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黄色い岐路 - 世界を変えた書物展

上野の森美術館で9月24日まで開催されていた、『世界を変えた書物展』に行ってきた。

様々な分野の巨人の手による書物の数々が並んでいる。有名所だと、ニュートン、アインシュタイン、ダーウィン、レントゲン。名前を挙げ出すとキリがない。彼ら/彼女らの肩の上に乗って、現代の技術まで積み重ねられてきたことに、改めて思いを馳せる。黄ばんだこれらの本のどれかが欠けていたら、技術史は今とはまったく異なるものになっていたのだろうか。とか、これらの本だけではなくて、知らないだけで膨大な積み重ねがあるのだろうなあ、とか。

同時に、目の前の書物の来歴にも、及ぶところではないだろうけれど、想像を巡らせる。数百年のオーダーの時を経て、今も保存され続けている確率はどれほどのものなんだろうか。現在、出版されている本の中で、たとえば30世紀まで残り続けるのは、どれくらいの割合なんだろうか。

それはそれとして、本好きとしては触ページをめくって読んでみたくなるところ。貴重な本だから当然なのだけれど、1冊1冊ケースに入れて展示されていた。仮に手に取れたとしても、そもそも読めないし、単語を認識できたとしても、理解できないだろうけれど。いや、そもそも恐くて触らない気もする。


写真は「アポロ11号任務記録(月着陸更新記録)、月面への第一歩」。

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