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貧乏人の経済学 - もういちど貧困問題を根っこから考える
「『貧乏人の経済学』を読んだよ」

「貧困に関する経済学ですか?」

「うん。主に、貧困層の人がどう振る舞うか、ランダム化対照試行で説明している。たとえば、マラリアを防ぐために蚊帳を配ろうとするとき、無料で配るのと割引券を配るのとで、それぞれどう結果が変わるか、とか」

「聞き覚えのある話だと思ったら、2人の著者のうち一人は、エスター・デュフロ: 貧困に立ち向かう社会的実験 | Video on TED.comでプレゼンテーションをしている人ですね」

「あ、本当だ。気がつかなかった」

「消化しきれていない様子ですね」

「うん、話題が多くて。『最底辺の10億人』で述べられている〈貧困の罠〉にも、『貧困のない世界を創る』で紹介されているマイクロ・クレジットにも、それから『地球全体を幸福にする経済学』や、『正義のアイディア』で出てきたケイパビリティにも言及している」

「それで何を言わんとしているんですか?」

「すごい端折って言うと――貧困に銀の弾丸はないけれど、どうすると効果がよく現れるかは分かりつつある。大文字の制度(政策とか)にも効果はあるけれど、それだけでは貧乏人は動かない。もっと細かいところにまで気を配る必要がある――という感じだと理解した」

「インセンティブ設計ですか?」

「それも一つの手段。でもそれだけじゃない。もっと泥臭い。IDEOがよく参照される意味でのデザインが近いような気がする」

「具体的な問題に落とし込むと、解決が個別最適になりませんか?」

「うーん、それ以前の問題。大文字の制度は、検証されていないから解決に寄与しているかどうかさえみんなよく分かっていない、というのが現状じゃないかな。『正義のアイディア』に出てきた議論とよく似ている。全体最適の解があるとしてもそれが分かっていないんだから、少しの工夫で今より少しでもよくなる改善を積み重ねていくことが、かえって近道なんじゃないか、と」

「銀の弾丸を欲しがるのは、人の常なんですかね」

「ね。貧困問題に限らない。ソフトウェア開発でも、『人月の神話』の時代から銀の弾丸はないと言われているし、だから『アジャイルサムライ』の志が必要なんだろうな、と」

「ところで、効果が出るのはどんな時なんですか?」

「細かい障壁を取り除くことが大事なんだけれど、とくに次の5つが〈貧乏な人の生活を改善する方法についての教訓5つ〉として挙げられていた」
貧乏な人は重要な情報を持っていないことが多く、まちがったことを信じています。
貧乏な人は自分の人生のあまりに多くの側面について責任を背負いこんでいます。
一部の市場が貧乏人に提供されていなかったり、そこで貧乏人がかなり不利な価格に直面したりするには、やむを得ない理由があるのです。
貧乏な国は貧乏だからといって失敗が運命づけられているわけではありませんし、また不幸な過去を持つから失敗確実などということもありません。
人々に何ができて何ができないかという期待は、あまりにしばしば自己成就的な予言に早変わりしてしまいます。
「貧困問題に限らないように見えますね」

「うん。俺もそう思う。『天才! 成功する人々の法則』『まぐれ』にあるように、貧困層とそれ以外とで何か決定的な差があることは希なんだろうなぁ、と」

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