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ヴァンプーダンス

『傷物語』 を読んだ。 本作は、 『化物語』 ( 感想 )の前日譚にあたる。 『化物語』で語られなかった、主人公・阿良々木自身の物語が語られる。 シリアスな雰囲気で話は進むせいか、最初の物語だからか、忍野メメが目立つ。 出てくる度にMother 2のトンチキさんを思い出してしまうのは、アロハだからだろうか。 アニメを見ていないから、というのもあるだろう(むしろそっちの理由の方が大)。

手向ける傾き

『傾物語』 を読んだ。 本書は、『化物語』、『傷物語』、『偽物語』、『猫物語』に続く、〈物語〉シリーズ第5作(通算8冊目)。 収録されているのが『まよいキョンシー』なので、八九寺真宵のフィーチャを期待していたけれど、そうではなかった。 冒頭のとある人物の描写といい、忍野忍との遣り取りの多さといい、続刊への伏線に見える箇所が目立つ。 それを抜きにしても、個人的にはちょっと話が大き過ぎた嫌いがある。 でも、だからこそ、これから〈戯言〉シリーズみたいにどんどんエスカレートしていくのか、それとも今回はある種のインタールードで、ひたぎや翼のように勝手に救われる話に戻るのかが気になりもする。 次は、『花物語』。 収録されているのは、『するがデビル』。 果たして、駿河の出番はどれくらいあるのだろうか。

正しく正義

『猫物語 (黒)』 を読んだ。 本作は、『化物語』、『傷物語』、『偽物語』に続くシリーズ4作目。 この物語は、正義に関する物語だった。 正義が役に立つことは少ないと思う。 議論に勝つには役立つだろう。正論は強い。 しかし、論破したところで相手が変わるかというと、そうではないだろう。 面従腹背になると思う。 ところで、正義は暴力的だと思う。 既知の情報から構成された正義は、未知のものを邪悪に割り振ることになる。 また未知のものを理解しようとはしない。理解すれば、正義が揺らぐ。 『○○的に正しい』 で書いた通り文脈を限定した上での正しさは有用だと思う。

妹は百代の過客

「『暦物語』を読んだよ」 「あれ、次は『終物語』、『続・終物語』と続くんじゃありませんでしたっけ?」 「この物語は100%突然書かれたみたいだよ。ここ最近と違って短篇集の形で、さらにここ1年を振り返る形式だから、サイドストーリー的な雰囲気が支配的」 「『化物語』が中篇集だったことを思い出すと、ここ最近が違ったのかもしれませんね」 「そうだね。言われてみると、何だか懐かしい雰囲気だったし。しかし、この発言は制限にひっかかっていやしないだろうか」 「そんな制限はない。あるんはメタネタ禁止の制限だけや」

本物よりも本物らしく

『偽物語(下)』 を読んだ。 本書は、『化物語(上・下)』、『傷物語』に続く『偽物語』の下巻。 収録されているのは「最終話つきひフェニックス」だけれど、このあと『傾物語(第閑話まよいキョンシー)』、それから『猫物語(第禁話つばさファミリー)』と続くらしい。 ところで、本書を読んで、哲学者ジャック・デリダを思い出した。 「偽物」と「本物」との関係は、「脱構築」の対象になりそう。 「エクリチュール(書き言葉)」と「パロール(話し言葉)」の関係に似ている。 あるいは、「本物」は「偽物」の「本物」たらんとする運動に見られる「差延」のようにも思う。 「偽物」は「本物」がなければ発生しないのに、「本物」がなくなった後も存在し続ける。 「本物」のいなくなった「偽物」は一体「何者」か? それどころか、「本物」のいない「偽物」もあると思う。 ホリの「絶対言わないこと」のモノマネは何に似ているのか? 「本館」のない「別館」は最早「本館」か?

