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こうですか? - コーデックス

コーデックス『コーデックス』を読み終えた。カバーに掲載されている書評が、本を巡る物語で『薔薇の名前』に並ぶ作品と評していたので、手に取らずにはいられなかった。

残念ながら、『薔薇の名前』ほどには面白くなかった。本に関する蘊蓄はそれなりに楽しめたけれど、それも『薔薇の名前』のように濃くはなくて、散りばめられている程度。

『薔薇の名前』と比べるのは酷としても、なるべくニュートラルに振り返っても、いまいち満足感がない。ゆっくりした序盤を越えて中盤に面白くなってきたと思ったら、終盤で冷めてきて結末にガッカリ。

特に終盤、肝の古書についての謎解きが唐突過ぎる。主人公が突然閃いたり、主人公が寝ている隣で解決されていたり、とついていけなかった。その割に大ネタという感じでもないので、サプライズも小さい。

うーん、「本についての物語」という題材で『薔薇の名前』と並べられていたから、本好き向けの小説かと思って読んだけれど、振り返ってみると違う気がする。そこまで本好きじゃないけれど小説は読む人向けの本好きの世界が垣間見える小説といった感じ。

『薔薇の名前』以外にも本についての本を読んでいるからか、いまいち食い足りなかった。『古書の来歴』とか『ビブリア古書堂の事件手帖』シリーズとか。

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