印刷博物館に行ってきた。
お昼過ぎに飯田橋に行く用事ができたので、その後に寄ってみた次第。正確には、ついでにどこに行こうかと飯田橋で考えていたら、地下鉄駅構内の看板が目に入ったので、フラリと入ってみた(徒歩20分弱かかったのをフラリと言えれば。あと休館日じゃなくてよかった)。事前知識ゼロだったけれど充実した時間を過ごさせてくれた。300円という入館料がありがい。運営しているのは凸版印刷。お金、大丈夫なんだろうか(余計な心配)。
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もっとも興奮したのは、総合展示ゾーンのグーテンベルク関連の展示。ドイツの博物館にある活版印刷機の想定復元模型をもとにした縮小版、『42行聖書』のレプリカ、想定復元活字。そして何より〈グーテンベルク 42行聖書 原葉〉。160~180部ほど刷られて、何ページあるかは分からないけれど、その1枚が目の前に。現代の活字文化がこれを起点に始まったのかと思うと感慨深い。
出口付近には〈印刷の家〉という名前のスペースがあって、そこでは活版印刷を体験することもできる(時間が合わなかったので諦めた)。それでも、印刷機や活字が並んでいるのを見るだけでもウキウキする。冒頭の写真はそこで印刷された配布物を、文字ごとに切り離したもの。せっかく組んだ文章を再びバラバラにする背徳感。
また、ここで印刷されたものがミュージアムショップで販売されている (商品紹介)。一目惚れしてフォントコースターとポストカードをおみやげに購入。ここまで何の話題にもしていないけれど、〈神戸湊川貿易製品共進会〉北野恒富 (1911) が、ミュシャのスタイルを模倣して描かれていてツボだったので、これもポストカードを購入。
これらの歴史的な展示物だけでなく、印刷技術の解説もわかりやすい。「シルクスクリーン」とか「オフセット印刷」とか、見聞きするのに仕組みがよくわかっていなかったのが、わかりやすく説明されていた。調べればわかるけれど、調べようとは考えもしていなかったことを知らされると、意外と新鮮。
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ミュージアムショップ横の「P&Pギャラリー」ゾーンで「グラフィック・トライアル2018」という展示も開催されていたので拝見。こちらは大日本印刷とアーティストがコラボして、印刷の可能性を広げる表現を試みる企画。スペースこそ狭いものの、制作過程も解説されていて、印刷見本などの中間成果物を手にとって眺められるので、たっぷり味わわせてもらった。
お気に入りは、サンティ・ロウラチャウィという方の〈MIND〉。言葉にすると「白」と「黒」としか言いようがないのだけれど、白黒印刷ではなくて、豊富な色や質感のバリエーションを見せてくれる。
お気に入りはもう一つあって、凸版印刷のアートディレクター鈴木晴之という方の〈Changing〉。解説によるとメタル紙や透明PETシート、偏光パールインキを使っているらしい。見る角度によって色が変わって飽きない。発色だけでなく印刷物の構造を意識させてくれた。こういう表現は物理媒体ならではなので。興味が湧いた方はぜひ現物を。
ところこれら全て印刷物ってことは、複製できるってことだよね? カラーチャートとかおみやげにあったら危なかった。何枚買うことになっていたか。
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いろいろと見てみると、印刷もいいなと思う。自分ではプリンタで思うように色が出せないけれど。それどころか、画面も製品ごとユーザの設定ごとに変わっちゃうんでしょ? と諦観している節もあるけれど。写真をメールに添付して送るんじゃなくて、ネットプリントの番号を送って印刷してもらうのも、悪くないなと思ったりもする。
余談。印刷博物館だけにチラシの印刷にもこだわりが感じられる。次の企画展「文字と天文」のチラシが素敵だったので、思わずもらってきてしまって未だに捨てられない。