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二羽鶏 - ニワトリ 愛を独り占めにした鳥

『ニワトリ 愛を独り占めにした鳥』を読んだ。

ニワトリについて、日々食卓に並ぶ鶏卵や鶏肉の話から、その祖先である野生原種セキショクヤケイの話、それから闘鶏や愛玩用の長尾鶏や矮鶏(チャボ)の話まで、とても幅広く扱っている。タイトルの「愛」が示唆するとおり、これらの話は人間との関係性を軸に語られている。

最も強い関心を抱いて読めたのが、生活に密着している卵用鶏と肉用鶏の話。卵かけご飯に煮卵ゆで卵、目玉焼き、玉子焼き。どれも好き。鶏肉は蒸しても茹でても煮ても焼いても揚げてもそれぞれ美味しい。

わざわざ「卵用」と「肉用」と分けて書いたのは、普段スーパーでみかけるような卵や鶏はそれぞれ別の鶏のものだから。「じゃあ卵用鶏の肉や肉用鶏の卵はどうなるの?」と疑問に思うことだろう。結論だけ言うと、卵用鶏は廃棄されるし、肉用鶏は卵を産めるようになる前に肉になる。卵用鶏は生後160日以内には産卵を始め、産卵能力が低下する700日目までに廃棄される。その間、約2kgの体重で年間18kg(60gの卵を300個)産卵する。肉用鶏は生後50日で体重3kgに達したあたりで肉にされる。おとなでも1kgに満たず、卵も年間10個ほどしか産まないセキショクヤケイから、よくここまで辿り着いたものだと気が遠くなる。

このあとさrない「どうしてそんなセキショクヤケイを飼おうとしたのか?」という問いにも切り込んでいく。詳しくは本書を読んで欲しい。ちなみに上に挙げた卵用鶏と肉用鶏の話は、第1章「なぜ人はニワトリを愛でるのか」に詳しく書かれている。

(余談。読み終わってから気がついたのだけれど、『人体 失敗の進化史』と同じ方の著書だった)

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