eight inch tails - あなたの人生の物語

テッド・チャンの短篇集『あなたの人生の物語』を読み終えた。全部で8篇の物語が収録されている。それぞれについて手短に感想を。 「バビロンの塔」 高い高い塔を昇っていく物語。ファンタジーを読んでいる気分で読み進めていたら、最後に世界がぐるりとひっくり返った。 「理解」 海外SFの『アルジャーノンに花束を』や『くらやみのはやさはどれくらい』を思い出しながら読んでいた。国内SFで真っ先に思い浮かんだのは『Know』。 「ゼロで割る」 これはいまいち楽しめなかった。主人公の反応についていけなかった、というのがその一番の理由だと思う。 「あなたの人生の物語」 読み始めて時制がおかしいと思ったら、そういうことか! ネタバレしないで書けることが少ないので、これだけで。映画化されるという話だけれど、どうなるんだろう? 「七十二文字」 ハードファンタジー風味。自分はメタプログラミングという呪文の話として読んだ。 「人類科学の進化」 短いけれど印象的。初出が論文誌だったということを知るとさらに面白さが増す。 「地獄とは神の不在なり」 「ありふれた降臨だった」の主語が神だったり、その顕現による被害には保険がおりなかったり、とスケールの幅広さが凄まじい。古橋秀之さんの〈ケイオス・ヘキサ〉シリーズを連想した。そう言えば、テッド・チャンも寡作だけれど、古橋秀之さんも寡作だ。 「顔の美醜について」 短い物語に色々な問題が詰め込まれている。本能的に人を美醜で評価することの是非、その本能を利用してアテンションを奪うことの是非(『Beatless』の〈アナログハック〉に似た問題)、その本能を抑制することの是非、それからその本能を抑制して育った人間がいたとしたら人をどう見るか。 これで文庫化されている作品を全て読みきってしまった。残る2作品『ソフトウェア・オブジェクトのライフサイクル』と『予期される未来』を読むには、雑誌『SFマガジン』のバックナンバーにあたらないといけないから、難易度が高い。電子書籍として配信されたりしないかな。

モノローグ

『化物語(上)』 、 『化物語(下)』 を読んだ。 単純に主人公――阿良々木暦と各キャラクターとの遣り取りが面白かった。 ところで、「バケモノ」はどうして「化け物」なんだろう、「化け者」ではなく。 化けて出るのが、人でも物扱いだ。 最近読んだ同作者の本だから、 『きみとぼくが壊した世界』 か 『不気味で素朴な囲われたきみとぼくの壊れた世界』 だと思うのだけれど、そこでも「ホンモノ」について同じ遣り取りがあった。 いずれにせよ、人でなしということなのだろうか。

小さな、けれど実らなかったものの話

『零崎人識の人間関係 匂宮出夢との関係』 を読んだ。 『無桐伊織との関係』 ( 感想 )に続き、人間シリーズ最終巻2冊目。 今までに読んだ西尾維新の作品の中で、読後感が最もウェットだった。 ちなみに今までに下記35冊を読んでいる。 戯言シリーズ+人間シリーズ: 13冊 化物語+傷物語+偽物語: 5冊 刀語+真庭語: 13冊 世界シリーズ: 4冊 JDCトリビュート: 1冊 刀語の最終巻も終わり方はウェットだったけれど、主人公の人格が人格なのであっけらかんとしているな、という印象の方が強かった。 他の作品では、後味が悪かったり、そもそも身も蓋もなかったりしていたように記憶している。 『無桐伊織との関係』でも仄めかされていたけれど、変人・奇人・超人だらけの登場人物の中で、零崎人識はかえって特異なのかもしれない。 残る2冊 『零崎双識との関係』 、 『戯言遣いとの関係』 が楽しみ。

ラダー・ラバー・ダバー - シルトの梯子

『シルトの梯子』を読んだ。 (例のごとく)わからないことだらけだったけれど、グレッグ・イーガン作品の醍醐味に満ち溢れていたんじゃないだろうか。 まず、一文目からぶっ飛んでいる。 はじめにグラフありき、グラファイトよりはダイヤモンドに似たものが。 ここでいう〈グラフ〉は、棒グラフや折線グラフのグラフではない。宇宙を構成する素粒子だ (と思う)。真空さえも、無数のグラフの重ね合わせでできているそうなので。 恒星間空間のほぼ真空の領域でさえ、それがほぼユークリッド的な幾何学であるのは、その領域が無数のグラフ――各々が仮想粒子で満ちている――の精巧な重ね合わせであるという事実に依存している。 その〈真空〉がこの物語の鍵。はじまりは、作中の物理法則〈サルンペト則〉に基づいた実験。内容は、異なる時空を構成するグラフ――新真空を作り出すというもの。新真空の生成には成功するものの、六兆分の一秒で消滅するはずのそれは、逆に真空を侵食しながら光速度の半分の速さで広がり始めてしまう(と書いてはみたものの、どんな感じなんだろう。反物質で世界が置き換わっていくみたいなイメージ?)。 物語は、この新真空にどう対処するかを巡って繰り広げられる。こうやって整理すると、大筋では災害パニックものみたいだ。けれど、新真空をどうにかしようという防御派だけでなく、人類が新真空に適応しようという譲渡派も出てくるのは、さすがグレッグ・イーガンだと思う。特にその理由。 今、さらっと〈人類〉と書いたけれど、これもまた曲者。この世界では、実体化せず情報生命体として生きている人類は珍しくない。もちろん、宇宙を移動するためなど必要に応じて非実体化するけれど、基本的には実体化して生きる人類もいる。それから、それらの技術を受け入れない 古代宇宙飛行士 ( アナクロノート ) と呼ばれる人もいるけれど、物語で大きな役割を果たすのは最初の2つの人類。 譲渡派と防御派に分かれた主人公とその幼なじみとか、抽象的にとらえると王道的なのだけれど、人類の在り方が今と違い過ぎるので会話についていくだけでも、非常にハードでスリリング。そこで議論が交わされる、生とか死とか性とか知とか自己同一性も、グレッグ・イーガン作品に通底するテーマだ。 導入だけでお腹一杯どころではないのだけれど、物語が進み、新真空への対処の糸...

