「東京都現代美術館でガブリエル・オロスコ展を観てきたよ。写真が面白かった」
「どんな写真があったんですか?」
「梶井基次郎の『檸檬』みたいなの。『猫とスイカ』なんか場所とモノのミスマッチが楽しい。店先の山になったスイカそれぞれに、猫缶が載ってるの」
「『檸檬』では本屋さんの棚に檸檬が置かれたんでしたっけ」
「そうそう。日常的なものどうしなのに、組み合わせるとおかしな感じになるの、面白いよね」
「そういうの好きですよね。この間も水飲み場の電球の写真を撮っていましたし」
「うん。日常系ミステリィって感じだよね!!」
「え、そっちに行くんですか?」
「そう言えば『檸檬』みたいなとくに裏のない思いつきってミステリィだと禁じ手だな」