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とうがく - 日本刀の科学

『日本刀の科学』を読んだ。日本刀はすごいと耳に挟むけれど、具体的になぜどうすごいのかという好奇心に駆られて。

そんな軽い気持ちで読み始めたら、材料力学に衝撃工学それから真剣と数値シミュレーションの比較実験まで出てきて姿勢を正された。「日本刀で学ぶ材料力学」みたいなタイトルとして構成できそうなくらいの内容では、これ。

でも、おもしろくて一気に読んでしまった。『図解 日本の刀剣』でさらっと眺めた工程の裏で材料に起こっている変化や、打ち込み時に各部にはたらく力など、好奇心を十分に満たしてくれた。

とくに目を引いたたところを簡単に。

まず、反りがもたらす強さの話。日本刀の反りは、刃部の圧縮応力と (むね) 部の引張応力の力学的バランスが生んでいるとのこと。逆向きの応力が発生しているのは玉鋼(たまはがね)の相が違うため。これらの応力(まとめて残留応力)が、素材を超える強さ(曲げ変形強度)をもたらしている。「素材を超える」ってところが熱い(反るのは冷ましたときだけれど)。

それから竹目釘の話。刀身と柄をつないでいるのは直径わずか数mmの竹目釘一本というのがまず驚きだけれど、さらにその位置(刀身の目釘穴の位置)が刀装と一体となったときに最適(打ち合いで受ける衝撃的な力が最小になる)位置と一致しているというのだから驚愕するしかない。

定寸(二尺三寸)の太刀の物打ち(截断に最もよく使う位置)の中心は、衝撃工学的には横手筋(切先最下部の筋)から下部へ五~六寸のあたり。刀身側で打ち合い時に受ける衝撃的な力が最小となるのは、そこという実験結果が解説されている。それから、 () (刀身の鎬地に掘られた比較的深い溝)は軽量化の理に適っている(まり重量の低下に比して、曲げ強度の低下が小さい)という話もおもしろかった。

当時はこんな科学技術はなかったのだから、技術伝承を重ねながら探り当てたということになる。気が遠くなる。

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