物語足る - エピローグ

円城塔の『エピローグ』を読んだ。 何が何だか分からない荒唐無稽な物語なんだけれど、面白かった。どう面白かったのか言葉にしがたいのだけれど、とにかく面白かった。 物語というか文章というか文というか文字列のシーケンス性が破壊されていて、色々と驚かされた。 『ゴーレム 100 』 が脳裏をかすめる。そう言えば、ベスターの名前も言及されていた。触れられていた作品は 『虎よ、虎よ!』 だったけれど。 シーケンス性が破壊されているのは、物語だけではない。登場人物の主幹時間が並列化されたりインターリーブされたりする。 『宇宙消失』 、 『紫色のクオリア』 、『順列都市』を思い出す。 視点を変えると、物語やそれを読む主観の可能性を追求しているように見えてくる。 という難しそうな話はさておいても、何が何だかよく分からないままでも、面白いから凄いよなぁ。

Listen, Read, Write and Rewrite

『名作コピーに学ぶ読ませる文章の書き方』を読んだ。名作コピーが名作たる所以の解説を通して、文章が読まれる条件についてエッセイ風に書き記されている。 気の持ちように関する話が多かった。そのせいか、全体的な雰囲気が 『パワープレゼンテーション』 が似ているように感じる。ただ、この本には、体系立てられたフレームワークも、即効性のあるTIPSもほとんど書かれていない。 精神論のようで食わず嫌いになりかけたけれど、一歩立ち止まって考えてみる。その気の持ちようを、文章からどう読み取ってもらうかがテクニックなんじゃないか? と。人を動かすのは、客観的な事実より主観的な物語だ。自分は、どちらかという事実を重視する方で、コピーを読む時はかなり割り引く。それでも、動かされるのは物語だ。少なくとも、事実を確かめようという動きだすキッカケは、物語に揺さぶられた感情だと思う。 ここからは、コピーに特徴的な話。 コピーとプレゼンテーションなどとの最大の違いは、そこに載っている気持ちの出所だと思う。プレゼンテーションでは気持ちの出所も自分だけれど、コピーライターの場合それはクライアントになる。そのことを端的に現しているのが、「第三部 話の見つけ方」の最初の章タイトル「書き上手になろうと思うな 聞き上手になれ」。 『たのしいロゴづくり』 の4章を連想した。ロゴづくりでも、いかにクライアントから話を引き出すかが重要になる。 『アジャイルサムライ』 でいうところの期待マネジメントにも通じそう。 もう一つ、コピーで特に重要になるのは、他のコピーとの差別化の話。確かに、他と同じでは読まれないように思う。差別化のためには、自分の気持ちより、読者より、さらに外にある言葉にまで目を向けないといけない。どんなに気持ちが載った言葉でも、読者が色んな文章の中で見かけていたら、色褪せてしまう。だから、想定読者がどんな文章を読んでいるか、とか自分の書いた文章の隣にはどんな文章が並んでいるか、も考える必要が出てくる。 コピーは感覚的なものと思っていたけれど、体系的とまでは言えなくともツボはあるらしい。それが分かって、少し視点が広がったような。

