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幻獣現住 - ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅

『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』(原題 "Fantastic Beasts and Where to Find Them") を見た。〈ハリー・ポッター〉シリーズの1作だけれど、ここから見始めて大丈夫な作り。作中時間は70年前と二世代くらい離れていて、物語のうえでも強いつながりはなかった。5部作らしいので、これから絡むようになるかもしれないけれど。

〈ハリー・ポッター〉シリーズの舞台はイギリスの魔法界だったけれど、本シリーズの舞台はアメリカの魔法を使えない人間――イギリスではマグル、アメリカではノー・マギ――の世界。そこに魔法動物が逃げ出してしまうところから、物語が始まる。

その魔法動物が、多種多様でとても魅力的だった。カモノハシのようなフラニーは愛嬌のあるいたずらっ子だったし、ボウトラックルはあざといくらい甘えん坊だったし、エルンペントはサイズと見た目は恐いけれどよくよく見ていると動きがユーモラスだった (巨大だから扱いを間違えると被害が出るけれど)。神々しいのも禍々しいのもいるけれど、それは見てのお楽しみということで。

登場人物のなかでは、コワルスキーが良い味を出していた。ノー・マギにも関わらず、今回の騒動に巻き込まれてしまうのだけれど、あっと言う間にすっかり馴染んでしまい主人公ニュートの相棒として八面六臂の活躍とは言えないけれど七転び八起きで力を貸している。よく逃げ出さないなと思う。最後まで魅せてくれた。

新シリーズの幕開けは、魔法使い以外の活躍が印象的だった。もちろん魔法使いも活躍する (というか、メインは魔法使いだ) けれど、それは前シリーズで十分に堪能したからかな? ちなみに次回作『ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生』が公開されるのは今年の冬の予定。のんびり待とう。

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