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モール信号 / ショッピングモールから考える ユートピア・バックヤード・未来都市

『ショッピングモールから考える ユートピア・バックヤード・未来都市』を読んだ。本書は、思想家の東浩紀さんと写真家の大山顕さんとの対談がもとになっている。お二人はそれぞれ、『ゲンロン0』の著者と『工場萌え』の著者でもある。

『ウォークス 歩くことの精神史』の、商店が女性が安心してぶらつくことのできる半公共的な空間を提供していたという話から、ふと思い当たって手に取ってみた。対談が企画された理由も、商業施設と公共性に関連している。
 まずは、なぜショッピングモールをテーマにしようと思ったのか。一言で言うと、「新しい公共性を考えるため」です。
出典: 『ショッピングモールから考える ユートピア・バックヤード・未来都』

でも「公共性」のような抽象的な話題は控え目で、話に花咲くのは具体的なショッピングモールの話題。どんどん広がっていく。東浩紀さん「あとがき」でいわく「放談」で大山顕さん「まえがき追記」でいわく「妄想ここに極まれりという仕上がり」とのこと。行ったことのある場所も話題に挙がっていたので、自分の印象と比較するのが楽しかった。

というわけで、ダメ出しを食らっていたソラマチについて考えてみる。
大山 それに比べると、東京スカイツリータウンのソラマチは……。
 ダメですね。
大山 イクスピアリやレイクタウン同様に「マチ」を謳っているのに、吹き抜けがなくて行き止まりはあり、どうしようもない百貨店感が漂っている。
出典: 『ショッピングモールから考える ユートピア・バックヤード・未来都』

というわけでここからは話言葉で。書き言葉だと「放談」しにくいので。

まず前提を共有するために、本書で挙がっていたモール的な施設の特徴を挙げとく。
  • 吹き抜けがある。百貨店にはない。
  • 行き止まりがなくグルグルと回れる。
  • 周囲に駐車場が広がっている。
  • 内装が装飾的で、外装がない。

これらの特徴を踏まえてまずは地図で見てみる。東西に細長いことがわかる。これは東西両方の駅に直結させたかったからか。西に東武スカイツリーラインの「とうきょうスカイツリー」駅、東に京成押上線・都営浅草線・東京メトロ半蔵門線の「押上」駅がある。測ってみたら東西方向が500m、南北方向が100mくらいだった。しかも南北に広げられない。北には東武スカイツリーラインが通っていて、南には北十間川が流れている。



そのせいか、通り抜ける感覚がある。特に1階4階なんか街というより通りみたいなつくり。あえて言うと4階の東側三分の一が回れるくらい。

それからアクセス案内を見ると自前の駐車場もない。運営会社「東京ソラマチ」は100%東部鉄道子会社なので、完全に鉄道・バスを見据えている。鉄道系の大規模商業施設っていうと、百貨店だよなあ。JRは東京駅とか品川駅とかエキナカが充実しているけれど。他のショッピングモールを経営しているのは、ららぽーとは三井不動産グループで、レイクタウンはイオングループ。業界の違いが、作る目的の根っこのところにまで影響しているかもなあ。

で、駐車場がない。そのせいか外側も作り込まれている。1階と4階のフロアガイドを店の入り口に注目して見てみると、外に向いている店もある。4階の西側と北側は外に出ることになっていて、ここからだとスカイツリーを見られるようになっている。ちなみに中心はスカイツリーに登る人が集まるフロアになっていて、ソラマチにしか用がないと何にもおもしろみがない。1Fは中央には入れなかったりロータリーやバスの発着場になっていてこれまた電車で行くとおもしろみがない。北十間川の方が整備されていて散策して気持ちがいいくらい。ただ、暖かい時期に限られるけれど。冬はちょっと寒々しい。

というわけで、全然モール的じゃない。いっそ、北十間川をまたいで反対側にも拡張するとか、敷地内が高架下をくぐるとか外に広がっていたらおもしろかったかも。

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