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Logotype Pattern

たのしいロゴづくり -文字の形からの着想と展開『たのしいロゴづくり』を読んだ。ここでいう『ロゴ』は『ロゴタイプ』つまり文字で会社名や商品名などを表現すること。この本は、そのロゴづくりのパターン本だ。

内容は、大きく次の3つに分類できる。まず、ロゴづくりのテクニック。1章が『欧文ロゴのテクニック』、3章が『和文ロゴのテクニック』。次に、文字のカタログ。2章『文字の形を知ろう』に欧文フォントのリストが載っている。最後が、ロゴ作りプロセスの例。著者の仕事の過程が4章『メイキングで見るロゴづくり』に載っている。

ロゴづくりのテクニックは、どのような形にするとどういう印象を与えるか、を念頭に説明されている。プログラミングでいうと、パターンに近い。プログラミングにおけるパターンではこういう問題はこう解決しようと説明しているのと似て、この本のテクニックは、こう加工するとこういう印象を与えますよ、ということを説明している。加工の過程も含めて、見開き2ページで説明してくれているので、一覧性も高い。

文字の形の紹介の仕方も変わっている。フォントごとに紹介するんじゃなくて、アルファベットごとに下記の分類で紹介している。最後にフォントごとの一覧も載っているけれど、メインはこちら。ロゴづくりでは「"A"の形にはどんなバリエーションがあるんだろう?」ということがよく知りたくなるので、ロゴづくりの参考になるように整理したけっkだだそう。
  • 先端にクセのある形
  • 一部をカットした形
  • 一部に丸みのある形
  • 線を延ばした形
  • その他の形
最後の、『メイキングで見るロゴづくり』は、クライアントの要求から、著者がそれに応えるまでの過程が載っている。抽象的なパターンやグループが紹介されていた3章までとは打って変わって、具体的なエピソードが紹介される。紹介されているテクニックも使われているから、そのまま応用の実例にもなっている。それらを超えてロゴマークについても随分と説明されているけれど、それは仕事だからか。

ただこの本だけでゼロからロゴを作るのは難しいと思う。パターンの解説でテキストエディタやIDEの説明をしないのと同様に、この本にはIllustratorのような画像編集ソフトの説明は全くない。だから、実際に作ろうとしようとすると、その知識は別に仕入れる必要がある。フォントも1つも収録されていない。デジタル化さえされていないフォントも多い。フォントも他から手に入れる必要がある。

でも、この具体性のなさは欠点ではなくて、長所だと思う。広く長く使える原理・原則のようなものが、コンパクトにまとまっている。そういう意味では『ノンデザイナーズ・デザインブック』に近い。

ところで、本書を読んでいたら、このブログのフォントをリニューアルしたくなってきた。浮ついているだけなのかもしれないけれど、浮つけるくらいにエキサイティング。

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