「『第六ポンプ』を読んだよ」
「『ねじまき少女』と同じパオロ・バチガルピさんの作品ですね」
「こっちのが読みやすかったなあ」
「短篇集だからですかね?」
「それもあるかも。短い分、話がシンプルにまとまっている。『ねじまき少女』でこの人の描く世界に慣れたのもあるかもしれん」
「なかなか他で見かけない世界観ですよね」
「カロリー企業という現在の延長線上にあり得る側面と、足踏みコンピュータのようなレトロフューチャな側面が混在しているもんなぁ。そうそう、この短篇集にも『ねじまき少女』と舞台が同じ作品あったよ」
「『カロリーマン』と『イエローカードマン』がそうですね。他の短篇でも変わった世界が描かれていたりしたんですか?」
「その他だと『砂と灰の人々』で描かれている世界が異質だった。犬が物語のキーになっているので『最後のウィネベーゴ』を思い出したけれど、あまりにギャップが大きくて結末には動揺したよ……。でもこの世界だとこうなっちゃうのかな……」
「『ねじまき少女』もそうでしたが、それもあまり明るい未来が描かれているわけではなさそうですね……」
「でも、現代を舞台にしていてSF要素が何もない『やわらかく』なんかも収録されていたりもしたよ。これを読んで、作者の思い入れがあるのは、SFとしての世界観より人間の方なのかもなんて思ったりもした。他の作品もそういう視点で振り返ると、むしろそっちの方が面白いんじゃないか、って気もする」
「色々な見方ができるなら、読み甲斐がありますね」
「どちらにしろ暗いんだけどな……」