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書庫の証拠

『ビブリア古書堂の事件手帖 2 栞子さんと謎めく日常』を読んだ。本作は、 『ビブリア古書堂の事件手帖―栞子さんと奇妙な客人たち』 ( 感想 ) の続編にあたる。 前作と同じく短篇連作形式で、本巻は次の3話+プロローグ、エピローグから構成されている。 アントニイ・バージェス『時計じかけのオレンジ』(ハヤカワNV文庫) 福田定一『名言随筆 サラリーマン』(六月社) 足塚不二雄『UTOPIA 最後の世界大戦』(鶴書房) これまで作中で言及されているのは、読んだことがない本ばかりだったけれど、今回初めて読んだことがある本に言及されていた。それは、 『時計じかけのオレンジ 完全版』 。 栞子さんのウンチクに少しだけ知っていたことがあって、何となく嬉しい。ただ、感想をブログに残していないのが残念。読んだであろう時期に使っていたMoleskineをパラパラとめくったけれど、そこからも何も見つからなかった。いつ読んだんだろう? 鏡双司(@SO_C) - Twilog から「時計」や「オレンジ」で検索しても、かからない。 基本的に読んだ本はブログに書くようにしているし、読んでいるときに気になることがあればメモかツイートしているのに、これだけ痕跡がないと読んだという記憶が疑わしくなってこないでもない。内容まで覚えているから、まさか読んでないなんてことはないと思うけれど、人の記憶なんて当てにならないことを知っていると、自信がなくなってくる。鮮明に思い出せるからと言って、事実通りに記憶しているとは限らない。 そんな話も面白いかもしれない。昔読んだ物語の内容を巡って、ケンカをする二人。決着をつけるためにその本を探すが記憶は曖昧でなかなか見つからない。行き着いた先が、ビブリア古書堂。全くかみ合わない二人の話に混乱する五浦。もちろん、栞子さんはすぐさま真相に気がつく。 オチはどうだろうなぁ。翻案か何かでどちらの物語も存在した、とか?

Dive into

『プランク・ダイブ』を読んだ。本作は、グレッグ・イーガンの短中編集で、次の7作品が収録されている。 『クリスタルの夜』 『エキストラ』 『暗黒整数』 『グローリー』 『ワンの絨毯』 『プランク・ダイヴ』 『伝播』 『ワンの絨毯』は長編 『ディアスポラ』 の一部に整合性を持たせた形で組み込まれている。だから、読んだはずなのに、すっかり忘れていた。おかげで楽しめた。 でも、好みだったのは表題作『プランク・ダイブ』。特に、ラストがとても印象的。 科学って、正しさが人(声の大きさ、多数決など)に依らないところが良いと思う。科学それ自体が自己充足しているというか。

危機が飢餓

クーリエ ジャポン12月号を読んだ。 先日、 『ソーシャル・ビジネス革命―世界の課題を解決する新たな経済システム』 ( 感想 ) を読んでそちら方面に対する感度が上がっているのか、貧困に関する記事『今も「飢餓」に苦しむ多くの人たちを救うことはできるのでしょうか?』が目に付いた。 極端な家庭かもしれないけれど、モロッコの食べ物が不足することがあるような家庭にも、テレビにアンテナDVDプレイヤーまであるというエピソードには驚いた。 ところで、この記事の「貧困の罠」について批判しているように読めるけれど、ここでいう「貧困の罠」は何を指しているんだろうか? 続けて「寄付」という解決手段の非効率を指摘して、本当の問題はガバナンスにあると別の経済学者の主張を援用しているけれど、自分の知る「貧困の罠」は、 『最底辺の10億人 最も貧しい国々のために本当になすべきことは何か?』 ( 感想 ) で紹介されている次の4つの罠のことで、そこにガバナンスの問題は含まれている。 「紛争の罠」 「天然資源の罠」 「内陸国であることの罠」 「劣悪なガバナンス(統治)の罠」 さらに、同書でも寄付・資金援助の非効率を指摘している。 という疑問はあるけれど、この記事の指摘は自分が向けたことがない視線だったので、面白かった。次の指摘も、もしかしたらガバナンスの問題と同じくらい大きいんじゃないだろうか。 貧しい人たちはチャンスや可能性といったことに対して私たち以上に懐疑的なのです。 無限に寄付・資金援助を続けることはできない。だから、「ソーシャル・ビジネス」は持続可能性を第一義に配当を0にしたビジネスとして、自立を助けたり雇用を創出したりしようとしている。 『ドラゴン桜』でも、魚を与えるんじゃなくて、魚の釣り方を教えるんだ、という話があったっけ。 『化物語』シリーズの忍野メメの言葉を借りれば、「人は勝手に助かるだけ」。 ブラックジャックの言葉を借りれば、「医者は人をなおすんじゃない 人をなおす手伝いをするだけだけだ なおすのは…本人なんだ 本人の気力なんだぞ!」。

