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竜頭荼毘 - 機龍警察 自爆条項

『機龍警察 自爆条項』を読んだ。本書はSF警察小説。オーバーテクノロジィのロボット〈龍機兵(ドラグーン)〉擁する警視庁特捜部の物語。

〈龍機兵〉の入手経路など核となりそうな設定が明かされていないこともあり、警察小説としての側面の方が目立つ。地道な捜査に向かう警部達の姿も描かれれば、警視庁内のしがらみや他省庁からの圧力なども描かれている。

特捜部を率いる沖津警視長が、警視庁、警察庁、外務省と繰り広げられる駆け引きが面白い。特捜部は、警察庁からはもちろん警視庁の中でも煙たがれている上に、今回の事件では外交上の理由から外務省からの圧力もかかる。そんな中、時に相手の思惑に乗りながら時に相手の裏をかきながら、特捜部を動かしていく様がスリリング。

交渉、説得。事前の根回し、調整、そしてその場での駆け引き、腹の探り合い。この手の活動を、自分はもっぱら苦手にしているからだと思う。だからこの手の小説はあまり読んでこなかったのだけれど、SFと思って読み始めた本書で偶然読んでみて存外に楽しんでいることに気がついた。

こういう国内の官僚社会が舞台ではあるけれど、世界スケールの動きも背後にあって、読み応えがある。任務はアイルランドのテロリストからイギリスの要人を警護することだし、シリーズの敵となりそうな企業の背後には中国政府や中国裏社会が見え隠れしている。

続編『機龍警察 暗黒市場』も読みたい。これは、何の市場なんだろう? 麻薬? 奴隷? 武器?

でも、その前にシリーズ1作目『機龍警察』を読まないと。タイムラインに流れてきたタイトルを見て、2作目だと気付かず読み始めてしまった。過去の事件への言及で気がついたけれど、先が気になってこの通り読み切ってしまった。

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