スキップしてメイン コンテンツに移動

技と偽と義 - ブラックパンサー

映画『ブラックパンサー』(原題: "Black Panther") を観てきた。MCUのシリーズ第18作目。ブラックパンサーが主人公となる最初の作品だからか、独立色が強め。本作だけ見ても十分に楽しめると思う。直接つながってくる『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』での経緯が本作内でフォローされている。『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』はクロスオーバー色が強くて、そこから見始めてもついていくのが難しいから、本作から入りやすいように配慮されているのだろう。

本作の主な舞台は、架空の王国ワカンダ。アフリカ大陸に位置しており、表向きは発展途上国として認識されている。でも実態は、ヴィヴラニウム鉱石に由来する科学技術を有する超技術国。その技術力はチタウリにも引けを取らないくらい。

ブラックパンサーの力は、そのワカンダの王位とともに代々引き継がれている。本作で王位と力を引き継いだのは、ティ・チャラ。『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』時点ではまだ王子だった彼が、王として成長していく様が描かれている。ブラックパンサーとしてのアクションあり、父=先王の偽りを巡るドラマありで、とても魅力的に描かれていた。異世界アスガルドの王であるソーと重なる部分があるので、次回作『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』での絡みに期待。

魅力に満ちていたのは、ティ・チャラだけじゃない。妹=王女のシュリはチャーミングかつ頼もしかったし、親衛隊長オコエは誇り高く凛としていた。ワカンダ国外に目をやると、CIA捜査官エヴェレットは巻き添えのようなものなのに情に厚い。ところで、エヴェレットを演じるマーティン・フリーマンが"SHERLOCK"のワトソン役。ホームズ役のベネディクト・カンバーバッチが、MCUではドクター・ストレンジを演じているので、同じスクリーンに登場するシーンを妄想してしまう。そりゃあ期待は薄いけれども。

ヴィランのキルモンガーもよい描かれ方をしていた。『スパイダーマン:ホームカミング』のバルチャーもインパクトがあったけれど、肩入れしたくなるという意味では彼が一番。ネタバレ防止

次に公開されるのは4月末の『アヴェンジャーズ/インフィニティ・ウォー』。クレジット後に彼も再登場したたところで、DLifeのMervel特集で『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』も放送される。見返して備えよう。

このブログの人気の投稿

北へ - ゴールデンカムイ 16

『ゴールデンカムイ 15』、『〃 16』を読んだ。16巻を読み始めてから、15巻を買ったものの読んでいなかったことに気がつく。Kindle版の予約注文ではままあること。 15巻は「スチェンカ・ナ・スチェンク」、「バーニャ(ロシア式蒸し風呂)」と男臭いことこのうえなし。軽くWebで調べてみたところ、スチェンカ・ナ・スチェンク (Стенка на стенку) はロシアの祭事マースレニツァで行われる行事のようだ[1]。それなりになじみ深いものらしく、この行事をタイトルに据えたフォークメタルStenka Na StenkuのMVが見つかった。 16巻では杉元一行は巡業中のサーカスに参加することになる。杉元と鯉登の維持の張り合いが、見ていて微笑ましい。鯉登は目的を見失っているようだが、杉元もスチェンカで我を失っていたので、どっこいどっこいか。なお、サーカス/大道芸を通じた日露のつながりは、実際にもこのような形だったようだ[2]。 個々のエピソードから視線を上げて、全体の構図を眺めてみると、各勢力がすっかり入り乱れている。アシㇼパは尾形、キロランケ、白石とともにアチャの足跡を辿り、そのあとを鶴見のもとで家永の治療を受けた杉元が鯉登、月島を追っている。今更だけれど、杉元やアシㇼパは、第七師団と完全に利害が衝突していると考えていないはずだった。一方で、土方一味も入墨人皮を継続。むしろ彼らの方が第七師団との対立が深刻だろう。さらに北上するキロランケはまた別の目的で動いているようだけれど、なんで尾形も一緒なんだっけ? 『進撃の巨人』に引き続き、これもそろそろ読み返す時期か。 [1] 5つの暴力的な伝統:スラヴ戦士のようにマースレニツァを祝おう - ロシア・ビヨンド [2] ボリショイサーカスの源流は、ロシアに渡った幕末日本の大道芸人たちにあった 脈々と息づく「クールジャパン」 | ハフポスト

Memory Free - 楽園追放 2.0 楽園残響 -Goodspeed You-

『楽園追放 2.0 楽園残響 -Goodspeed You-』を読んだ。映画 『楽園追放 -Expelled from Paradise-』 の後日譚にあたる。 前日譚にあたる『楽園追放 mission.0』も読んでおいた方がいい。結末に言及されているので、こちらを先に読んでしまって後悔している。ちなみに、帯には「すべての外伝の総決算」という惹句が踊っているけれど、本作の他の外伝はこれだけ [1] 。 舞台は本編と同じでディーヴァと地球だけれど、遥か遠く外宇宙に飛び立ってしまったフロンティアセッターも〈複製体〉という形で登場する。フロンティアセッター好きなのでたまらない。もし、フロンティアセッターが登場していなかったら、本作を読まなかったんじゃないだろうか [2] 。 フロンティアセッターのだけでなくアンジェラの複製体も登場するのだけれど、物語を牽引するのはそのどちらでもない。3人の学生ユーリ、ライカ、ヒルヴァーだ。彼らの視点で描かれる、普通の (メモリ割り当てが限られている) ディーヴァ市民の不自由さは、本編をよく補完してくれている [3] 。また、この不自由さはアンジェラの上昇志向にもつながっていて、キャラクタの掘り下げにも一役買っていると思う。アンジェラについては前日譚である『mission.0』の方が詳しいだろうけれど。 この3人の学生と、フロンティアセッターとの会話を読んでいると、フロンティアセッターがフロンティアセッターしていて思わず笑みがこぼれてしまう。そうして、エンディングに辿りついたとき、その笑みが顔全体に広がるのを抑えるのに難儀した。 おめでとう、フロンティアセッター。 最後に蛇足。関連ツイートを 『楽園残響 -Goodspeed You-』読書中の自分のツイート - Togetterまとめ にまとめた。 [1] 『楽園追放 rewired サイバーパンクSF傑作選』は『楽園追放』と直接の関係はない。映画の脚本担当・虚淵玄さんが影響を受けたSF作品を集めた短編集。 [2] フロンティアセッターは登場しないと思って『mission.0』を読んでいない。 [3] 本編では、保安局高官の理不尽さを通して不自由さこそ描かれてはいたものの、日常的な不自由は描かれていなかったように思う。アンジェラも凍結される前は豊富なメ

報復前進

『完全なる報復 (原題: Law Abiding Citizen)』 を観た。 本作では、家族を押し入り強盗に殺された男クライドが、その優れた知能と技術でもって犯人に報復する。 ここまでで半分も来ていない。本番はここから。 クライドの報復はまだまだ続く。 一見不可能な状態からでも確実に報復を続けるクライドが、冷静なのか暴走しているのか分からず、 緊張感をもって観ていられた。 欲を言えば、結末にもう一捻りあると嬉しかった。 ちょっとあっさりし過ぎだと感じてしまった。