも」 「タイムアウト」 「スパイス・ポグロム」 「最後のウィネベーゴ」 自分が一番気に入ったのは、3篇目の「スパイス・ポグロム」。 スラップスティックな雰囲気が良かった。 最後は丸く収まるし、エンターテインしていると思う。 最近、堅めの本ばかり読んでいるから、こういう肩の力を抜いて楽しめる話に飢えていたのだろうか。

There are two sorts of books

『マーブル・アーチの風』 を読んだ。 著者は、 『犬は勘定に入れません』 と同じコニー・ウィリス。 本書は以下の5篇からなる中短篇集。 『白亜紀後期にて』 『ニュースレター』 『ひいらぎ飾ろう@クリスマス』 『マーブル・アーチの風』 『インサイダー疑惑』 中でも、最後の『インサイダー疑惑』が面白かった。 ジャーナリストがチャネラーのペテンを暴こうとする話なのだけれど、後半の展開が素晴らしい。 ところで、本篇にはヘンリー・ルイス・メンケンという実在した人物が登場する。 この人の造詣が面白くて興味が沸いたので、調べてみると箴言が沢山引っかかってきた。 例えば、こんな言葉があるらしい。 2種類の本がある。誰も読まない本と誰も読む必要のない本だ。 うぅん、耳が痛い。

Countable, Accountablity

『犬は勘定に入れません』 を読んだ。 エンターテインメント性が高くて、ついつい一気読みしてしまった。 正直、後悔している。 タイトルだけで借りて、何の期待もしていなかったのが良かったのかもしれない。 本書は大きく二つの謎が物語を引っ張るのだけれど、そのうち一つは全体の5分の4あたりを読んだあたりで気がついた。 一気読みしてしまったのは、その答え合わせがしたかったという理由もある。 キャラも立っているし、楽しい小説だった。