スキップしてメイン コンテンツに移動

鎌を鋤に - 激突のヘクセンナハト II

OBSTACLEシリーズ 激突のヘクセンナハト (2) (電撃文庫)『激突のヘクセンナハト II』を読んだ。コミックじゃなくて小説の方。こちらは、この1冊でメアリー・スーとの決着がついている。

これで鏡に対するメアリーの恨みは解消したのだろう。一読者としてはあっさりし過ぎに感じられたから、もうちょっとドロドロして欲しかった気もしないではないけれど。

解消した以上、鏡とメアリーとの共闘が見てみたい。描かれていないメアリーの故郷では幾度となくあったのだろうけれど、メアリーが鏡に決着時の台詞を言わせるほどの成長を遂げたこの世界で、本巻での葛藤を超えた上で共に闘っているところが見てみたい。満が焼き餅を焼きそうだし、エルシー・ハンターから鏡への問いに対する回答を踏まえると、鞘当てになりそうだけれど。

ところで〈メアリー・スー〉は、二次創作で原作の世界観を損なうほどに贔屓されたオリジナルキャラクタのことを指すらしい。本書を読んだ後に、他の人の感想をWebで広い読みしてその名前にひっかかっている人がいたのでググって見たらいろいろと見つかった。それでようやくカバー裏の掌篇の意味が分かった。二次創作に寛容な作者らしいし、このOBSTACLEシリーズでは鏡の妹が創造した多数の世界が存在していることを思い出すと、示唆的だ。創造主が滅ぼしにかかっているこの世界では、誰が贔屓してくれるのだろうか? と一抹の不安もよぎる。彼女に幸あれ。

同じように調べてようやく分かったことといえば、「こっちではF-23なのかね?」から「狙い過ぎだろう……設定が!」の流れの意味。鏡の妹はミリオタか[1]

[1] アメリカの先進戦術戦闘機計画でYF-22とYF23が競った結果、史実ではFY-22が勝ってF-22で採用されたけれど、この世界ではYF-23がF-23として採用されたという理解。合っているのか自信無し。

このブログの人気の投稿

北へ - ゴールデンカムイ 16

『ゴールデンカムイ 15』、『〃 16』を読んだ。16巻を読み始めてから、15巻を買ったものの読んでいなかったことに気がつく。Kindle版の予約注文ではままあること。 15巻は「スチェンカ・ナ・スチェンク」、「バーニャ(ロシア式蒸し風呂)」と男臭いことこのうえなし。軽くWebで調べてみたところ、スチェンカ・ナ・スチェンク (Стенка на стенку) はロシアの祭事マースレニツァで行われる行事のようだ[1]。それなりになじみ深いものらしく、この行事をタイトルに据えたフォークメタルStenka Na StenkuのMVが見つかった。 16巻では杉元一行は巡業中のサーカスに参加することになる。杉元と鯉登の維持の張り合いが、見ていて微笑ましい。鯉登は目的を見失っているようだが、杉元もスチェンカで我を失っていたので、どっこいどっこいか。なお、サーカス/大道芸を通じた日露のつながりは、実際にもこのような形だったようだ[2]。 個々のエピソードから視線を上げて、全体の構図を眺めてみると、各勢力がすっかり入り乱れている。アシㇼパは尾形、キロランケ、白石とともにアチャの足跡を辿り、そのあとを鶴見のもとで家永の治療を受けた杉元が鯉登、月島を追っている。今更だけれど、杉元やアシㇼパは、第七師団と完全に利害が衝突していると考えていないはずだった。一方で、土方一味も入墨人皮を継続。むしろ彼らの方が第七師団との対立が深刻だろう。さらに北上するキロランケはまた別の目的で動いているようだけれど、なんで尾形も一緒なんだっけ? 『進撃の巨人』に引き続き、これもそろそろ読み返す時期か。 [1] 5つの暴力的な伝統:スラヴ戦士のようにマースレニツァを祝おう - ロシア・ビヨンド [2] ボリショイサーカスの源流は、ロシアに渡った幕末日本の大道芸人たちにあった 脈々と息づく「クールジャパン」 | ハフポスト

戦う泡沫 - 終末なにしてますか? もう一度だけ、会えますか? #06, #07

『終末なにしてますか? もう一度だけ、会えますか?』の#06, #07を読んだ。 『終末なにしてますか? もう一度だけ、会えますか?』の#06と#07を読んだ。#06でフェオドールの物語がひとまずは決着して、#07から第二部開始といったところ。 これまでの彼の戦いが通過点のように見えてしまったのがちょっと悲しい。もしも#07がシリーズ3作目の#01になっていたら、もう少し違って見えたかもしれない。物語の外にある枠組みが与える影響は、決して小さくない。 一方で純粋に物語に抱く感情なんてあるんだろうか? とも思う。浮かび上がる感情には周辺情報が引き起こす雑念が内包されていて、やがて損なわれてしまうことになっているのかもしれない。黄金妖精 (レプラカーン) の人格が前世のそれに侵食されていくように。

リアル・シリアル・ソシアル - アイム・ノット・シリアルキラー

『アイム・ノット・シリアルキラー』(原題 "I Am Not a Serial Killer")を見た。 いい意味で期待を裏切ってくれて、悪くなかった。最初はちょっと反応に困るったけれど、それも含めて嫌いじゃない。傑作・良作の類いではないだろうけれど、主人公ジョンに味がある。 この期待の裏切り方に腹を立てる人もいるだろう。でも、万人受けするつもりがない作品が出てくるのって、豊かでいいよね(受け付けないときは本当に受け付けないけれど)。何が出てくるかわからない楽しみがある。