都市伝説の伝染

「『虚構推理 鋼人七瀬』を読んだよ」 「第12回本格ミステリ大賞の小説部門受賞作品ですね」 「そうみたいだね。今さっき知ったよ」 「ミステリィ好きな割には疎いですね。で、どうでした?」 「面白かったよ。キャラクタや設定も面白いし、終盤の畳み掛けるような解決では盛り上がった」 「少し検索してみると、『本格ミステリらしくない』なんて感想もありますけれど」 「変化球ではある。ミステリ要素もあったけれど伝奇要素もあったし。そういう意味では、京極夏彦さんの『百鬼夜行』シリーズや『巷説百物語』シリーズを思い出す。『百鬼夜行』シリーズは〈憑物落とし〉で妖怪物語の虚構を暴き事実を晒し、『巷説百物語』シリーズでは〈仕掛け〉で事実を伏せて妖怪物語の虚構で上書きする。一方この『虚構推理』では――」 「それくらいにしておきましょうか」 「それもそうか。ま、あれだよ。『戦地調停士』シリーズとか『トリックスターズ』シリーズとか読んでいるとそんなに気にならないよ」 「魔法出てきますしね」 「ちゃんと制約は書かれているけれどね。この作品も一見トリッキーだけれど、パーツはちゃんと踏襲されていると思うよ。ところで、 webメフィストのあとがきのあとがき によると、シリーズ化されそう。楽しみ」

stay at moon - 第六大陸 1, 2

SF小説『第六大陸』の1, 2巻を読んだ。これで完結。2冊で終わるときは、上下巻表記という固定観念があったので、読み始める前は3巻以上あるかと誤解していた。 それはさておき。 本書のテーマは月面での建設。それも、宇宙飛行士ではなく、一般の人を招くための施設。だから、施主からしたら、安全が保たれてようやくスタート地点で、そのうえ快適に滞在でき、華麗な装飾が施され、贅沢な料理が供されるような施設を要求することになる。 言い換えると、施主の目的は、月に行くことではない。月に行くためのロケットは、1巻の表紙を飾ってこそいるが、建設中は人員や資材を運ぶトラックであり、オープン後は客を運ぶバスだ。宇宙へ出るのが夢でも常識でもないところが、あまり見ない舞台設定で新鮮。 これだけ壮大なプロジェクトが、執筆当時(本書は2003年発売)の技術の延長線上で描かれる。だから、施主は巨大レジャー企業で、元請けは大手建設ゼネコンで、この一大プロジェクトにロケットを開発している企業が参画している体制となる。たいていは悪し様に書かれることが多い大手建設ゼネコンが、主人公サイドというか主人公の一人・青峰走也がその社員なのも珍しいように思う。 現実味あふれるあまり、最初はなかなか計画が進まない(資材を運ぶためにロケットを改良するところから始まる)けれど、ひとたび軌道に乗ってしまえば一気に物語が動き始める。2巻なんて、先が気になるあまり1日で読み切ってしまった。プロジェクトの進行だけでなく、もう一人の主人公巨大レジャー企業の社長令嬢・西園寺妙の、プロジェクトオーナーとしての振る舞いや、個人として抱える秘密も、物語を引っ張ってくれた。 ここからは余談。『火星の人』も現実の延長線上の技術に沿って書かれているけれど、対象的な構図になっているのがおもしろい。本書は、月に多くの一般の人を送り込もうという私企業の物語。これに対して『火星の人』は火星に一人取り残されて地球に戻ろうというNASA宇宙飛行士の物語だ。 さらに余談。本筋とは関係ないけれど、次の一節が、2003年に発売された2025年を舞台にした小説で書かれていて、驚いた。こうなって欲しいなと思う。 一時の右傾化を乗り切って素朴な平和主義の憲法を固持し、中立を保ったまま見事な外交国家に転じた日本

