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let it 美味- 孤独のグルメ【新装版】

『孤独のグルメ【新装版】』を読んだ。

テレビを点けているときにたまたまドラマを見かけて、思いの他おもしろかったので。

ドラマがタイムラインで話題になっているところや、「うおォン 俺はまるで人間火力発電所だ」というセリフがニコ動のコメントに使われているところを見かけたことはあったのだけれど、食指が動かなかったのに。

ここ1, 2ヶ月ほど、これまでとは違う場所で外食する機会が増えたからだろうか。

自分は、いわゆるグルメレポートになっていない話が好み。中でも、健啖家の五郎が食事を残すエピソードの次のセリフ。よくぞ言ってくれた。
「人の食べてる前であんなに怒鳴らなくたっていいでしょう」
よく見かけるのは、このあとの
モノを食べる時はね 誰にも邪魔されず 自由で なんというか 救われてなきゃあ ダメなんだ
一人で静かで 豊かで……
の方だろうけれど、自分にとっては前者の方が切実。まったく自分には関係なかろうと、怒鳴り声が聞こえるとどうもダメみたい。

ところで、後者のセリフは『るろうに剣心』の比古清十郎の酒の呑み方にも通じるものがある。
春は夜桜 夏には星 秋には満月 冬には雪 それで十分酒は美味い
それでも不味いんなら それは自分自身の何かが 病んでる証拠だ

料理にしろ、酒にしろ、そのものが美味しいに越したことはないにせよ、味わうのは自分なわけで。ご飯が美味しく食べられるって、思っているより貴重な時間なのかもしれない(今日も酒が美味い)。

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