心はどこにあるのか

『動きが心をつくる──身体心理学への招待』 を読んだ。 本書は、脳科学だけでは心を理解できないのでは? という問題提起から始まる。そして別のアプローチとして、筆者の専門である身体心理学を紹介していく。 身体心理学では、心が動きを作るだけじゃなくて、動きも心を作るという前提に立つ。分かりやすい例は、深呼吸。大きく息を吸って吐くだけで、リラックスできた経験があるい人は多いんじゃないだろうか。 だけど、それも第6章までの話。 第7章以降は、根拠に乏しい持論の展開が続く。副題『身体心理学への招待』が示すような学問よりの内容を期待していたので、読み進めるのが辛かった。 後半の内容は理解・同意できない箇所が多かったけれど、動きが心に影響するというアプローチは面白いと思う。脳科学でも、手を動かそうという意図を意識する前に手が動いているという実験結果が、 『単純な脳、複雑な「私」』 ( 感想 )で紹介されていたはず。実際、その著者はこんな風に書いている。 心は全身に、あるいは周囲の環境に散在すると言った方が適切だと思うんだ。 『アイの物語』 ( 感想 ) でも、非人間型ロボット上の強いAIは、人間と異なる思考をすると描写されていた記憶がある。それから 『レンズマン』 シリーズでも、ナドレックらの非地球人は地球人と異質な思考をするとあった。 浦沢 直樹の 『PLUTO 8』 の 感想 でも書いたけれど、非人間は人間らしくならないと思う。人間らしさを押しつけるのは、暴力的だとも思う。 少なくとも感覚器が異なれば、世界が違って見えるんだから、違う世界観になるはずだ。

貧困根治

『ソーシャル・ビジネス革命―世界の課題を解決する新たな経済システム』 を読んだ。 『貧困のない世界を創る』 ( 感想 ) と同じ著者の作品。テーマも一貫していて、経過の紹介といった感がある。 問題意識が 『天才! 成功する人々の法則』 ( 感想 )と通底している。どちらも、個人ではなく環境にフォーカスしている。 『最底辺の10億人』 ( 感想 )でも、最貧国がそこから抜け出せない罠として「内陸国であること」を挙げている。 そう言えば、 『銃・病原菌・鉄』 の主張も同じだ。先進国が先に発展した理由として、環境を挙げている。 歴史の授業で、世界四大文明は、肥沃な土壌をもたらす大きな川の近くで興ったとして、文明の名前と川の名前とをセットで暗記させられたけれど、大雑把に言うと、それと同じことだと思っている。 人には、根本的な帰属の誤りというバイアスがあるから、人間の方に原因を求めがちだ。自己責任論は、その一例だろう。 でも、自分が思っているよりずっとシチュエーションに支配されている。映画 『es[エス]』 ( 『エクスペリメント』 としてリメイクされている)で描かれているスタンフォード監獄実験では単なる実験場の役割だったはずなのに看守役が囚人役に暴力を振るったし、 『服従の心理』 ( 感想 )で描かれているアイヒマン実験では多くの被験者が権威に促されるままに酷い選択をしてしまった。もっと日常的な例でいうと、アフォーダンスだろう。極端な話、ボタンを見ると押したくなるという話。 それはさておき、貧困があるとロクなことにならない。 『子ども兵の戦争』 ( 感想 )がその最たる例。日本においては戦争は極端としても、貧困が犯罪を増加させるという分析が 『ヤバい経済学[増補改訂版]』 にあったと記憶している。 貧困がなくなったら、きっと世界はだいぶん平和になるんじゃないかな、と。