劇場要素ありボイロ実況動画のおもしろいところ

ニコニコ動画の投稿者/視聴者として、ボイロ系実況動画のこんなところがおもしろいという話をしているつもり。で、言いたいのは「劇場/茶番が多いボイロ実況もっと栄えて」。 おもしろさの分析に分析美学の成果を援用して分析してみた。援用元は 『ビデオゲームの美学』 および 『ゲームプレイ/ヤの美学:プレイ、プレイヤ、ペルソナ』 。 待って。ブラウザバック前に要約だけ読んでいって。 要約 1) ゲームプレイ動画の作成および視聴の対象として、映像化・ノベライズ・コミカライズあるいはテーブルトークRPGリプレイと同じように、ゲームプレイ動画の作者による創作が存在する。 2) ゲームプレイ動画作者による創作に固有の特徴は、それがゲームシステム内で実現されており、それを視聴者が了解していることである。 3) 創作を含むゲームプレイ動画と相性がよいジャンルは、ボイロ系実況プレイ動画である。 劇場/茶番が多いボイロ系動画もっと栄えて。 1. モチベーション 「そういう風に楽しめるならVOICEROID実況動画を観てみよう、投稿してみよう」と思う人がいてくれたらいいなと思う。 ではどう推せばいいのか?と考えたとき、自分は、もっぱらVOICEROIDやCevioの実況動画を観ていて、その中でも好き嫌いがある。好きな動画に共通の特徴を抽出し、投稿や観賞でどこを楽しんでいるのか言語化(記号化)してみよう、という試みがこのエントリ。 直接の必要性を越えて記号を使うのは、実践ではなく理解のためである。 出典: 『芸術の言語』 ついでについでに、次の動画をどうしようか悩んでいるので、方向性(の選択肢)を考える材料にしたい。 2. 分析に用いる用語 先行論文はリサーチしていないが、最近読んだ『ビデオゲームの美学』および『ゲームプレイ/ヤの美学:プレイ、プレイヤ、ペルソナ』から、援用する用語を導入する。このエントリよりおもしろいので未読の人は先に読もう。とは思うが、忘れっぽい自分のためにも必要な用語をここで導入しておく。 2.1 ゲーム内の情報 『ビデオゲームの美学』から、ゲーム内で提示される情報の分類を導入する。一つの情報源が双方を提示することが多いが、区別しておくと、ゲーム内の設定とゲームシステムを分けて評価できる。 〈ゲーム的内容〉:ゲームメカニクス(ゲームシステム)に関連する内容。 〈虚構的内容〉...

女王の未完は世界一

「『未完少女ラヴクラフト2』を読んだよ。 1 に引き続き今回もKindleで」 「Kindle版が出たら読もうと思っていたところに、ちょうど配信が始まりましたね」 「うん。ナイスタイミングだった」 「それで、内容はどうでしたか?」 「今回はアンブローズ・ビアスが美少年化。ラヴクラフトの美少女化に続き、変化球だか暴投だかが二球続いたぞ」 「四死球を恐れませんね」 「前作は意外にも物語自体は王道のボーイミーツガールだったんだけど、さらに今回は物語もかなりカオスな様相を呈してきたよ」 「〈這いよるニャンコさん〉なんてネタも仕込まれていましたしね」 「そういうところはクトゥルフものらしくて良いと思う。今回気になったのは、謎が残り過ぎていること。おかげで読後の満足感が今ひとつ」 「続刊に期待ですね。『未完少女』の名に恥じない終わり方だと思います」 「そんなメタな。早く3巻出て欲しいよ、Kindleで」

流通網の箱 - コンテナ物語

『コンテナ物語―世界を変えたのは「箱」の発明だった』を読んだ。 タイトルの方が的を射ていて、サブタイトルの方が蛇足。珍しいように思う。タイトルはフックになるよう正確性を犠牲にして、サブタイトルで内容を示すタイトルの方が多い気が。 本書のテーマは「「箱」の発明」ではない。言うまでも無く、「コンテナ」が存在する前から「箱」は存在しているし、コンテナの起源として「箱」まで遡ったりしない。それから「「コンテナ」の発明」でもない。「コンテナ」が発明されても、世界は変わったりしない。 本書が描くのは、「コンテナ」が発明され、流通を席巻するまでの物語。アイディアを思いついてコンテナを作っても、それだけじゃ広まらない。多くの利害関係者ーー港で働く労働者、競合となる海運、設備投資が必要となる港、連携相手である陸運、それから顧客である荷主などなどーーとのやりとりを経て、ついに世界中を駆け巡るまでが描かれる。言い換えれば、コンテナを軸とした流通システムが、国際社会に構築された過程とも言える。 さらにはこのシステム、工業製品の製造プロセスまで変えてしまう。物を移動させるコストが低下したことで、原材料と製品だけでなく中間部品まで行き交うようになる。つまり、いわゆるグローバルサプライチェーンの構成を可能にしたのだ。 読む前にはコンテナなんて脇役に過ぎないと思っていて、まさか経済活動の形を変えるのに一役担うまでに至るとは、想像だにしなかった。 でも、思えばGoogleも同じだ。物と情報という違いはあれど、ひたすら移動を効率化することで、一見何も作っていないように見えるけれど、新しい経済活動の形を作ってしまった。 余談。コンテナつながりで 『コンテナを追え』 もおもしろそうなのだけれど、絶版になってしまっているようで、Amazonの中古価格は高騰しているし、ざっ見た感じ中古書店では在庫切れだし、近所の図書館には置いていない。残念。

