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意識一式 - フリーランチの時代

フリーランチの時代 (ハヤカワ文庫JA)『フリーランチの時代』を読んだ。本作は次の篇が収録されている短篇集。
  • フリーランチの時代
  • Live me Me.
  • Slow-life in Starship
  • 千歳の坂も
  • アルワラの潮の音

「フリーランチの時代」は、フリーランチが手に入るようになる過程の話。つまり、生きるのに何かする必要がなくなるようになる話。もしそうなったら、ひたすら本を読んで過ごしたい……。

「Live me Me.」は、身体や意識の在り方についての話。意識が何らかのソフトウェアだとして、脳とは別の物で実行できたら、それは元の意識とどういう関係になるんだろうか。締めが印象的だった。森博嗣の〈百年〉シリーズを連想する。

「Slow-life in Starship」は、宇宙に引きこもれるようになった時代の物語。〈天冥の標〉シリーズと同じキーワードが出てきたのだけれど、同じ世界なんだろうか。

「千歳の坂も」は、不老不死が実現した社会が舞台。実現したというか「法定健康」なる法律用語ができて、それが義務化されている社会。さらにそこから変わっていく社会が、厚生勤労省健康維持局、健康普及員の羽島の目を通して描かれる。自分でも思考実験をしてみると面白い。

最後の「アルワラの潮の音」は『時砂の王』のスピンオフ作品。本編を未読だったので、置いてけぼりにされた感がある。『時砂の王』も読むしかないな。

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