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速さの先にあるもの

巧遅拙速という四字熟語がある。
孫子の兵法 (「三十六計逃げるに如かず」で有名なあれだ) の一つ――「巧遅は拙速に如かず」の略で、その意味は「巧みでも出来上がりが遅い仕事は、拙くても出来上がりが速い仕事に及ばない」。

(少しググると、この意味は文脈から離れてしまっているという主張も見つかりますが、ここでは辞書に載っている意味で)

これを「巧み⇔拙い」と「速い⇔遅い」の2軸に分解すると、2×2のマトリックスが描ける。











孫子が正しいなら、優れている順に番号を振るとこうなるだろう。





1
2

3
4

速くて巧みにできるのなら、それに越したことはない。
だから、できればここ (以下、巧速) を目指したい。

今、自分は右下 (以下、拙遅) にいる。
そこから巧速に至る最短ルートは2本ある。
  1. 拙遅 → 拙速 → 巧速
  2. 拙遅 → 巧遅 → 巧速
とかく拙速が巧遅より推奨されがちだけれど、自分が何かを覚えたときのことを振り返ると、2のルートを通っていたように思う。
拙速から巧速へと変わるイメージがない。

イメージがないだけで道があればいいのだけれど、もしかしたら行き止まりかもしれない。
この思いは、拙速に対する疑問に繋がっている。
拙速の先には何があるのだろうか。

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