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透けるスケール

白熱光 (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)
「グレッグ・イーガンのSF小説『白熱光』を読んだよ」

「短篇集『プランク・ダイブ』の時以来、約2年振りですね」

「今度は長篇で、短篇以上に読むのに疲れたよ。ただでさえ難しいのに、章ごとに視点が交互に入れ替わって、頭の切り替えが大変だった」

「なんて言いますが、読むの速いですよね。今回も2日で読んじゃっていますよ」

「正確な理解は放棄気味なので」

「それでいいんですか?」

「雰囲気を楽しめたから、いいんじゃないかな」

「娯楽としてはそうかもしれないですね」

「何が楽しかったって、奇数章と偶数章のバランス。この手の構成の小説を読んでいると、一方が気になって他方を飛ばし読みしがちなのだけれど、この作品はどちらも気になって気になって」

「それはページを捲る手が止まりませんね」

「魅力の一つは、各章で描かれる世界の、振れ幅の大きさ。とてつもないスケールだった。時間しかり、大きさしかし、技術レベルしかり、知識レベルしかり」

「それでも、1冊の作品になっている以上、接点はあるんですよね?」

「そこを読み解くのも、また楽しみの一つ。翻訳者や用語をチェックされた方による情報が参考になるかと。作者による解説ページも読めたら、もっと面白いんだろうけどなぁ」




「もちろん英語ですもんね」

「うん。気軽に楽しく読めるほどには英語できない。Riding the Crocodileを読んでみたいんだけどなぁ。あ、それから、次に日本語で読める作品『クロックワーク・ロケット』も楽しみだ」

「そちらの刊行予定は2015年10月。また約2年後ですね」

「待ち遠しいよ。ところで、「自分がまとめて読みたかったので、Web上の感想 (主にツイート) を【ネタバレ含む】『白熱光』の感想などまとめにまとめました」

「タイトルにある通り、ネタバレしている感想も含んでいるので、読後にどうぞ」

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