「雨の音は落ち着くね」
「もう止んでいますけれど?」
「そんな時にはRainyMood.com」
「あ、雨音が流れてきました」
「こういうノイズは何だか落ち着くよね」
「音と気分って、密接に結びついていますよね」
「ね、反対に集中力を大きく損なう音もある。着地点が見えない議論が聞こえてくる中でのプログラミングは、忍耐力を試されているとしか思えん」
「何かあったんですか?」
「『Making Software』の19章『共同作業場か、閉じるドアか?』でそんな議論があったような、とふと思い出して」
「絶対何かありましたよね、さっきの断言振りから察するに」
「環境から聞こえてくる音と言えば、『津田大介のメディアの現場 vol.49』の『2.メディア/イベントプレイバック』に、緊急地震速報をデザインした小久保隆さんという音環境デザイナーの話が載っていて――」
「露骨に話を変えましたね」
「――日本やアジア圏は、無秩序な音で溢れているんだって」
どんどん刺激を求めるというか、情報を加えたがるというか。たとえば繁華街に目を向けると、自分たちの情報を流したいお店が競いあうように音を出しあっている。
「哲学者の中島義道さんも、よくそんなことを書いていますよね」
「うん。でも、多くの人はあまり気にしていないのかな? 例えば、人混みの中で大きな音がしても、反応する人は少ない。自分は気になって、音が鳴った方を見るのだけれど、同じ方向を向いている人があまりいないような」
「あるいは、気になっているけれど、誰も言い出さないのかも」
「誰に何をどう言えば改善されるかよく分からないしね。でも、自分ももう少し静かな方がいいな。思考がまとまらない」
「やっぱり何かありましたね……」