ヨーソロー/養蜂老 - ミスター・ホームズ 名探偵最後の事件 (映画)

『ミスター・ホームズ 名探偵最後の事件 (原題 " Mr. Holmes")』を観てきた。 原作小説 より好みだった。同じパーツを使っていて、同じテーマを描いているけれど、物語の筋が明確になっている。何より、希望が感じられる(山椒の副作用かもしれない)。原作を好む人からみたら、味気なくなったのかもしれないけれど。 最後の事件を追う60代のホームズは期待通りの颯爽とした紳士だったし、養蜂を営む90代のホームズもリアルな老いを見せつけつつも閃きを見せてくれた。イアン・マッケランさすがの貫禄。特に90代のホームズが活躍するシーンは、原作小説ではロジャーに起こった事を解き明かすシーンくらいだったのが、中盤での真田との食事シーンや終盤でのロジャーの母親の外出先を推理して見せるシーンが追加されていた。 他にもアンの描かれ方とか真田への手紙のこととか最後の事件へのワトソンの関わり方だとか、大小様々な脚色が施されていて、物語の密度を高めている。原作を読んだ時のこのまま映画化したら眠くなるんじゃないかという心配は杞憂だった。 そして何よりラスト。予定調和だろうとご都合主義だろうと、こちらの方がよかった。やっぱり物語はハッピーエンドで終わって欲しい。これでホームズの最期はずっと穏やかなものになるんじゃないだろうか。 ここまで感想を書いてようやく気がついた。これ、雑にまとめるとホームズの終活だ(台無し感)。

第一印象がなべて世はこともなし

『零崎人識の人間関係 無桐伊織との関係』 を読んだ。 本書は 『零崎曲識の人間人間』 ( 感想 )に続く人間シリーズ4作目で、ついに完結編。 ただ、変則的なことに完結編が4冊あるので、完結を迎えるにはあと3冊。 戯言シリーズも既に終わり、そこからスピンオフした本シリーズもついに終わり。 初期の面影は全く無くなっているけれど、初期は初期で、今は今で面白い。 このことは、下記の通り、本作でメタなネタにされている。 「お前のそのパラメーター、どうやって密室殺人事件とかと辻褄合わせんだよ! 初期と後期でストーリーが繋がんねえだろ!」 まず、「密室殺人事件」は、戯言シリーズの1作目 『クビキリサイクル』 のこと。このころは、ミステリーだった。 それから、「お前のパラメーター」は人類最終こと想影真心の、ヘリコプターから飛び降りて岩の上に着地しても傷一つ追わないほどの能力のこと。 レビューを検索してみると、この変化を様々に捉えている人がいて面白い。 戯言シリーズから発刊順に読み進めて、ミステリーでなくなったことを否定的に書いている人もいれば、作者の最新シリーズ 『化物語』 ( 感想 )のアニメ経由で読んでみて、キャラが立っていないと否定的に書いている人もいる。 認知バイアスの一種であるアンカリングが働いている例だと思う。 最初の印象を基準点に判断している。

Yeah! いえ、言え

「『親しき仲にも礼儀あり』ってことわざがあるけれど、実際、他人相手の方が礼儀を正しちゃうよね」 「『余所様』って感じですね」 「いや、そこまでいったら慇懃無礼だろ」 「やっぱりそうでしたか」 「言いたいことを言うのと、言うべきことを言うのは違うよなー」 「〈化物語〉シリーズの阿良々木さんがそんなことを言っていましたね」 「言いたくないけれど、言うべきこともあるよな。 『天才! 成功する人々の法則』 ( 感想 ) で紹介されていた大韓航空の例みたいに」 「失礼。ファミマ下」 「一階がコンビニのアパートか、ここは。しかも噛んでねーし。つーか、話聴いてる?」

乾坤一冊 - 倫敦千夜一夜物語 あなたの一冊、お貸しします。

『倫敦千夜一夜物語 あなたの一冊、お貸しします。』を読んだ。 舞台は19世紀末の倫敦。登場するのは仲睦まじい兄妹。両親を失った二人が営むのは貸本屋。訪れるのは相談事を抱えた兄の学友。 短篇連作ミステリィで解決のキーになるのが本ということで〈ビブリア古書堂の事件手帖〉シリーズを連想する。だけど違った味わいがあってこちらも素敵だ。 いわゆる日常ミステリィの範疇かと思いきや、背後で策謀が渦巻いてる模様。 続き が楽しみ。Kindle化されたら読もう。