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Agile Will

一般意志2.0 ルソー、フロイト、グーグル『一般意志2.0』を読んだ。

著者は、本書で民主主義に関する夢を語っている。エッセイであって、学術書ではない。このスタンスは、『正義のアイディア』と近い。また、扱っているテーマも近く、ハーバーマスやロールズなど、共通して登場する固有名詞も多い。

著者の主張の自分なりの理解を乱暴にまとめると次のようになる。

まず、理性的に話し合うのは非現実的。代わりに、みんなの感情とか行動履歴を集めて、何らかのアルゴリズムにかければ、一般意志を可視化できる。最後に、その一般意志を議論に対してリアルタイムにフィードバックさせ制約として機能させると、民主主義の形が変わる。

このスタート地点は、理性の重要性を説き続けた『正義のアイディア』と対照的。一般意志算出アルゴリズムのインプットは良いな、と思う。表明選好と顕示選好は個人の中で往々にしてずれているけれど、投票制度では表明選好しか汲み取れない。そこから先に関しては、具体的なイメージが湧かないので、何とも言えない。

既存の実装例として、ニコ生のコメント機能やTwitterが挙げられているけれど、これらはせいぜいが一部の声を集めているに過ぎず、一般意志を可視化まではできていない。雰囲気としては感じられるかもしれない。

そこで、少し可視化アルゴリズムの実装について考えてみた。けれど、アローの不可能性定理の存在がひっかかる。この定理は、個人の選好の集合をその集団の選好に変換するための、4つの民主的だと思われる条件を全て満たすなアルゴリズムは存在しない、と言っている。

これは数学の問題なので、民主的な条件がどのようなものか定義は明らかだし、アルゴリズムが存在する近似的な条件についても知られている。どのような条件でのアルゴリズムなら一般意志として許容できるだろうか。

ここまであまり肯定的な書きっぷりじゃないけれど、抽象的な話を全部うっちゃって考えると、とりあえずありものでやってみると良さそうだと思う。一般意志が何かも、インプットとなるデータ収集手段についても、それを算出するためのアルゴリズムについても、全く考えないで、その上で、ニコ生のコメントが政治に反映され得るという状態が反映され得ない状態よりベターかそうじゃないか考えてみると、反映され得る方がずっと政治への参加コストが下がっている分、ベターだと思う。

極端な話、一般意志2.0が何か突き詰めて考えない方がいいと思う。それについて議論するのは、著者が限界を感じている理性の仕事だし、それをやってから実装しようというのは、いかにも悪い意味でのウォーターフォール。もっとアジャイル寄りに、まずはそれっぽいものを作ってみて、リリースしてみて、ログやらTwitterやらでフィードバック集めて、改良にしていけば、もう少し政治が良くなりそう。そんな予感を覚える。

最後にオマケとして、Twitterにツイートした本書の感想を転載してみる。意識的に書いたここまでの話とは、全然関係ないことが多くて面白い。ユーザ調査の思考発話法を自分で自分に対してやってみるとこんな感じだろうか。

『一般意志2.0』を読み始めた。装丁が面白い。カバーを広げると、上下逆にした「2.0」になっている。
posted at 09:59:16
『一般意志2.0』特殊意志、全体意志、一般意志について。ルソーは、選挙制度も熟議さえも不要と言う。十分な情報を持つ個人の意見が必要らしい。集合知だと、『多様性予測定理』に対応。
posted at 09:59:20
『一般意志2.0』、第4章でアーレントとハーバーマスが出てくる。先日読んだ『正義のアイディア』でもちらっと出てきた。ロールズなんかは出てこないのかな? 「熟議民主主義」とは逆の「制度民主主義」だから、コンテキストにそぐわないか。
posted at 20:56:22
『一般意志2.0』、満遍なくデータベース化され、かつここでいう解析アルゴリズムができたとして、それは結果責任を伴わないのだろうか。
posted at 21:34:37
『一般意志2.0』、第六章、「心の動揺」をもたらす他者は、『正義のアイディア』に出てきた「開かれた第三者」につながりそう。他者の「歓待」はデリダの話だっけ?
posted at 21:34:40
『一般意志2.0』第5章、「議論の落としどころを探れない他者」が出てきて、面白くなってきた。これは、『正義のアイディア』を読んでいたときも気になっていたところ。理性が重要なのはアグリーだけど、理性的に話し合えない相手もいるよなぁ、と考えていた。
posted at 21:34:40
『一般意志2.0』、行動履歴が政策決定に参照されるようになったら、操作しようとする人が現れそう。多重登録とか、ペイするなら仕組みをよく理解しない人を大量にバイトさせるとか。
posted at 21:34:45
『一般意志2.0』、無意識が可視化されると、認知的不協和になることも、多いんじゃないだろうか?
posted at 21:41:53
『一般意志2.0』第九章冒頭で書かれている通り、第七、八章は、具体的なイメージが湧き辛かった。本書は、着想を語っているのかな、と思う。
posted at 09:58:20
『一般意志2.0』は、政策を決定するのではなくて、制約を可視化するのか。誤解していた。だとすれば、インテリジェンスの一種とも捉えられそう。
posted at 09:58:21
『一般意志2.0』意識と無意識という対比は、表明選好と顕示選好とか、バーバルとノンバーバルとかと繋げるとイメージしやすい。
posted at 09:58:23
『一般意志2.0』第十章はまとめ。ここで示される実装は、たしかに大したことがないように見えるけれど、あった方がいいと思う。
posted at 09:58:24
『一般意志2.0』第十一章注3読みながら考えていたことが、すでに提案されていた。いわば、バザール型の立法。本書はそれには否定的。
posted at 09:58:27
『一般意志2.0』第十三章、自分はローティのいうアイロニストに近いなあ。デリダの「歓待」、ここで出てきた。
posted at 09:58:28
『一般意志2.0』第十三章、理念的な議論が排除された価値中立で脱理念的な公的領域も、十分理念的のような。想像力によってなら連帯できるというのは、想像しやすい。
posted at 20:05:58
『一般意志2.0』第十四章まできた。ノージック面白そう。
posted at 20:06:05
『一般意志2.0』第十五章それから謝辞まで読み終えた。行動を変えるのは行動だよなぁ、と思う。例えば、企業を動かすには不買。例え熟議で合意ができても、それが良い結果を生むとは限らないし。
posted at 20:06:12

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