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JM - モリアーティ秘録 〈上・下〉

『モリアーティ秘録』の上下巻を読んだ。正典を踏襲した、相棒=モラン大佐による手記形式。事件も正典をモチーフにしている。正典だけでなく膨大な作品や史実も参照している。訳註や訳者解説に大いに助けられた。

これだけでも悪漢小説としておもしろい。特にモリアーティ像。著作を貶されて怒りを見せたりと、人間らしいところも描かれているのが新鮮だった。もちろん人でなしの犯罪者なのだけれど、別の側面が見えるのは、モリアーティ側の視点で描かれているからか。ホームズ側の視点だと、ただでさえ人間味の薄い名探偵よりさらに酷薄に描かれる必要性が出てくる。

さらにおもしろくなってくるのが、下巻から。一気に話が広がる。どう広がるかは読んでみてのお楽しみ。独立したと思っていた個々のエピソードがつながり、一つの蜘蛛の巣のうえで起きたことだったと思い知らされるので、上巻まで読んで物足りなさを感じた方もぜひ下巻まで。

そして、こだまのように繰り返し響く最後の一行。目を閉じれば映画のワンシーンのような映像が思い浮かぶ。

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『ゴールデンカムイ 15』、『〃 16』を読んだ。16巻を読み始めてから、15巻を買ったものの読んでいなかったことに気がつく。Kindle版の予約注文ではままあること。 15巻は「スチェンカ・ナ・スチェンク」、「バーニャ(ロシア式蒸し風呂)」と男臭いことこのうえなし。軽くWebで調べてみたところ、スチェンカ・ナ・スチェンク (Стенка на стенку) はロシアの祭事マースレニツァで行われる行事のようだ[1]。それなりになじみ深いものらしく、この行事をタイトルに据えたフォークメタルStenka Na StenkuのMVが見つかった。 16巻では杉元一行は巡業中のサーカスに参加することになる。杉元と鯉登の維持の張り合いが、見ていて微笑ましい。鯉登は目的を見失っているようだが、杉元もスチェンカで我を失っていたので、どっこいどっこいか。なお、サーカス/大道芸を通じた日露のつながりは、実際にもこのような形だったようだ[2]。 個々のエピソードから視線を上げて、全体の構図を眺めてみると、各勢力がすっかり入り乱れている。アシㇼパは尾形、キロランケ、白石とともにアチャの足跡を辿り、そのあとを鶴見のもとで家永の治療を受けた杉元が鯉登、月島を追っている。今更だけれど、杉元やアシㇼパは、第七師団と完全に利害が衝突していると考えていないはずだった。一方で、土方一味も入墨人皮を継続。むしろ彼らの方が第七師団との対立が深刻だろう。さらに北上するキロランケはまた別の目的で動いているようだけれど、なんで尾形も一緒なんだっけ? 『進撃の巨人』に引き続き、これもそろそろ読み返す時期か。 [1] 5つの暴力的な伝統:スラヴ戦士のようにマースレニツァを祝おう - ロシア・ビヨンド [2] ボリショイサーカスの源流は、ロシアに渡った幕末日本の大道芸人たちにあった 脈々と息づく「クールジャパン」 | ハフポスト

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