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計って統べる

『ヤバい統計学』を読んだ。

タイトルは似通っているけれど、『ヤバい経済学』との直接的な関連はない。間接的には、付注で「さらに学びたい人のための文献」として紹介している。

本書は、統計学が問題を解決する様を描いている。『その数学が戦略を決める』や『数学で犯罪を解決する』と同じ方向性。

本書は下記5章からなる。
  • 第1章 ファストパスと交通渋滞 ――平均化を嫌う不満分子
  • 第2章 ホウレン草とクレジットカード ――間違っているからこそわかること
  • 第3章 大学入試とハリケーン保険 ――グループ分けのジレンマ
  • 第4章 ドーピング検査とテロ対策 ――非対称がもたらす動揺
  • 第5章 飛行機事故と宝くじ ――「不可能」が起きるとき
特に面白かったのは、第4章。第一種の過誤と第二種の過誤 (本書の言葉を借りれば、間違った警告と逃したチャンス)について、頭では理解していた。だけど、本書が指摘するように、第二種の過誤=逃したチャンスについてあまり考えを巡らせたことがなかった。

ドーピング検査の例で簡単に説明する。ドーピングしていない人に陽性を示してしまうのが、間違った警告。ドーピングしている人に陰性を示してしまうのが、逃したチャンス。ドーピング違反者を残さず見つけようとすれば、間違った警告が増えてしまう。一方で、間違った警告を減らそうとすれば、逃したチャンスが増えてしまう。つまり、讃えられるべき選手を押しのけて、ドーピングのおかげで成績を残す選手が出てきてしまう。

問題は、間違った警告と逃したチャンスとで、影響が違う点だ。間違った警告を受けたら、その選手の選手生命が絶たれてしまう。一方で、逃したチャンスが増えても、誰が得をして誰が損をしたかは明白ではない。その結果、検査は間違った警告を減らして、逃したチャンスを増やす方向で設計されてしまう。これがサブタイトルの「非対称」だ。

では、どれくらいが妥当かというと、これは統計では決められない。価値判断を伴っている。

じゃあ、統計なんて役に立たないかというと、そうではないと思う。ここまでやって、初めて価値判断が活きると思う。統計的に考慮できることを考慮しないで下した価値判断は、統計的検証で覆される。

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