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一本でも折れない

アンブロークンアロー―戦闘妖精・雪風
「『アンブロークンアロー―戦闘妖精・雪風』を読んだよ」

『神林長平トリビュート』を読んだ時に、読みたくなったって言っていた本ですね」

「うん。前々作『戦闘妖精・雪風〈改〉』、前作『グッドラック―戦闘妖精・雪風』より面白かった。って言っても、前々作と前作を読んだのはもう何年も前だから、内容をほとんど覚えていないし、今とは面白がるポイントが変わっているから、比較しても意味ないか」

「そもそも、これだけ読んで面白いものなんですか?」

「言われてみれば。これだけ読んでも意味が分からない部分が多いだろうなぁ」

「じゃあ比べる意味全くないじゃないですか。あと、内容をほとんど覚えていないのによく読めましたね」

「読み始めると思い出してくるもんだよ。記憶って不思議だよね。能動的には思い出せないことも、ふとしたキッカケで、こんなことも覚えていたのか、って記憶が浮かんでくる」

「プルースト効果ですね」

「それに作話もあるかもしれない。あ、そういう形での二次創作も面白いかも」

「オリジナルを上書きしようとするのは、リスペクトに欠きますよ」

「それもそうか」

「作中で過去が明示されていない場合は、考察や批評の形になるんじゃないでしょうか」

「二次創作とするなら、オリジナルと同じ結末に収束したパラレルワールドということにすればいいのかな」

「それはそれでSFらしいですね」

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