自由な三銃士

『三銃士/王妃の首飾りとダ・ヴィンチの飛行船 (原題: The Three Musketeers)』( 公式サイト ) を試写会で観てきた。 中世ヨーロッパを舞台としたRPGの世界だった。魔法こそないものの、飛行船はファイナルファンタジーシリーズの飛空艇だし、国をまたいだ移動は地図上で表現されていてロマンシング サ・ガだった。 パーティーは三銃士+ダルタニアンと野郎部隊だったので、次回作はコンスタンスがもっと活躍してくれるといいな。 そう、次回作だ。面白かったので、次回作が作られるくらいに儲かって欲しいと思う。 それにしても、オーランド・ブルームの貴族然とした佇まいが、堂に入り過ぎ。

キャップ

『キャプテン・アメリカ ザ・ファースト・アベンジャー (原題: Captain America: The First Avenger)』を観てきた。写真はそのときにもらえたポストカード。 最初はひ弱な「もやし野郎」だったスティーブが、特殊な血清とヴェータ線のおかげで、超人兵士キャプテン・アメリカとなり、活躍するという話。 キャプテン・アメリカになってからは、苦戦らしい苦戦をしているようには見えなかったので、もう少し起伏があった方が良かったな、と思う。強くなる前の方が人間味があってキャラクタとしては面白かった。 続編が作られるようなので、そちらに期待。でも、まずは、来年8月に公開予定の『アベンジャーズ(原題: "The Avengers")』。本作で、アベンジャーズのビッグ3(アイアンマン、ソー、キャプテン・アメリカ)が出そろった。

名状しがたいガタイ

『這いよれ!ニャル子さん 8』を読んだ。本作はハス太とルーヒーの回だった。 8巻まで来てもまだまだネタの密度が下がらない。『輪るピングドラム』や『仮面ライダーフォーゼ』と、最近の作品のネタもあれば、『ロマンシング サ・ガ2』と懐かしい作品のネタもある。 自分も風邪の見切り閃きたい。 ラブクラフトコメディーなので、もちろんクトゥルーネタは外せない。今回のお気に入りは、「タイタス・クロリーメイト」。お手軽にSAN値を補給できるらしい。 元ネタはもちろん、 『地を穿つ魔 <タイタス・クロウ・サーガ>』 ( 感想 )。そう言えば、本シリーズも大概だけれど、これはこれで大概だったなぁ。

悪夢を噛む

『ナイトメア・ビフォア・クリスマス (原題: "The Nightmare Before Christmas")』を観た。 スーツを着ているガイコツと言えば、ONE PIECEのブルックではなく、本作の主人公ジャック・スケリントン。 彼が分析的にクリスマスの秘密に迫ろうとして、結局誤解したまま、子供たちを楽しませるつもりでクリスマスを台無しにしてしまう一連の流れは、とても切ない。 子供を怖がらせるクリーチャーが主人公という点では 『モンスターズ・インク』 ( 感想 ) と似ているけれど、本作はあんな風に明るくない。不気味さと楽しさが、陰気さと陽気さが混在している。それでいて、美しい。本当に不思議。

耳元に口元が

Evanescence の セルフタイトルアルバム "Evanescence" を聴いている。本作は、 "Fallen" , "Open Door" に続く3枚目のスタジオアルバム。 "Fallen"から"Open Door"で、激しさから美しさに重心を移してきたように思っていたけれど、そんなことはなかった。本作にはどちらの要素もあって、メリハリがついている。ただ、感想を検索してみると、平坦だといっている人もいるので、感じ方は十人十色だな、と。 お気に入りの1曲は、7曲目の "Lost In Paradise"。ピアノを伴奏にウィスパー・ヴォイスで始まる冒頭はセクシィだし、そこからバンドサウンドに切り替わる時にはカタルシスがある。 でも、こういう曲が引き立つのも、1曲前の "Erase This" のようなアップテンポな曲があるから。だから、ある1曲が気に入っているというよりは、"Erase This" から "Lost In Paradise" への流れが気に入っているといった方が正確。

