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難民の敗戦

『難民探偵』を読んだ。

アニメ『UN-GO』に出てくる「敗戦探偵」と語呂が近い。なんて思っていたら、「敗戦処理」なんて言葉が出てきて驚いた。

考えてみれば、探偵は常に負け戦を舞台としている。出てくる頃には犯人は既に殺人という最大の目的を達成しているので、防犯を勝利と捉えると探偵の活動は何もかもが敗戦処理だ。

その上、犯人を捕まえたところで報われるところは少ない。被害者が生き返るわけではない、という一点だけで十分に負けている。

もちろんそれはそれで意味があるし、身も蓋もないことを言えば、防犯探偵なんて事件を起こさせない探偵とも言えない探偵が出てきたら、物語が成り立たない。映画『マイノリティ・リポート』のような切り口はあるにせよ。

ここまで書いて、「防犯探偵」で検索してみたら、既に存在した。けれどあらすじを見る限り起きてしまった事件を解決している。

どうすれば面白い話になるかな、あらゆる事件を未然に防止することで犯人の存在を許さない探偵が出てくるミステリィ。

何かJDCにいそうだな、と思って調べてみたら、「リバース推理」で事件が勃発する前に防ぐレムリア・サリヴァンという登場人物がいるらしい。

そう言えば、JDCシリーズは『彩紋家事件』しか読んでいない。他のにも手を出してみようかな。

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