

『アロウズ・オブ・タイム』を読んだ。
『クロックワーク・ロケット』、
『エターナル・フレイム』に続く、〈直交〉三部作の完結篇。
前作で気になっていた双の増え方の問題は、いつの間にか解決していた。本作の開始時点で前作から二世代を経ていて、いつの間にか社会に浸透していた。時が解決した、ということか。
その「時」が本作では大きな問題を引き起こす。ここから先は、ネタバレを含むので既読の方向け。
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未来から情報を受け取れる〈メッセージ・システム〉によって、未来と過去の知識勾配がなくなり、新しい知識が生まれなくなってしまう。作中ではこれを革新性阻害と呼んでいる。
これってどういうことなんだろう? 未来と過去の知識勾配がなくなったとしても、個人の間には知識勾配があるだろうし。〈メッセージ・システム〉が起動した段階から、知識の総量が増えなくなったということだろうか。でも、情報が伝搬する帯域は無制限ではないから、時間がかかるはず。自己検閲仮説 (未来の革新的成果は過去に伝えない/伝わらない) という仮説が成り立たなかったとしても、いきなり新発見がなくなるというのが、すんなり入ってこない。
さかのぼれば〈メッセージ・システム〉が起動する前から、未来から過去を送ることができる世界だったのに、なぜその時まで革新性阻害が起こっていなかったのだろう? 人間(ではないか、登場人物たちの種、何て言うんだろう?)原理のようなものが働いているのだろうか?
うーん、分からない。自分が少し考えたくらいのこと、きっと筆者は考えているだろうし。読み落としかなあ。基本的には〈ラプラスの魔〉問題の変形だと思うのだけれど、その辺りにヒントがないだろうか?