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神のいぬ間の選択 - マギ(37)[完]

『マギ(37)』を読んだ。これにて完結。

この巻だけに関して言えば悪くなかった。最終章に入ってからここに至るまでが、自分にはついていけなくて悪い意味で超展開だったのだけれど。

完結巻ということで、どんな話だったっけかざっと振り返ってみた。

1~2巻

アラジン、アリババ、モルジアナが出合って、迷宮 (ダンジョン) 攻略。アリババがジン・アモンに選ばれる。そのあとバラバラに。

3~8巻

3人が合流してバルバッド編。アル・サーメンの存在が明るみに出る。合流するまでにアラジンと煌帝国の白瑛が出合う (3巻)。紅玉、ジュダルの登場もこの時期。

9~12巻

一行はシンドリアへ。そこでアラジンがマギとして、アリババに力を貸す宣言をする (9巻)。白龍登場。アラジン、アリババ、モルジアナといっしょにザガンの迷宮へ。迷宮攻略後、再びアル・サーメンと対峙。撃退後、アラジンはマグノシュタットを、モルジアナは故郷を目指す。アリババは悩み中。白龍も帰国。紅覇、紅名、紅炎の顔見せ (12巻)。

13~15巻

シンドバッドが紅玉との模擬戦でゼパルの能力を使う(13巻)。アリババはレームへ行くことへ。一緒に出発するも、解散する前に海賊に襲われる。ここで白龍の目的が母・玉艶の殺害と判明。レームのアリババ、ユナンの元を訪れたモルジアナ、煌帝国に帰国した白龍のエピソードを挟み、マグノシュタット編開始。

16~20巻

マグノシュタット編。端折ると、世界統一を目指す煌帝国が攻めてきたが、マグノシュタットの反撃手段が、アル・サーメンに仕組まれていたためイル・イラーを降臨させかねない事態に。両国が協力、アラジンも駆けつけ、シンドバッドも介入。一緒にモルジアナとも再会。最終的に、アラジンがソロモンの知恵を使い、イル・イラー降臨の依り代となっていたマグノシュタット学長たちのルフを還して、事態が収束する。

21~24巻

アリババがバルバッドの状況を見て煌帝国・紅炎に、紅玉にゼパルを仕込んでいることを知りシンドバッドに相容れないところがあると知る。そしてアルマトラン編突入。紅炎が協力の見返りに、アラジンからアルマトランの秘密を聞き出す形で始まる。結果的には、ダビデが意図的に息子ソロモンに負ける。ソロモンが世界の法則を変えた代わりに人間性を失う。ソロモンの妻であり、マギの一人でもあるシバが采配を奮うことになる。しかし、イル・イラーに信望しているマギ・アルバはアル・サーメンを組織して裏切る。シバはアルバに裏切り者の汚名を着せられたまま殺されてしまう。しかし、直前に身ごもっていた子供アラジンを3人目のマギ・ウーゴに託す。ウーゴは、アラジンをもう一つ世界を作り、シバのルフを受け継ぐアラジンをそちらに送り出す。マギ・システムは、世界を作ったときのウーゴの考案。シンドバッドが、自分に聞こえていた声がダビデのものと理解する (明言するのは29巻)。

25~29巻

煌帝国編。白龍が玉艶(アルバ)を倒しクーデター。煌帝国編を東西に二分しての内戦が起こる。ここでもシンドバッドが介入。紅玉に仕込んでいたゼパルの能力を使って、白龍陣営を勝利に導く。その後アリババ、アラジン vs 白龍・ジュダルの戦い。アリババが白龍が使うベリアルの金属器で、ジュダルはアラジンの魔法で姿を消す。結果的に二人は、原始竜がいる大峡谷に。玉艶の肉体は死んだがアルバは健在で白瑛の精神を乗っ取っている。ダビデの声が聞こえるシンドバッドと手を組んだところで、煌帝国編完結。シンドバッドが作った新しい世界にアリババが戻ってきて最終章開始。

30~37巻

最終章。とても目まぐるしい。アリババの視点で、帝国主義的だった世界が、資本主義的な世界になっていることが描かれる。その裏では、ユナンやアラジン、モルジアナ、白龍が白瑛(アルバ)を追っており、アラジンの魔法でついに肉体の乗っ取りを阻止する。シンドバッド商会の人形へ。彼女 (子供の姿で出てきているけれど、どうやっているんだろう?) の言葉をきっかけに、シンドバッドが世界統一のために聖宮へと赴きルフを書き換える。それに気がついた、アリババ・アラジン・白龍・ジュダルも聖宮へ。いろいろあるけれど、大勢に影響がなく見えるので割愛。結局、シンドバッドとダビデが袂を分かち一時的に三つ巴に近い状態に。支配的な力を示したのはダビデで何もかもをルフへ還そうとする。シンドバッドもアリババ達の側につき、大峡谷の最奥でアラジンとシンドバッドがダビデと、外の世界ではアリババ達が世界をルフに還そうとする魔法生物と戦う形に。そして決着。

こうして見ても、やっぱり最終章のバランスが悪い。シンドバッドとの星宮での話を圧縮して、最終局面をもう少し丁寧に描かれているのを見たかったなぁ。でも、全体を通してみると、「奴隷」であったり、「王」であったり、「神」であったり、ずっと支配構造についての物語だったことが浮き彫りになる。

最後は、強いモルさんも綺麗なモルさんも見られたし (結局それか)、めでたしめでたし。

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