『鑑定士と顔のない依頼人』(英題 "The Best Offer", 原題 "La migliore offerta") を観た。
幾通りも解釈ができる映画なので、感想を探して読むのがおもしろい。自分も幾つか考えてみた。
終盤でどんな映像が流れて、そこからどんな解釈を引き出せるか書くので、未鑑賞の方には非推奨。
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幾通りも解釈ができる映画なので、感想を探して読むのがおもしろい。自分も幾つか考えてみた。
終盤でどんな映像が流れて、そこからどんな解釈を引き出せるか書くので、未鑑賞の方には非推奨。
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映画の最後、主人公ヴァージルはプラハのカフェ「Night and Day」を訪れて、連れを待つ。映像はそこまでで、連れが来たのかどうかも来たとしても誰が来たのかも描かれない。
このシーンを起点にして、3つの解釈を考えてみる。最後のシーンを起点にするのは、自分の関心が「どう解釈すると、よい映画だったかと思えるか」にあるから。なので、こじつけに思える解釈もしている。
もう一つ解釈するうえで重視しているのが、「偽りの中にも真実がある」という言葉。繰り返されるこの言葉が、幾重もの意味で使われているはずだと信じることにする。その方がおもしろいので。
最後にもう一つ。救いのない結末だったという解釈はしない。監督がこう言っているから、これは偽りじゃないとする。
一見悲劇的だけれど、これはこれで悪くないと思っている。ヴァージルは、人生で初めて女性=エレナ(ヴィラ)を愛して、それを美しい思い出として余生を送るという結末。授業料が法外なものだったが、そもそも違法な手段で手に入れた財産だったし、あれ以外の財産もあっただろうし(そう言えば、オートマタは手元に残っている)。
エレナ(ヴィラ)との思い出が美しいものとなったのは、病院(それとも介護施設?)に届いた手紙。送り主はエレナ(ヴィラ)で絵画を奪うため身分を偽りヴァージルを騙していたのは事実だけれど、愛する気持ちもあったのも真実だったという趣旨のメッセージを受け取ったんじゃないか、とそういう解釈。
でも、これが自分の好みによく合うので、こじつけ上等で妄想を膨らませてみる。
なぜエレナ(カフェ)がやって来るのか。
もともと依頼人が彼女だったからだ。
そうでなければ「顔のない依頼人」である必要はない。エレナ(ヴィラ)が依頼人なら隠れている必要はない。むしろ最初から姿を見せていた方がよいとさえ言える。隠れていたせいで、依頼を断られそうになってさえいる。
当然エレナ(カフェ)もヴァージルを騙した共犯ということになる。そう考えると、契約書の個人情報を埋めるために子供時代のパスポートが出てきたシーンにも必然性が出てくる。あれは、エレナ(カフェ)のパスポートだったのだ。サインをその場でしなかったのも、あの時は中にいたのがエレナ(ヴィラ)だったので、エレナ(カフェ)にサインさせるためだろう。
じゃあ、なぜエレナ(カフェ)はヴァージルを騙そうとしたのか。愛されたかったからじゃなかろうか。小人症の彼女が、容姿にコンプレックスを抱いていて、姿を見せずに愛されるか知りたいと考えるのは、そんなに難しいことじゃないように思う。キッカケは、それこそ妄想の域を出ないけれど、ヴァージルとビリーがやっていることに気がついてしまったからじゃないだろうか。あれだけ数字に強いので、売買金額から彼らのやっていることを見抜けるんじゃないか。
この仮定に立つと、エレナ(ヴィラ)はヴァージルにとってのロヴァートだったと考えられる。エレナ(ヴィラ)が担当編集と話しているように見えた電話も、エレナ(カフェ)としていたんじゃないかと考えられる。「ハッピーエンドに書き換えたい」というのは、このあとヴァージルをどう関わっていくかの相談だったじゃなかろうか。
さらに想像を膨らませると、ヴァージルを除く主要な登場人物は、全て彼を騙していた可能性に辿り着く。そのうえ、みんな違う目的を持っていたとさえ考えられる。箇条書きで書いてみる。
こうやってみると、偽りだらけの登場人物の中、唯一ヴァージルだけが真実を告げていたように見える。つまり、配役上も「偽りの中にも真実がある」のが、強調される。
だから、最後のシーンは、エレナ(カフェ)からの手紙で事実を知らされたヴァージルが、彼女を待っているところ。
という妄想。
このシーンを起点にして、3つの解釈を考えてみる。最後のシーンを起点にするのは、自分の関心が「どう解釈すると、よい映画だったかと思えるか」にあるから。なので、こじつけに思える解釈もしている。
もう一つ解釈するうえで重視しているのが、「偽りの中にも真実がある」という言葉。繰り返されるこの言葉が、幾重もの意味で使われているはずだと信じることにする。その方がおもしろいので。
最後にもう一つ。救いのない結末だったという解釈はしない。監督がこう言っているから、これは偽りじゃないとする。
わたし自身、この映画の結末は、非常にポジティブなものだと思っています。愛を信じる人たちには勝利ですが、愛を信じない人には暗いエンディングに思えることでしょう[1]前置きはこれくらいにして解釈に入る。考えているのはこの3つ。エレナと名乗る女性が二人いるのがややこしいので、ヴィラにいた方をエレナ(ヴィラ)、ヴィラの向かいのカフェにいた方をエレナ(カフェ)と書くことにする。
