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帰結は九穴 - 特別展「人体」

国立科学博物館に行って、特別展「人体」を見てきた。常設展もこの機会にと思っていたけれど、特別展に長居させられたのでB1Fと1Fだけ眺めて帰宅。

最近、落書きしていると肉感的にしたいと思うことがあるので、骨格や筋肉をマジマジと観察していたり、自分の体の中にもこんな内蔵が入っているのだと感慨に耽っていたりしたら、あっと言う間。あと、帰ってストレッチしているときにも筋肉を意識してしまう。

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帰りに道すがら、展示物としての人体について思いを巡らせていた。まさに本展示のテーマそのものなんだけれど、きっと随分ソフィストケイトされたから、多くの人が大手を振って来館しているのだろうと思う。本展でもっともショッキングなのは人間の脳や内臓の標本だったけれど、これも見たい人の目にしか入らないように配慮されていた。

過去に目をやると、手術は有料公開されていたし、見世物小屋では人間も見せられていたし、公開処刑には見物人が集まっていたた。今ではどれも興味本位や退屈しのぎで見るようなものではなくなっている。このあたりの流れは『アナトミカル・ヴィーナス』でも述べられていたっけ。「彼女」もいつか見てみたいもの。本展のテーマに沿っているのだから、どうにか借りてくれていれば。解剖人形はあったし、解剖学的に正確な絵画もあったし。無茶か。

でもって、本展の終盤はにアート寄りのゾーンもある。体内の情報ネットワークをインスタレーション風に見せていたり (下の写真)、テレビで使われた模型などが置かれていたり、体内の電子顕微鏡画像を淡く美しく着色した写真作品が壁にかかっていたりする。


最初のゾーンにあった、昔は画家が解剖画を描いていたというキャプションと呼応を感じる。このあとがDNAつまり情報のゾーンなので、抽象度の高いサブテーマを後半に置いた結果かもしれない。あるいはキレイなものを見せてスッキリお帰りいただこうという魂胆か (邪推)。

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個別の展示物からピックアップすると、ダ・ヴィンチ手稿の鏡文字を見られたのもうれしかった。同時にFGO (Fate/Grand Order) のせいでこんな貴重品を素材と交換していたのか慄きもしたり。それから内臓や骨が脳を介さずに血液をメディアとして情報を交換しているという知見に興味津々、吸血鬼ものの考証に使えそう。

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もう随分と長くなってしまったけれど、最後に常設展について簡単に。

「人体」でも比較のために他の動物の骨なんかが展示されていたけれど、常設展B1Fにも恐竜の骨が展示されていて、こちらも比べると楽しい。特に、剣竜類や鎧竜類の背中の骨がユニーク。1Fは各種動植物が幅広く展示されている。地衣類や真菌類いいよね。

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