宿る影

『鬼物語』を読んだ。本書は、『囮物語』( 感想 ) に続く、〈物語〉シリーズ第8作(通算11冊目)。 本作は、『傾物語』( 感想 ) とは、ある意味では対照的で、また別の意味では同型。対照的なのは、副題『しのぶタイム』と内容の関係。同型なのは結末。 それはさておき、忍野忍の話は人間離れしているから、面白い一方で他人事になってしまう。人間ではない上に、怪異としても他に類がない怪異殺しだから、そういうものなのだろう。そういうことにしておこう。 さて、セカンドシーズンも、次の『恋物語』で最後。副題もそれに相応しく、『ひたぎエンド』。だけど、作者が作者だけに油断はならない。

濃く吐くは酷薄な告白

『囮物語』を読んだ。本書は、 『花物語』 (感想)に続く、〈物語〉シリーズ第7作(通算10冊目)。 副題は『なでこメデューサ』。本作も、地の文の視点が暦ではない。物語は撫子の視点で進む。撫子の視点でしか進めようがない。 『思想地図β vol.2』 ( 感想 ) で読んだ『「弱者は善良である」という前提』という言葉を思い出す。 撫子は、弱くて、可愛くて、か弱くて。そんな保護欲を掻き立てられる対象を、多くの人は攻撃できない。撫子自身は、それを分かっていながら分かっていない振りをしていることを分かっていなかった。少なくとも、分かっていなかったことにしておかないといけないとは、分かっていた。 そういう状態にあることが、彼女の防御機制なんだと思う。分かっていることを相手に見抜かれれば、「かわいこぶっている」と攻撃の口実になってしまう。本当に全く分かっていなかったら、その弱さ・可愛さ・か弱さを維持できない。 自分から目を背け続けなければならなかったのは、だからだと思う。目を向ければ、分かっていることが分かってしまう。分かっていながら分かっていない振りをしていることが分かってしまう。 一方で、誰からも目を向けられないその『自分』は何者なのか? そもそも存在するのか? という疑問もある。他人から認識されている自分が気に入らないから、でっち上げているだけという可能性もある。どうしたって、見られているようにしか見られないわけなのだから、誰にも顧みられないパーソナリティに見所はない。 それでも、本人があると思っているなら、それは否定できないわけで、それを守るためにあれやこれや防壁を築いているうちに、そちらに躍起になって、そもそも何を守ろうとしていたか見失うなんてこともあるだろうな、と。

青と緑

『モンスターズ・インク (原題: Monsters, Inc)』 を観た。 モンスターの世界、子供の悲鳴をエネルギーとして集める会社モンスターズ・インクの社員サリーとマイクが、人間の世界から迷い込んだ女の子に引っかき回されるという話。 怖がらせるのが仕事のサリーとマイクだけれど、気が優しかったりお調子者だったりと、親しみが持てるキャラクタなのがいい。 写真は、先日ディズニーランドで買ってきたマイク・ワゾウスキのメモスタンド。モンスターズ・インク “ライド&ゴーシーク!” に乗れなかったけれど、かわいかったのでお土産にした。 トイ・ストーリーのエイリアンといい、Pixerの黄緑色のクリーチャーはかわいいな。

差別まくなし - X-MEN: ファースト・ジェネレーション

『X-MEN: ファースト・ジェネレーション(原題: X-Men: First Class)』 を観た。 プロフェッサーXことチャールズ・エグゼビアと、マグニートーことエリック・レーンシャーとの、因縁に関する物語が、キューバ危機を背景に描かれている。 後々善の側に立つのはプロフェッサーXなんだけれど、本作に関して言えばマグニートーの方が魅力的。ユダヤ人でミュータントなんて、どれだけの生き辛さがあったのか、想像の域を越える。 ところで、前日譚なので、シリーズを通してみていると色々と繋がりが見えてきて楽しい。 プロフェッサーXが車椅子に載っている理由や、マグニートーのヘルメットの由来も明かされる。あと、X-menの名前の由来も。他にもミスティークがマグニートーにつく過程とか、ビーストがあの姿になった原因とか。 それから、プロフェッサーが仲間捜しをしている途中で、1~3のメンバもチラリと登場する。サイクロップスとストームは、幼少期の姿で。ウルヴァリンは、そのままの姿で。ヒーリングファクタのおかげでほとんど老化しないことをすっかり忘れていたので驚いた。そう言えば、1世紀近く前からミュータントだった。 それで思い出したけれど、ウルヴァリン2はいつ公開されるんだろう。

