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ハーイ!

『ハイ・コンセプト』を読んだ。
『プレゼンテーション Zen』感想)で紹介されていたのがきっかけ。
手にとって始めてベストセラーだったと知った。

中身はともかく、訳者解説と本文の盛大な不整合が気になった。
ベートーヴェンの音楽は「理屈」であり、「左脳型」なのだ。
(訳者解説)
専門家がすすめるクラシックを五曲紹介しよう(もちろん、レコーディングの違い、たとえば、指揮者や楽団が違うと表現方法や、解釈、そして音色も違ってくる)。
▼ベートーベン『交響曲第九番』
(本文)
中身も何だかしっくりこない。
これから求められる「六つの感性」として次を挙げているけれど、随分前から求められているものもある。
  1. 「機能」だけでなく「デザイン」
  2. 「議論」よりは「物語」
  3. 「個別」よりも「全体の調和」
  4. 「論理」ではなく「共感」
  5. 「まじめ」だけでなく「遊び心」
  6. 「モノ」よりも「生きがい」
1では「デザイン」を重視しているが、本書の10年前に出版された『フォークの歯はなぜ四本になったか』感想)で、既にデザインを重視するあまり機能をないがしろにしている例が挙げられている。

2の「物語」もロジカル・シンキングの名著と言われる『考える技術・書く技術』で、下記の通り強調されている。
導入部では、伝えようとするテーマについて読み手がすでに知っていること、または知っていると思われることをストーリー風に語り、そうすることで、読み手の持っている疑問をもう一度思い起こさせて、本文の中にその答えが書かれているという期待を抱かせるのです。
それから2と4は比較対象が不自然に感じる。
「論理」と「物語」、「議論」と「共感」とを比較した方が、自分にとっては自然。
3, 5は今に始まった話ではないし、6は「モノ」を「生きがい」にする人が減った結果だと思う。

本書が売れたのは、「左脳主導思考」に苦手意識を持った人が多かったからだろうな、と想像する。
そこに「そんなものはこれからの時代さして重要ではありませんよ」とオーソリティが言ってくれれば、喜んで飛びつくだろう。
何だか、占いに近いモノを感じる。

広い範囲のトピックを扱っているから、とっかかりとしては良さそう。
ただし、原著にあった文献リストがオミットされている。不親切。

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