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独走読書 - 独創短編シリーズ 野崎まど劇場

『独創短編シリーズ 野崎まど劇場』を読んだ。

自由だ。自由過ぎだ。文字やページの枷から逃れようとしている。カバー裏や背表紙まで使う始末。これ【電子特別版】と銘打っているKindle版ではどうしているんだろ。再現するために固定レイアウトなんだろうか。特典としてプロパティに短篇が仕込まれていたりしないだろうか。そうだとしても驚かないくらい自由。

おもしろかったと言えばおもしろかった。でも、短編小説としてのおもしろさと言うよりも、短篇集という形式からの逸脱加減のおもしろさだったと思う。わからないのはさっぱりわからなかった。

そんな当たり外れの大きい本作だけれど、シリーズ続刊の『独創短編シリーズ (2) 野崎まど劇場(笑)』が出ている(笑)。笑うしかない。またこういうのが読みたくなったときのためにとっておこう。

方向性としては、一部の円城塔作品――註がヒドいことになっている『烏有此譚』や、プログラムで生成した『シャッフル航法』――に近いように思う(そう言えば『文字渦』や『誤字』読んでない)。でも読んだ印象が全く異なるのは、巫山戯ている雰囲気の有無だろうか。「ほら吹き[1]」は、真顔だろう。きっと(ツッコミ不在という見方もできる)。

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