- 誰も来ない
- エレナ(ヴィラ)が来る
- エレナ(カフェ)が来る
1. 誰も来ない
最初は誰も来ないだろうと思った。見たまま。誰か来たシーンがないのだから、誰も来なかったというシンプルな解釈。一見悲劇的だけれど、これはこれで悪くないと思っている。ヴァージルは、人生で初めて女性=エレナ(ヴィラ)を愛して、それを美しい思い出として余生を送るという結末。授業料が法外なものだったが、そもそも違法な手段で手に入れた財産だったし、あれ以外の財産もあっただろうし(そう言えば、オートマタは手元に残っている)。
エレナ(ヴィラ)との思い出が美しいものとなったのは、病院(それとも介護施設?)に届いた手紙。送り主はエレナ(ヴィラ)で絵画を奪うため身分を偽りヴァージルを騙していたのは事実だけれど、愛する気持ちもあったのも真実だったという趣旨のメッセージを受け取ったんじゃないか、とそういう解釈。
2. エレナ(ヴィラ)が来る
分かりやすいハッピーエンド。ただ素直過ぎて、自分の好みからはちょっと外れる。もっと面倒臭くあって欲しい。あれだけ面倒臭い仕掛けを施したのだから。3. エレナ(カフェ)が来る
自分で思いついたわけじゃない。Amazon.co.jpに投稿されていたあるカスタマーレビュー[2]が、この解釈に至ったキッカケ。でも、これが自分の好みによく合うので、こじつけ上等で妄想を膨らませてみる。
なぜエレナ(カフェ)がやって来るのか。
もともと依頼人が彼女だったからだ。
そうでなければ「顔のない依頼人」である必要はない。エレナ(ヴィラ)が依頼人なら隠れている必要はない。むしろ最初から姿を見せていた方がよいとさえ言える。隠れていたせいで、依頼を断られそうになってさえいる。
当然エレナ(カフェ)もヴァージルを騙した共犯ということになる。そう考えると、契約書の個人情報を埋めるために子供時代のパスポートが出てきたシーンにも必然性が出てくる。あれは、エレナ(カフェ)のパスポートだったのだ。サインをその場でしなかったのも、あの時は中にいたのがエレナ(ヴィラ)だったので、エレナ(カフェ)にサインさせるためだろう。
じゃあ、なぜエレナ(カフェ)はヴァージルを騙そうとしたのか。愛されたかったからじゃなかろうか。小人症の彼女が、容姿にコンプレックスを抱いていて、姿を見せずに愛されるか知りたいと考えるのは、そんなに難しいことじゃないように思う。キッカケは、それこそ妄想の域を出ないけれど、ヴァージルとビリーがやっていることに気がついてしまったからじゃないだろうか。あれだけ数字に強いので、売買金額から彼らのやっていることを見抜けるんじゃないか。
この仮定に立つと、エレナ(ヴィラ)はヴァージルにとってのロヴァートだったと考えられる。エレナ(ヴィラ)が担当編集と話しているように見えた電話も、エレナ(カフェ)としていたんじゃないかと考えられる。「ハッピーエンドに書き換えたい」というのは、このあとヴァージルをどう関わっていくかの相談だったじゃなかろうか。
さらに想像を膨らませると、ヴァージルを除く主要な登場人物は、全て彼を騙していた可能性に辿り着く。そのうえ、みんな違う目的を持っていたとさえ考えられる。箇条書きで書いてみる。
- ビリー:画家として認められなかったのが動機。だから、踊り子の絵を置いて、誰の作品か見抜けないお前の目は節穴だというメッセージをヴァージルに突きつけた。
- ロヴァート:オートマタを組み立てたかった。お金が目的じゃないと言ったのは本心だろう。ヴァージルから高い価値があることを仄めかされていたのに、組み立てたオートマタを彼の家に置いていっている。
- サラ:ロヴァートに促されて参加。
- エレナ(ヴィラ):実は最も動機が想像しにくい。エレナ(カフェ)の親友で、彼女との友情に報いたかったとか? お金が目的なら彼女はヴァージルの前から姿を消さない方が良かった。年齢的にヴァージルの方が先に死ぬはずので、そのまま数年いれば彼の遺産をまるごと相続できた。怪しまれるだろうが、脅されていたとか言い訳すれば許してもらえそうだし。途中からヴァージルのことを本気で愛するようになったが、エレナ(カフェ)には明かせないでいる。
- エレナ(カフェ):自分が愛されるか試したかった。姿を見せないまま愛されていると感じられればそれでよかった。だから、姿を見せるときはエレナ(ヴィラ)に頼んでいて、彼女の話を聞いて疑似恋愛を味わっていた。エレナ(ヴィラ)が話したのは、ほとんどエレナ(カフェ)の話。
- ヴァージルの秘書:こき使われていたから? 病院に手紙を届けに行ったりするあたり、そこまで強い動機はなかったのかもしれない。でも、最初のクレアからの電話をヴァージルにとらせていたし、彼の動向をスパイするにはうってつけのポジションだし、巻き込まれる形だとしても関わっていないわけがない。
- フレッド:使用人らしくクレア(カフェ)の指示に素直に従っていた。序盤から使用人だと思い込んでいるはずの、ヴァージル・オールドマンをオールドマンさんと呼ぶシーンもあるし、彼を何らかの形で騙していることは知っていたはず。
こうやってみると、偽りだらけの登場人物の中、唯一ヴァージルだけが真実を告げていたように見える。つまり、配役上も「偽りの中にも真実がある」のが、強調される。
だから、最後のシーンは、エレナ(カフェ)からの手紙で事実を知らされたヴァージルが、彼女を待っているところ。
という妄想。
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