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貧困根治

『ソーシャル・ビジネス革命―世界の課題を解決する新たな経済システム』を読んだ。『貧困のない世界を創る』(感想) と同じ著者の作品。テーマも一貫していて、経過の紹介といった感がある。

問題意識が『天才! 成功する人々の法則』(感想)と通底している。どちらも、個人ではなく環境にフォーカスしている。『最底辺の10億人』(感想)でも、最貧国がそこから抜け出せない罠として「内陸国であること」を挙げている。

そう言えば、『銃・病原菌・鉄』の主張も同じだ。先進国が先に発展した理由として、環境を挙げている。

歴史の授業で、世界四大文明は、肥沃な土壌をもたらす大きな川の近くで興ったとして、文明の名前と川の名前とをセットで暗記させられたけれど、大雑把に言うと、それと同じことだと思っている。

人には、根本的な帰属の誤りというバイアスがあるから、人間の方に原因を求めがちだ。自己責任論は、その一例だろう。

でも、自分が思っているよりずっとシチュエーションに支配されている。映画 『es[エス]』『エクスペリメント』としてリメイクされている)で描かれているスタンフォード監獄実験では単なる実験場の役割だったはずなのに看守役が囚人役に暴力を振るったし、『服従の心理』(感想)で描かれているアイヒマン実験では多くの被験者が権威に促されるままに酷い選択をしてしまった。もっと日常的な例でいうと、アフォーダンスだろう。極端な話、ボタンを見ると押したくなるという話。

それはさておき、貧困があるとロクなことにならない。『子ども兵の戦争』(感想)がその最たる例。日本においては戦争は極端としても、貧困が犯罪を増加させるという分析が『ヤバい経済学[増補改訂版]』にあったと記憶している。

貧困がなくなったら、きっと世界はだいぶん平和になるんじゃないかな、と。

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『ゴールデンカムイ 15』、『〃 16』を読んだ。16巻を読み始めてから、15巻を買ったものの読んでいなかったことに気がつく。Kindle版の予約注文ではままあること。 15巻は「スチェンカ・ナ・スチェンク」、「バーニャ(ロシア式蒸し風呂)」と男臭いことこのうえなし。軽くWebで調べてみたところ、スチェンカ・ナ・スチェンク (Стенка на стенку) はロシアの祭事マースレニツァで行われる行事のようだ[1]。それなりになじみ深いものらしく、この行事をタイトルに据えたフォークメタルStenka Na StenkuのMVが見つかった。 16巻では杉元一行は巡業中のサーカスに参加することになる。杉元と鯉登の維持の張り合いが、見ていて微笑ましい。鯉登は目的を見失っているようだが、杉元もスチェンカで我を失っていたので、どっこいどっこいか。なお、サーカス/大道芸を通じた日露のつながりは、実際にもこのような形だったようだ[2]。 個々のエピソードから視線を上げて、全体の構図を眺めてみると、各勢力がすっかり入り乱れている。アシㇼパは尾形、キロランケ、白石とともにアチャの足跡を辿り、そのあとを鶴見のもとで家永の治療を受けた杉元が鯉登、月島を追っている。今更だけれど、杉元やアシㇼパは、第七師団と完全に利害が衝突していると考えていないはずだった。一方で、土方一味も入墨人皮を継続。むしろ彼らの方が第七師団との対立が深刻だろう。さらに北上するキロランケはまた別の目的で動いているようだけれど、なんで尾形も一緒なんだっけ? 『進撃の巨人』に引き続き、これもそろそろ読み返す時期か。 [1] 5つの暴力的な伝統:スラヴ戦士のようにマースレニツァを祝おう - ロシア・ビヨンド [2] ボリショイサーカスの源流は、ロシアに渡った幕末日本の大道芸人たちにあった 脈々と息づく「クールジャパン」 | ハフポスト

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