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山積みの矢を待つ身

上巻を読み終えて、ちょうど2週間(感想)。『文明崩壊 滅亡と存続の命運を分けるもの (下)』を読み終えた。

上巻では、過去の文明崩壊を振り返り、その原因について考察していた。下巻では、それを受けて、現代の問題について考察している。

著者が「とりわけ深刻な"十二の環境問題"」として、4つのカテゴリに分けて挙げているのが、次の問題。

■天然資源の破壊または枯渇
  1. 自然の生息環境
  2. 野生の食料源
  3. 生物の多様性
  4. 土壌
■天然資源の限界
  1. エネルギー
  2. 真水
  3. 光合成能力
■わたしたちが生み出した、もしくは発見した有害な物質
  1. 毒性化合物
  2. 外来種
  3. 温室効果ガス
■人口の問題
  1. 世界の人口の増加
  2. 増加した人間が環境に与える影響
これらの問題に対する著者のスタンスは、次の一節に端的に表れている。
「今日の世界がかかえている最も重要な環境問題、人口問題をひとつあげるとすれば、それは何か?」という質問がよく聞かれる。簡潔な答えを返すなら、「最も重要な問題をひとつあげるとすれば、それは、問題を順位づけして、ひとつに絞ろうとする我々の誤った姿勢だ!」ということになるだろう。
著者は、これらの問題は独立していないから、全ての問題を解決しないといけないと主張する。確かに、各問題は独立していないし、どれも深刻かもしれない。

でも、「ひとつに絞るもなにも、ひとつでも手に余っていないか?」と思う。少なくとも自分には、こんなに沢山の問題と気にし続けられるとは思えないし、どの問題も容易ではないように見える。ただ、じゃあひとつに絞った方がいいか? というと、それも違うと思う。

このチグハグは、主語を整理すると、幾分見晴らしが良くなる。つまり、社会全体としては、全部の問題に取り組んでいると同時に、一個人・一組織としては、問題の一部にしか取り組めない。

言葉にすると、当たり前のことだけれど、当たり前のことなら簡単に実行できるかというと、そうではない。

各問題に取り組んでいる組織は、社会全体で限られたリソース (例えば国からの補助金) の配分について競争状態にあるから、自組織が取り組む問題が最優先だと主張するインセンティブが発生してしまっている。

これは、社会全体として全問題に取り組んでいるという状態から、離れる力として働く。リソースが集まっている問題が重要な問題だと因果関係の錯誤のバイアスがはたらくから、リソースはきっとほとんど偶然に左右されて最初に少し多くのリソースが配分された一部の問題にさらに集中する。そうなると、他の問題に取り組んでいる組織は、リソースが不足することになる。

この状態はとてもリスキーだ。多数のリソースが集中した解決が失敗すると、二の矢が継げない。

じゃあ、どうなるといいのか、という妙案は思い当たらないし、思いつかない。多くの人が、自分と違うことをやっている人に対して、もう少し寛容になったらいいな、とは思う。

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