「『ある日、爆弾が落ちてきて【新装版】』を読んだよ」
「古橋秀之さんの短篇集ですね」
「そうそう。電撃文庫で発売当時にも読んでいるのだけれど、書き下ろしが一篇収録されていると知って、買わずにはいられなかった」
「双司君、古橋秀之さんの作品に飢えている感がありますね。大丈夫ですか? 禁断症状とか出ていないですか?」
「安心しろ、ダメだ!!」
「予想通りで安心しました」
「それは安心材料なのか?」
「ええ。想定の範囲内でしたので」
「実際、旧版の次点で何回も読んでいたから、書き下ろしだけ読むつもりだったのに、全部読んじゃったしな」
「相応の年月が空いていますが、感想は変わりましたか?」
「それがあんまり。当時も今も惹かれるのは『恋する死者の夜』。正と死、幸福と後悔、過去と未来。これらの境界が解けてなくなっていくような、不思議な気持ちにさせてくれる」
「なんだか儚いですね」
「墓もないしな」