大人など

『おとなになる本』 を読んだ。 「おとな」って何? という疑問を持っているので、原題に使われている"Self-Direction"という言葉の方がしっくりくる。 この言葉は、編訳者のあとがきでは「自己決定」と訳されているけれど、「決定」は少し強過ぎるように思う。 『「不自由」論―「何でも自己決定」の限界』 なんて本を読んだせいかもしれない ( 感想 )。 directionの意味 - 英和辞書 - goo辞書 でいうと、2の意味が自分の語感に最も近い。 (思想・行動などの)傾向, 趨勢(すうせい), (生きていく上での)指針, 目標 もう少し平たく言うと、迷った時にどっちを向いて次の一歩を踏み出すか、考えることだと思う。 だけど、考える前に一呼吸置いた方が良い。 問題にぶつかったら、あわてて結論をだそうしないで、まずリラックスすることを考えよう。 むしろ、リラックスすることが問題について考えることだと言ってもいいと思う。 『はじめて考えるときのように―「わかる」ための哲学的道案内』 ( 感想 ) にそんなことが書いてあったし、自分もそう思う。 10代後半向けに書かれているにしては、文章が平易過ぎる印象があるけれど、分量も少ないしさらっと読み流せるので、ふと振り返るときにいいかもしれない。

うつけか天魔か

『ドリフターズ 2巻』 を読んだ。 1巻のラストでは、 「知るか」 「何それ勝手に決めんな」 「やだ」 とオルミーヌの話を無下にした豊久、信長、与一。 本巻では、信長の「俺達 (ドリフターズ) が国を奪れば良いのだ」のセリフを皮切りに、動く動く。 信長、格好良いなぁ。

バイアス by us

『メディア・バイアス あやしい健康情報とニセ科学』 を読んだ。 すでにAmazonに49のレビューがついているくらいだから、既にたくさんの人が読んだんだろうけれど、もっと多くの人に読んで欲しいと思う。多くの人に読んでもらえるだけの、読みやすさもある。 フードファディズム(効果が疑わしい健康食品・ダイエット食品への傾倒)や、マイナスイオンなどのニセ科学、それから環境ホルモンなど過大評価されているリスクについて、とても丁寧に解説してくれている。自分は特に化学物質について、分かっていなくて、印象を持っていただけだということがよく分かった。特に、次の2点。 まず、「無毒性許容量」と「致死量」の違い、それから前者に安全率をかけた「一日摂取許容量」の意味するところ。 DHMOのジョーク を笑っている場合ではなかった。 次に、化学物質はそもそも自然に存在していて、添加物には自然由来のものもあるし、添加しなくても植物が天然農薬を作ることもあるということ。無添加・無農薬の有機栽培と聞くととても健康的に感じるけれど、次のように、意味がなかったりデメリットが大きかったりすることがあるそうだ。 その添加されなかった物質は、他の食品が自然に含んでいて、無添加による減少は誤差レベル 無農薬栽培したら、天然農薬がよりたくさん作られてかえって危険になる 有機栽培のために化学肥料を使わないせいで、面積あたりの収穫量が減る たしかがんばれゴエモンの村人だったと思うんだけれど、「健康のためなら死んでもええっ!!」というセリフを思い出す。 それから、誤解を改めるのと同じくらい重要なのが、これからそういう情報に踊らされないようにすること。本書にはそのための十箇条もある。ちょっと漠然としているものもあるけれど、比較的簡単にできる次の3点を抑えるだけでも、随分と冷静になれると思う。 「○○を食べれば……」といういような単純な情報は排除する 「危険」「効く」など極端な情報は、まず警戒する その情報がだれを利するか、考える 間違っていた何かを後から笑うのは簡単だけれど、それは次のいずれかだと思う。 そもそも何も判断していない(から間違えるもなにもない) 間違えていたけれど、なかったことにしている 後知恵バイアスに捕まっている 情報を発信した人を非難するのは簡単だけれど、相...

