『囮物語』を読んだ。本書は、『花物語』(感想)に続く、〈物語〉シリーズ第7作(通算10冊目)。
副題は『なでこメデューサ』。本作も、地の文の視点が暦ではない。物語は撫子の視点で進む。撫子の視点でしか進めようがない。
『思想地図β vol.2』 (感想) で読んだ『「弱者は善良である」という前提』という言葉を思い出す。
撫子は、弱くて、可愛くて、か弱くて。そんな保護欲を掻き立てられる対象を、多くの人は攻撃できない。撫子自身は、それを分かっていながら分かっていない振りをしていることを分かっていなかった。少なくとも、分かっていなかったことにしておかないといけないとは、分かっていた。
そういう状態にあることが、彼女の防御機制なんだと思う。分かっていることを相手に見抜かれれば、「かわいこぶっている」と攻撃の口実になってしまう。本当に全く分かっていなかったら、その弱さ・可愛さ・か弱さを維持できない。
自分から目を背け続けなければならなかったのは、だからだと思う。目を向ければ、分かっていることが分かってしまう。分かっていながら分かっていない振りをしていることが分かってしまう。
一方で、誰からも目を向けられないその『自分』は何者なのか? そもそも存在するのか? という疑問もある。他人から認識されている自分が気に入らないから、でっち上げているだけという可能性もある。どうしたって、見られているようにしか見られないわけなのだから、誰にも顧みられないパーソナリティに見所はない。
それでも、本人があると思っているなら、それは否定できないわけで、それを守るためにあれやこれや防壁を築いているうちに、そちらに躍起になって、そもそも何を守ろうとしていたか見失うなんてこともあるだろうな、と。
副題は『なでこメデューサ』。本作も、地の文の視点が暦ではない。物語は撫子の視点で進む。撫子の視点でしか進めようがない。
『思想地図β vol.2』 (感想) で読んだ『「弱者は善良である」という前提』という言葉を思い出す。
撫子は、弱くて、可愛くて、か弱くて。そんな保護欲を掻き立てられる対象を、多くの人は攻撃できない。撫子自身は、それを分かっていながら分かっていない振りをしていることを分かっていなかった。少なくとも、分かっていなかったことにしておかないといけないとは、分かっていた。
そういう状態にあることが、彼女の防御機制なんだと思う。分かっていることを相手に見抜かれれば、「かわいこぶっている」と攻撃の口実になってしまう。本当に全く分かっていなかったら、その弱さ・可愛さ・か弱さを維持できない。
自分から目を背け続けなければならなかったのは、だからだと思う。目を向ければ、分かっていることが分かってしまう。分かっていながら分かっていない振りをしていることが分かってしまう。
一方で、誰からも目を向けられないその『自分』は何者なのか? そもそも存在するのか? という疑問もある。他人から認識されている自分が気に入らないから、でっち上げているだけという可能性もある。どうしたって、見られているようにしか見られないわけなのだから、誰にも顧みられないパーソナリティに見所はない。
それでも、本人があると思っているなら、それは否定できないわけで、それを守るためにあれやこれや防壁を築いているうちに、そちらに躍起になって、そもそも何を守ろうとしていたか見失うなんてこともあるだろうな、と。