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血を分かつ - BLACK BLOOD BROTHERS 1~11

『BLACK BLOOD BROTHERS 1』~『〃 11』を読んだ。これにて本編完結。全17巻合本版なので短篇集『〃 (S)』6冊もすぐに読めるけれど、そちらは追々。

物語の中心は、吸血鬼の兄弟ジローとコタロウ、それから調停員 (コンプロマイザー) を務める人間のミミコ。調停員というのは、吸血鬼どうしや吸血鬼と人間との間で起こるトラブルの仲裁を仕事とする人のこと。

この3人に限らず、魅力的な人物がこれでもかと登場する。なかでも、ジローとの因縁が深いカーサ。それから後半の活躍が目覚ましいサヤカ。この2人には肩入れしてしまった。〈東の龍王〉ことセイもシリーズを通して働き詰めで、なんというかお疲れ様でした。年経た古血 (オールド・ブラッド) とはいえ、歯がゆい思いもしたんじゃないだろうか。人間の大人も負けていない。ミミコの上司として登場する尾根崎や陣内も渋い。

魅力的なのは登場人物だけじゃない。スケールの大きな物語にも引き込まれる。吸血鬼社会と人間社会の関係を真正面から描いている。吸血鬼社会に放り込まれた人間や人間社会に紛れる吸血鬼ではなく、両者の社会・政治的側面をここまで押し出した物語は、稀少だと思う。作中世界の歴史に深く刻まれる事件まで起こる。そして当事者として事を構える。

このシリーズは、大事件を解決して平和を取り戻す物語ではない。大事件は解決されて平和にはなるが、その平和はもとの形をしていない。まだ確たる形はない。これから形作られていくことだろう。この世界に生きる人間・吸血鬼の大半にとって、本当に大変なのはこれから。きっと少なくない混乱が起こる。

それでも読み終えた今、とても明るい気持ち。あれだけ複雑な事情があり単純な大団円でこそない。けれど、活気のある未来が、騒々しい生活が、ありありと想像できる。

と感想を描いていたら、本編で描かれていない日常がますます気になってきたので、短篇集も少しずつ味わっていこう。

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『ゴールデンカムイ 15』、『〃 16』を読んだ。16巻を読み始めてから、15巻を買ったものの読んでいなかったことに気がつく。Kindle版の予約注文ではままあること。 15巻は「スチェンカ・ナ・スチェンク」、「バーニャ(ロシア式蒸し風呂)」と男臭いことこのうえなし。軽くWebで調べてみたところ、スチェンカ・ナ・スチェンク (Стенка на стенку) はロシアの祭事マースレニツァで行われる行事のようだ[1]。それなりになじみ深いものらしく、この行事をタイトルに据えたフォークメタルStenka Na StenkuのMVが見つかった。 16巻では杉元一行は巡業中のサーカスに参加することになる。杉元と鯉登の維持の張り合いが、見ていて微笑ましい。鯉登は目的を見失っているようだが、杉元もスチェンカで我を失っていたので、どっこいどっこいか。なお、サーカス/大道芸を通じた日露のつながりは、実際にもこのような形だったようだ[2]。 個々のエピソードから視線を上げて、全体の構図を眺めてみると、各勢力がすっかり入り乱れている。アシㇼパは尾形、キロランケ、白石とともにアチャの足跡を辿り、そのあとを鶴見のもとで家永の治療を受けた杉元が鯉登、月島を追っている。今更だけれど、杉元やアシㇼパは、第七師団と完全に利害が衝突していると考えていないはずだった。一方で、土方一味も入墨人皮を継続。むしろ彼らの方が第七師団との対立が深刻だろう。さらに北上するキロランケはまた別の目的で動いているようだけれど、なんで尾形も一緒なんだっけ? 『進撃の巨人』に引き続き、これもそろそろ読み返す時期か。 [1] 5つの暴力的な伝統:スラヴ戦士のようにマースレニツァを祝おう - ロシア・ビヨンド [2] ボリショイサーカスの源流は、ロシアに渡った幕末日本の大道芸人たちにあった 脈々と息づく「クールジャパン」 | ハフポスト

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