最初で最後

『最初の刑事』を読んだ。 本書は、1860年に英国で実際に起きた殺人事件を扱ったノンフィクション作品。小説としても読めるので、『冷血』( 感想 ) に代表されるノンフィクション・ノベルだと思う。 綿密な調査の上で書いたのだろうな、と思わせるエピソードが、そこかしこに散りばめられている。そのせいか、枝葉が多くて、幹が追いにくい。 『冷血』のときもそうだったように、あまりはっきりとした印象が残っていないから、この手の作品はあまり合わないのかもしれない。 考えてみると、自分の関心は、このような象徴的な個別の事例ではなくて、平凡な多数の事例から浮かぶパターンあるいは傾向に向いていることが多い。 象徴的な事柄についての鮮明な記憶は、思っているほどあてにならない。『錯覚の科学』( 感想 ) でいうところの記憶の錯覚がある。

スキあり

「すき家を狙った強盗が多発してるってニュースが話題だね」 「はてブのホッテントリに入ったり、 虚構新聞でネタ にされたりしていますね」 「『牛丼店強盗9割は「すき家」』なんて、センセーショナルな数字を使っている記事があったので、これを糸口に少し調べてみたよ」 「数字好きですねぇ」 「まず『9割』っていうけれど、何を10割としているか確認してみると……」 今年1~9月、全国の牛丼チェーン店での強盗事件は未遂を含め71件発生し、うち約9割 牛丼店強盗9割は「すき家」 警察、異例の防犯強化要請 - 47NEWS(よんななニュース) 1~9月に全国の牛丼チェーンで起きた強盗事件71件のうち、9割にあたる63件 すき家:警察庁が防犯体制の強化要請 強盗事件多発で - 毎日jp(毎日新聞) 「今年の1月から9月にかけて、全国の牛丼チェーン店で起きた強盗事件あるいは強盗未遂事件71件を10割としている」 「全部で71件なんて意外と少ないですね」 「牛丼チェーン店で起きた事件に限っているからだろうなぁ。 警察庁が今月11日に発表した『平成23年1~9月犯罪統計』PDF版 の5ページ目上のグラフ表を見ると、今年の1月から9月にかけて認知された強盗事件は、2756件ある。牛丼チェーン店で起きたのは、3%もない」 「牛丼チェーン店の中では、すき家が強盗事件数が多かったのは間違いないにしても、強盗事件の大半は他の場所で起きている、ということですか」 「当たり前だわなー、と。でも、『強盗9割』なんて字面を見ると、すき家がとんでもなく危険だという印象を受けるのも確か」 「すき家狙いの強盗が増えているという数字もありましたよ」 すき家を狙った強盗は、今年1月~9月末までに19都道府県で63件(未遂含む)発生し、昨年一年間の58件をすでに上回っている。 asahi.com(朝日新聞社):すき家狙った強盗頻発 1人勤務中に被害集中 - 社会 「本当だ。加速度は大きい。ペースが去年の倍以上か」 「しかも、去年もその58件が牛丼チェーン店で起きた強盗事件の大半だったみたいです」 昨年も68件中58件を占め、同庁や各都道府県警は防犯態勢を強化するよう再三要請してきたが「ほとんどの店舗で改善が見られず、9月だけでも13件発生し、防犯態勢に問題がある状態が続いている」(同庁生活安全...

さあ、あさまで

『境界線上のホライゾン4〈中〉』 を読んだ。 本巻の表紙は、〈上〉から登場の二重襲名者大久保・忠隣/長安。 本巻はいつもにまして舞台が多いように感じた。 武蔵では、彼女と本多・正純が、相対している。伊達家、上越露西亜(スヴィエートルーシ)、最上家の三国では、各国の役職持ち外交官が、交流を始めている。三国の一つ上越露西亜の浮上都市ノヴゴロドは、〈上〉でのP. A. Odaとの戦いを経て、また違った動きをしている。さらに真田教導院は相変わらず暗躍しているし、その上他の勢力まで接触してきたりで、一読しただけじゃ追いつけない。 でも、今の世界の動きを作った「非衰退調律進行」についてまとまっていたのは、嬉しかった。これまでも断片的には情報が出てきていたけれど、整理できていなかった。 ところで〈上〉で気になっていた本多・二代は、成長のキッカケがつかめそうで何より。しかし、師事先がアレでは、苦労しそうだなぁ、と。どちらかというと、防御じゃなくて回避だし。いや、そんなこともないのか? どこがとは言わないけれど。