スキップしてメイン コンテンツに移動

粘菌飢饉 - 粘菌生活のススメ

『粘菌生活のススメ』を読んだり眺めたり。『変形菌 (Graphic voyage)』に引き続き変形菌(=粘菌)関連もう一冊。著者は粘菌という言葉の方が好きとのことなので、この記事では粘菌で。

こちらは雑誌的な作りで軟らかめな印象。文章あり図解あり写真ありで、章の合間には数ページのレポートが挟まったりもする。レポートと言っても、大学で課されるようなそれではなくて、研究者や学者の方を尋ねた訪問記のようなイメージ。

ちなみに訪問先の一人、川上新一さんが本書の監修であり、『変形菌 (Graphic voyage)』の著者でもある(あとで気がついた)。『粘菌 その驚くべき知性』を書いた粘菌研究者・中垣俊之さんのところも訪問している。

話を戻して、ざっと本書の構成を概観すると、第1章が基礎知識。「「粘菌」と「変形菌」」からはじまり、生態や各部位の名前などが紹介される。第2章は写真が主役。ページ一杯に粘菌の姿を楽しめる。第3章が粘菌探し体験記。各地での粘菌探しの様子や、粘菌撮影のコツなんかが語られる。

まずます自分で見てみたくなる。粘菌に飢えている。つまり粘菌飢饉だ(粘菌ジョーク)。

というわけで今年頭に出版された『変形菌入門』の内容紹介に「変形菌観察の事始め」とあるので、こちらにも手を出してみようかな。執筆者が、川上新一さん、本書の著者・新井文彦さん、『変形菌 (Graphic voyage)』の編集・髙野丈さんということだし。

最後に覚書。順に、本書の新井文彦さんのほぼ日短期連載、『変形菌 (Graphic voyage)』の写真を撮影した佐藤岳彦さんのナショナルジオグラフィック記事、お二人を含む写真家の写真展の開催案内。

このブログの人気の投稿

北へ - ゴールデンカムイ 16

『ゴールデンカムイ 15』、『〃 16』を読んだ。16巻を読み始めてから、15巻を買ったものの読んでいなかったことに気がつく。Kindle版の予約注文ではままあること。 15巻は「スチェンカ・ナ・スチェンク」、「バーニャ(ロシア式蒸し風呂)」と男臭いことこのうえなし。軽くWebで調べてみたところ、スチェンカ・ナ・スチェンク (Стенка на стенку) はロシアの祭事マースレニツァで行われる行事のようだ[1]。それなりになじみ深いものらしく、この行事をタイトルに据えたフォークメタルStenka Na StenkuのMVが見つかった。 16巻では杉元一行は巡業中のサーカスに参加することになる。杉元と鯉登の維持の張り合いが、見ていて微笑ましい。鯉登は目的を見失っているようだが、杉元もスチェンカで我を失っていたので、どっこいどっこいか。なお、サーカス/大道芸を通じた日露のつながりは、実際にもこのような形だったようだ[2]。 個々のエピソードから視線を上げて、全体の構図を眺めてみると、各勢力がすっかり入り乱れている。アシㇼパは尾形、キロランケ、白石とともにアチャの足跡を辿り、そのあとを鶴見のもとで家永の治療を受けた杉元が鯉登、月島を追っている。今更だけれど、杉元やアシㇼパは、第七師団と完全に利害が衝突していると考えていないはずだった。一方で、土方一味も入墨人皮を継続。むしろ彼らの方が第七師団との対立が深刻だろう。さらに北上するキロランケはまた別の目的で動いているようだけれど、なんで尾形も一緒なんだっけ? 『進撃の巨人』に引き続き、これもそろそろ読み返す時期か。 [1] 5つの暴力的な伝統:スラヴ戦士のようにマースレニツァを祝おう - ロシア・ビヨンド [2] ボリショイサーカスの源流は、ロシアに渡った幕末日本の大道芸人たちにあった 脈々と息づく「クールジャパン」 | ハフポスト

戦う泡沫 - 終末なにしてますか? もう一度だけ、会えますか? #06, #07

『終末なにしてますか? もう一度だけ、会えますか?』の#06, #07を読んだ。 『終末なにしてますか? もう一度だけ、会えますか?』の#06と#07を読んだ。#06でフェオドールの物語がひとまずは決着して、#07から第二部開始といったところ。 これまでの彼の戦いが通過点のように見えてしまったのがちょっと悲しい。もしも#07がシリーズ3作目の#01になっていたら、もう少し違って見えたかもしれない。物語の外にある枠組みが与える影響は、決して小さくない。 一方で純粋に物語に抱く感情なんてあるんだろうか? とも思う。浮かび上がる感情には周辺情報が引き起こす雑念が内包されていて、やがて損なわれてしまうことになっているのかもしれない。黄金妖精 (レプラカーン) の人格が前世のそれに侵食されていくように。

リアル・シリアル・ソシアル - アイム・ノット・シリアルキラー

『アイム・ノット・シリアルキラー』(原題 "I Am Not a Serial Killer")を見た。 いい意味で期待を裏切ってくれて、悪くなかった。最初はちょっと反応に困るったけれど、それも含めて嫌いじゃない。傑作・良作の類いではないだろうけれど、主人公ジョンに味がある。 この期待の裏切り方に腹を立てる人もいるだろう。でも、万人受けするつもりがない作品が出てくるのって、豊かでいいよね(受け付けないときは本当に受け付けないけれど)。何が出てくるかわからない楽しみがある。