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価値か昔 - 血か、死か、無か? Is It Blood, Death, or Null?

『血か、死か、無か? Is It Blood, Death, or Null?』を読んだ。『彼女は一人で歩くのか? Does She Walk Alone?』から始まった、Wシリーズ第8作。「とりあえず、10作くらいは続けるつもり」[1]で始まったシリーズなので、そろそろ終盤に差し掛かってきた頃かな。

そう思うのは、本作で百年シリーズとダイレクトにリンクしたため。多数のシリーズを横断するマガタ・シキ博士は例外として、これまでは〈ウォーカロン〉というキーワードレベルでの緩いつながりだった。それが、あまりにもハッキリ書かれたものだから驚いた。同時に、終わりが近づいてきたのだ直感し、寂しさが湧いてもきた。

ハギリ博士の新たな発想に触れる機会が、残り少なくなってきたのかもしれないと思うと、名残惜しくなってくる。まだ気が早いが。

本作でも、2箇所で強く惹き付けられた。もう少し正確に言うと、2箇所目について考えている中で1箇所目が浮かび上がってきた。

まずは1つ目。デボラとの睡眠に関する会話。
「できるだけ解に到達するよう、演算を続けます」
「君たちは、寝ないんだ」
「当然です」
「寝ることを、プログラムに組み込んだ例はない? エネルギィ消費を抑える目的のスリープではなくてね」
「調べたことがありませんが、ないと予想されます。どんな効果が期待できますか?」
「うーん、そうだね……、たとえば、時間のギャップを体験できる。不連続な人生の概念が理解できる」
出典: 『血か、死か、無か? Is It Blood, Death, or Null?』
人工知能の離散的な思考が連続的していて、人間の連続的な思考が不連続なのがおもしろい。

そして2つ目。マガタ・シキ博士が提唱した――共通思考は遅いのではないか? という閃き。共通思考というのは人間とウォーカロンを含むあらゆる知性をネットワークで接続し統合することで、構築される知性。最初に言及されたのは『風は青海を渡るのか? The Wind Across Qinghai Lake?』 p.250、詳しくは『デボラ、眠っているのか? Debora, Are You Sleeping?』p.75, 90, 175。
 ゆっくりと思考するのか……、と僕はそこで息を止めた。
 スローライフとでも呼べそうな生体なのか。
 たしかに、それは永遠の存在に近づける一つの道かもしれない。
 だが、残念ながら、手が届かない。人間の時間、思考時間では、そこへ行き着けないのではないか、と予感した。
 もしかして、我々が、速すぎるのか?
出典: 『血か、死か、無か? Is It Blood, Death, or Null?』

これまで言及されたときに漠然と想像していたけれど、遅くなる可能性はまったく見えていなかった。この発想が想像できる範囲を一気に広げてくれた。百年シリーズを読み返せば書いてあるかも、と思いつつ、自分の想像を描き出してみる。

以降、本作や百年シリーズ、S&Mシリーズのネタバレを含むため、既読の方向け。

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