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サーガ閉幕 - 旧神郷エリシア (邪神王クトゥルー煌臨! )

『旧神郷エリシア (邪神王クトゥルー煌臨! )』を読んだ。

〈タイタス・クロウ・サーガ〉、これにて完結。同時に、"DreamLands"シリーズ、"Primal Land"シリーズとのクロスオーバー作品でもあるらしい。現時点ではじれもも未邦訳だが、前者は企画されているとのこと。本シリーズが完結して一つ楽しみが減ったと思ったら、また増えた。

前々作から姿を見せていなかったタイタス・クロウも満を持して再登場。と言っても本作で中心となるのは彼の友人アンリ-ローラン・ド・マリニー。正直に言うと最初は戸惑った。けれど、読み進めるうちに引き込まれたし、読み終えて何の不満もない。彼だったからこそ、これだけ波瀾に満ち溢れた旅を描けたのだろうとさえ思う。かのタイタス・クロウが出張れる事態だったら、危なげなく解決されてしまう。

彼の旅の終点も、シリーズ完結巻に相応しい幕引きだった。移動手段が、空間だけでなく時間さえも駆け巡る時空往還機なのだからどこへだって行ける。クロスオーバーが実現したのも、この万能移動装置のおかげだろう。そのうえ、攻撃力も防御力もクトゥルー眷属邪神群 (Cthulhu Cycle Deities) でさえ手に負いかねるレベル。

わけても行き着いた結末の壮大さよ。クトゥルー眷属邪神群と(いったんの)決着があんな形で締め括られるなんて。

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北へ - ゴールデンカムイ 16

『ゴールデンカムイ 15』、『〃 16』を読んだ。16巻を読み始めてから、15巻を買ったものの読んでいなかったことに気がつく。Kindle版の予約注文ではままあること。 15巻は「スチェンカ・ナ・スチェンク」、「バーニャ(ロシア式蒸し風呂)」と男臭いことこのうえなし。軽くWebで調べてみたところ、スチェンカ・ナ・スチェンク (Стенка на стенку) はロシアの祭事マースレニツァで行われる行事のようだ[1]。それなりになじみ深いものらしく、この行事をタイトルに据えたフォークメタルStenka Na StenkuのMVが見つかった。 16巻では杉元一行は巡業中のサーカスに参加することになる。杉元と鯉登の維持の張り合いが、見ていて微笑ましい。鯉登は目的を見失っているようだが、杉元もスチェンカで我を失っていたので、どっこいどっこいか。なお、サーカス/大道芸を通じた日露のつながりは、実際にもこのような形だったようだ[2]。 個々のエピソードから視線を上げて、全体の構図を眺めてみると、各勢力がすっかり入り乱れている。アシㇼパは尾形、キロランケ、白石とともにアチャの足跡を辿り、そのあとを鶴見のもとで家永の治療を受けた杉元が鯉登、月島を追っている。今更だけれど、杉元やアシㇼパは、第七師団と完全に利害が衝突していると考えていないはずだった。一方で、土方一味も入墨人皮を継続。むしろ彼らの方が第七師団との対立が深刻だろう。さらに北上するキロランケはまた別の目的で動いているようだけれど、なんで尾形も一緒なんだっけ? 『進撃の巨人』に引き続き、これもそろそろ読み返す時期か。 [1] 5つの暴力的な伝統:スラヴ戦士のようにマースレニツァを祝おう - ロシア・ビヨンド [2] ボリショイサーカスの源流は、ロシアに渡った幕末日本の大道芸人たちにあった 脈々と息づく「クールジャパン」 | ハフポスト

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『終末なにしてますか? もう一度だけ、会えますか?』の#06, #07を読んだ。 『終末なにしてますか? もう一度だけ、会えますか?』の#06と#07を読んだ。#06でフェオドールの物語がひとまずは決着して、#07から第二部開始といったところ。 これまでの彼の戦いが通過点のように見えてしまったのがちょっと悲しい。もしも#07がシリーズ3作目の#01になっていたら、もう少し違って見えたかもしれない。物語の外にある枠組みが与える影響は、決して小さくない。 一方で純粋に物語に抱く感情なんてあるんだろうか? とも思う。浮かび上がる感情には周辺情報が引き起こす雑念が内包されていて、やがて損なわれてしまうことになっているのかもしれない。黄金妖精 (レプラカーン) の人格が前世のそれに侵食されていくように。

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