情報検索の分野に "Deep Web" という言葉がある。簡単に言うと、ウェブ上にはあるけれど、検索エンジンが放つクローラーが収集できない情報のことを指す。
たとえば、データベース内の情報、Flashなどに埋め込まれた情報、mixi, facebookのようなSNS内の情報、ニュースサイトの有料記事がそう。
これらのうち、最初の2つは技術的な問題だから、解決されていくはず。でも、最後の2つは、そういう問題ではない。情報を提供する側が検索されることを望んでいない。
その理由は異なっている。SNS内の情報はプライバシーを守りたいからで、有料記事は商品だからだろう。有料記事の見出しとリード文くらいならともかく、全文を対価無しで検索されたら、商売として成立しない。
最近、これらの情報が増えて、"Deep Web" が広がっているように思う。SNSの利用者増加に伴い、mixiで友人限定, Facebookでフレンド限定, Google+ではサークル限定の情報が増えているはずだし、各ニュースサイトは、記事の有料化あるいは出版物の電子化を進めている。
少し調べたら、日本では日経新聞が先行して、朝日新聞がそれに追随。読売・毎日もその予定で、アメリカでは "New York Times" が成功事例みたい。
- 朝日新聞「アサヒコム」終了、来年初めに「有料版」に一本化有力 (1/2) : J-CASTニュース
- 【肥田美佐子のNYリポート】米新聞業界に有料化ラッシュ―ハイエンド層をねらえ? - WSJ日本版 - jp.WSJ.com
その結果、どうなるんだろうか? 可能性をいくつか考えてみた。
- 引用・転載が増える。有料会員のブロガーが有料記事について言及したエントリィを描こうとしたとき、無料だったらリンクだけで済ませていたけれど、有料記事だと読めない人を減らすために引用・転載するんじゃないだろうか。
- ニュースまとめサイトが減る。広告収入を目的に運営されているサイトは、有料記事が増えてペイしなくなったら消えるだろう。サイトオーナーのスクラップブックとして使われているなら、そのまま残りるはず。
- 記事が個別販売されるようになる。論文誌の論文も、個別に販売されている。同じように、全部は読むつもりないけれど、気になる記事の分だけならお金払っても、読みたいという人はいないだろうか。あるいは、○クリップいくらみたいな形での有料化になるかもしれない。
- 釣り見出しが増える。有料記事は中身で勝負できないので、見せられる部分を目立たせるしかない。
- クリッピングサービスが流行る。いろんなメディアの全有料会員にはなれないけれど、気になる分野の記事は抑えたいという人向け。
- 記事を読む人が減る。金払ってまでは、読みたいと思わない人も少なくないはず。
- 記事が長くなる。今のニュースだと見出しだけで、ほとんど事足りている。見出しで釣れてなおかつ、有料会員に登録してでも読みたいと思わせるためには、それなりの深さ・長さが必要になるはず。
- モバゲー・GREEみたいに、一見無料になる。登録すると退会できなくなる。
"Deep Web" が広がってWebから離れる人が増えると、それはそれで面白くなりそう。検索結果が記事の転載で埋め尽くされることが減って、言いたいことがある人のブログなどが見つかるようになれば、その方がきっと読んでいて面白い。
それに、ニュースはWebじゃなくても見られるわけで、Blogとかニコニコ動画/生放送とかウェブラジオのような、マスじゃないメディアがWebの醍醐味だよなぁ、と。