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興しお越し - 謎の独立国家ソマリランド

『謎の独立国家ソマリランド そして海賊国家プントランドと戦国南部ソマリア』を読んだ。

『新・現代アフリカ入門』『アフリカ学入門』と、サハラ以南のアフリカ大陸全体を扱った本を読んだところで、次はノンフィクション作家によるルポルタージュ。訪問先は、アフリカ北東部のある一国――ソマリア連邦共和国。あるいは独立を宣言した二国――ソマリランド、プントランドを含めた三国。


国ってなんだろうか? 改めて考えてしまう。

ソマリランドは独立を宣言している。しかし国際的には(少なくとも公には)認められていない。日本の外務省のWebサイトでも「ソマリア基礎データ」として、略史に「1991年5月 北部が「ソマリランド」と自称し独立宣言」とあるだけだ。

それにも関わらず、他地域よりも治安がよく、独自通貨ソマリランド・シリングの発行までしている。ソマリア連歩共和国の通貨ソマリア・シリングより信用されているくらいだそうだ。自分には、国としての体を十分になしているように見える。


だからといって、認められたがっている人ばかりかというと、そうでもないようなのだけれど。

「でも、いったん国際社会に認められたらどうなる? 援助のカネが来て汚職だらけになる。外の世界からわけのわからないマフィアやアンダーグラウンドのビジネスマンがどっと押し寄せる。そのうちカネや権力をめぐって南部と同じことになるよ…」


本書が発売されたのが2014年。その後どうなったのか、共和国(過去のトピックス) | 外務省を眺めてみた。昨年2月に平和裏に大統領選挙が行われていた。ただ、これに対する反発かどうか判断する術を持たないけれど、そのあと首都モガディショで複数回のテロ事件が発生している。ホーン・ケーブルTVの支局員の人達は大丈夫だったのだろうか。剛腕姫と称されていたハムディ支局長のことを思い出す。

なんだか暗くなってしまったけれど、本書の雰囲気は明るい。おもしろくて一気に読まされるので、興味が湧いたのならぜひ。踏ん切りがつかない人も、現代ビジネスで1章を読めるよ?

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