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木々の音、ピコ

コギトピノキオの遠隔思考 ソウルドロップ孤影録 (ノン・ノベル 1003)
「『コギトピノキオの遠隔思考』を読んだよ」

「ソウルドロップシリーズももうこれで7作目ですね」

「本作は過去編だったよ。伊佐が調査員に、千条がロボット探偵になったときの話」

「じゃあ大きな進展はなかったわけですね」

「うん。それは過去編の制約だよね。未来が分かっているから、意外な人物が死亡したり、物語の根幹に関わる謎が明かされたりはしない。だからというわけじゃないけれど、あとがきがいつになく面白かった」

「何の話だったんですか?」

「調子が悪いときの話。ここ最近は調子がいまいちだったから、あぁ、そんなもんだよなぁって納得してしまった」

「どんなもんだったんですか?」

「こんなもん」
おそらく、残念ながら――というしかないのだろう。悪くなってしまった調子は戻らない。戻ったとしても手遅れなのだからどうせ意味も無い。
「酷くネガティブですね」

「こんなもんだよ、少なくとも俺は。戻すことはあまり考えない」

「じゃあ、何を考えているんですか?」

「〈良かった昔〉を過大評価しているだけで、端から見たらすっかり戻っているんだけれど、調子が悪いと思っているの自分だけじゃないか、とか」

「何だか自分を誤魔化しているような」

「調子が悪いんじゃなくて、調子が変わっただけであって、これはこれで悪くないんじゃないか、とか」

「ますます誤魔化しが強くなっていませんか?」

「まー、ダメなときは何やってもダメだよねー。さて、この状況を撤退戦と考えると、どうやって被害を最小化しようか、とか」

「今度はさっぱりと割り切りましたね」

「主観的に調子が悪くて悩んでいるくらいなら、そんなもんでいいよ。それに、調子が良いからって良いことばかりじゃないよ? もう絶好調、これは完璧だぜーってときは他人には大して評価されなくて、逆にまだまだ納得しきってないけれどうーんってときが評価されたりするやん?」

「そういうことはありますけれど」

「他人の評価だけでふらふら左右されるのも、それはそれで問題だけれど、端からは何の問題もないのに、自分だけ悩んでいるのもバカみたいじゃない?」

「それはそうですけれど」

「何がキッカケで抜けられるかも分かんないしな。逆どんなに努力しても裏目に出ることも」

「それでも、調子がいいと、気分いいじゃないですか」

「それは違いない。けれどまぁ常に好調とはいかないよね。どうしたって。というわけで、BGMはRhymesterの『ノーサイド』で」

「先日発売された『ダーティサイエンス』からですね」

「明るい歌なんて聴きたくないときもあるよね」

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