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メメント・テスタメント - テスタメントシュピーゲル1

テスタメントシュピーゲル 1 (角川スニーカー文庫)『テスタメントシュピーゲル1』を読んだ。MPBは〈猋(ケルベルス)〉の3人=涼月+陽炎+夕霧と、MSSは〈焱の妖精(フォイエル・スプライト)〉の3人=鳳+乙+雛がこれまで以上に密接に絡む。それから、MPBの接続官・吹雪とMSSの解析課要員・冬真も。

読んでいると不安になる。視点が安定しないからだと思う。特甲児童の一人称で書かれている場面が多いのだけれど、失っている記憶のフラッシュバック(しかも直後に忘却される)や特甲児童間の感覚の共有があるせいで、各キャラクタへの見方が揺らぐ揺らぐ。

この揺らぎは、あとがきで繰り返し書かれている本シリーズのコンセプト="複数の視点から物語を見つめる"を象徴していると思う。複数の視点は、複数に人間によってもたらされるとは限らない。一人の人間の視点だって見方は変わり得る。分かりやすいのは、涼月の両親に対する認識。

こんな風に、同じ人間が同じエピソードに対して全然違う認識をするのは、おかしなことじゃない。叙述トリックが駆使されたミステリィを読むと、それを実感できる。解決編まで読むと、これまで読んできた文章が全く違った意味を持つようになる(のだけれど、そうじゃない人もいるみたい。解決編が何を言っているのか分からない人がいる、という話を聞いた記憶がある)。

この不安は『2』で解消されるのだろうか。何となくされないような予感がしている。『1』の軸足は〈猋〉だったので、きっと『2』は軸足を〈焱の妖精〉に移して時間的には並行しているんじゃないかな。そこから『3』で合流しそう。合流してから前後編的に『4』までいきそう。『オイレンシュピーゲル』も『スプライトシュピーゲル』も4冊あるから、『テスタメントシュピーゲル』も4冊あるのが美しい。

『2』で決着しないとすると、いつになるんだろうか。『2』が出たのが、ほんの半年前で、『1』から4年以上経ってのこと。ここまで来たらずっと待つから、是が非でも決着させて欲しい。それも、みんなに希望のある形で。

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